葡萄園前停車
路面電車に乗り込み、森の中を突き抜けて行く
窓一面、緑の陰。市松に組んだ大理石の床にみどり色が染み込む。
ばら色のドレスを着た人は、変わった木の前で降りて行った。
駅名は「葡萄園前」。
ドレスがあまりにもすてきだったから、
おぼえているのは、ほかには、
もさもさとオレンジ色の髪がなびくことだけ。

ピンクとレモンイエローのバナーがはためいている。
青い空に鮮やかにひるがえる。
鋭い星のかざりがついている鉄の棒は、バナーを提げている。
それはまるで確固たる方向を指し示したかのように
腕のように真っすぐのびている
なにを指差しているのか
ひとさしゆびでまっすぐどこかを指している。

また変わった木の前で停車した。