【勝手に装画・挿絵企画】宮澤賢治『ポラーノの広場』
「つ めくさのあかり」イメージ挿絵

日はもう落ちて空は青く古い池のようになっていました。
「おや、つめくさのあかりがついたよ。」
なるほど向こうの黒い草むらのなかに
小さな円いぼんぼりのようなしろいつめくさの花があっちにもこっちにもならび
なるほど一つ一つの花にはそう思えばそうというような小さな茶いろの算用数字みたいなものが
「三千八百六十六、五千まで数えればいいんだから」
青白いあかりをつけて向こうの方はまるで不思議な縞物のように
真っ黒な地平線の上では小さな星もうかんで
うしろを振り向いて見ますと
十六日の青い月が奇体に平べったくなって半分のぞいているのです。


「セ ンダードの毒蛾」イメージ挿絵

大きなガラスの戸口を出て通りに立ちました。
そこへ立って、私は、全く変な気がして、胸の踊るのをやめることができませんでした。
センダード市の大きな西洋造りの並んだ通りに、電気が一つもなくて並木のやなぎには、
黄いろのおおきなラムプがつるされ、みちにはまっ赤な火がならび、
そのけむりはやさしい深い夜の空にのぼって、
カシオピイアもぐらぐらゆすれ、琴座も朧にまたたいたのです。
どうしてもこれは遥かの南国の夏の夜の景色のように思われたのです。


「つ めくさのあかり」モノクロバージョン