第六話 想い
「ホント驚いたんだよぉ」
「うん、ゴメンね、心配かけて」
「ううん。そんなこと気にしないで……だって…………――」
セナはそう言うと一瞬だけ目を伏せたが、直ぐに向き直っていった。
「――だって友達じゃない!」
その笑顔は、何となく凍っていた。
†
ヒトミが帰ってから、あたしは部屋でセナと二人きりになった。
――――。
――……――。
…………――。
声が出ない……いや、正確には色々言葉は浮かぶのに口に出していいのか解らない。
言っていい言葉と言っちゃいけない言葉の区別が……できない……だから、結果として、何も、話せ、ない・・。
「アキちゃん………」
「――あ、セナ、何か作るよ。何食べたい?あたしも、一日寝ちゃったみたいだからお腹空いちゃってさぁ……えっと、確か冷蔵庫に鶏肉あったっけなぁ……ウン、唐揚げでも作ろ」
あたしは、セナが口を開いた瞬間にそう言いながら立ち上がった。
「アキちゃん……」
「――ねぇ、セナは他何か欲しいものある?ウチにある材料だったらあたし何でも作るからさぁ!あ、そうだ!セナ甘い物好きだよねぇ?ゼリーとか作ろうか……うーん、でも時期的になぁ……やっぱ、パターンだけどホットケーキとかの方がいいかもねぇ」
「アキちゃん」
「――じゃあ、あたし作ってくるからさぁ、テキトーにテレビでも見て待っててよ」
そう言い、早足で部屋を出ようとする。
「アキちゃん!!」
そんなあたしの背中にセナの声が突き刺さった。
「………ゴメン、セナ…………」
あたしはそう言うと部屋を出た。
「――待てよ」
え……?
何で?
「お兄ちゃん……何で、いるの?」
声が誰のものかは解った。
でも、あたしは顔を見ずにそう言った。
方向は玄関の方から……。
「いるんじゃねぇ。今来たんだ……本来寮ってのは外部禁制だから入るのは躊躇ったが、お前のあまりにも元気のない大声と、彼女の叫び声が聞こえてな……常軌を逸してると思ってきた」
「………げ、元気ないって、そんなことないよ!こんなに元気なのに、お兄ちゃん自分の妹なのに判らないの?」
「空元気って言葉知ってるか?そんなに無理する必要ねぇだろ。もっと、自分に素直になれ」
「…………お兄ちゃん…………」
ふっと顔を上げると………………………いない?
…………気のせい、か……。
まったく、我ながらあたしは何やってるんだろう。こんなのあたしじゃない!
「よし!」
自分に一括する。
そして、あたしは台所に向かった。
†
「――セナー!」
扉を開け、室内に入りながら声を掛けた。
「………なんだ、寝ちゃったのか……」
見ると彼女はいつも通りベッドに寄りかかりながら居眠っていた。
「まったく、幸せそうな寝顔しちゃって」
ほんのりと朗笑のこぼれるような、そんな寝顔だ。
ホント、この娘は……あたしは持ってきた料理を机の上に置くと、着ていた上着を脱ぎ、そっと彼女の肩に掛けた。
もう日は完全に沈んでいる。
うっすらと寒い秋の長い夜の始まりだ。
†
「悩んでるなんてダメだ!」
力強くエプロンの紐を締めると、冷蔵庫を開けて幾つかの食材を取り出す。
包丁を片手に一度深呼吸してから料理に取りかかった。
「こんなモンかなぁ……」
一時間半くらいかかっちゃったけど、ザッとした料理はできた。
最後に途中で取りかかったプリンの様子を見に蒸し器のフタを開ける。
もわっと立ち上る湯気の中、薄黄色の円形が幾つか見えた。
蒸し器からプリンを取り出し、一口。
う〜ん(^▽^)〜♪やっぱ、できたて美味しい♪あたしコレ好きなんだよなぁ。
熱々のプリン。お店とかじゃゼッタイに食べれないもんねぇ。そうでもないのかなぁ?作りたて出すところとかもあたりするのかなぁ?
でも、やっぱ、自分のがイイや。
「よし!完ぺき!」
今日のご飯は鶏の唐揚げと海藻サラダ(かなり簡単だなぁ)。そしてプリンがデザートだ。
余熱を冷ますのにそのままいったん放置。
あ、確かセナも温かいプリン好きだったなぁ。
そう思い、一個だけ熱いままの物を手に取り、台所を出た。
†
さってと、どうしよっかなぁ……。
あたしはセナに背を向けると、パソコンの電源を入れた。
機動音とハードディスクの回転音が妙に耳に障る。
嫌いな音じゃないはずなのに……ってか、PC好きだし……。
………あ、そうか、セナ、寝てるから。
どうも、昔っからなんだけど、細かいところで気を使ったり気にしたりする癖が在るみたいで。
確かにこの音は煩いかも。
普段は何ともないのに、妙にシンとしているこの静寂の中では、それ等の音はとても大きく、ある意味鬱陶しささえ覚えた。
………やめよ。
立ち上がるのを待って、直ぐにあたしはPCの電源を落とした。
踵を返して彼女の寝顔を見る。
口元にこぼれる笑みがあたしの心を落ち着ける。
ゆったりとした時間がソコには流れていた。
席を立ち、そっと彼女の顔に顔を近づける。
微かに聞こえる彼女の寝息。
目にかかっている前髪をそっと払いのけると彼女の目が少し塗れているのが気づいた。
「セナ……」
どうしたんだろう?
と、目の端に貯まっていた涙の粒が頬を伝って布団に落ちる。
その瞬間、ソレまで幸せそうにしていた寝顔が急変した。
悲しみ?違う。
それは、無表情だった。
何を考えているのかまったく解らない。いったいどんな夢を見ているのか。
こんなセナの表情(かお)、初めて見た……。
あたしは確かにセナと知り合ってもう何年も経ってる訳じゃない。でも、それでも彼女のことはそれなりに知っていたつもりだった。
…………………そう、だよね。
「あたし、セナのこと、何も知らない……」
でも――
「セナは……あたしのこと…………」
どうしたら、いいんだろう。
気がついたら、あたしは部屋を出ていた。
鏡の前で自分の目を見つめていた。
「ひどい顔……」
疲れきったみたいに精気がない。
…………ダメじゃない!
たった今悩んでもしょうがないって決めたばかりなのに!
こんな顔、セナが起きたときにもしてたら余計な心配かけちゃう。
今は絶対にセナの方がキツイはずなのに!
あたしが、あたしがこんなんじゃ!
そう思い直すと、下を向き目を閉じた。
†
「ふみゃ……」
猫っぽい声を上げて彼女が顔を上げたのは、もう9時を過ぎてからだった。
「あ、起きた、セナ☆」
あたしは精一杯の笑顔をして彼女の顔を見た。
作り笑い……。
そんなことは自分でも理解ってる。でも、それでも悲しい顔なんか……ゼッタイに出来ない!
「みゃ……ああ、おはよぉ……」
目を半開きにして寝ぼけたような口調で言う。
「オハヨ!ご飯作ったんだよ。冷めちゃったから温め直したんだけど、食べる?」
「う、うん……アレ、あ、ボク、寝ちゃったんだ……ゴメンね」
「ううん。あたしが勝手に部屋出てっちゃって。ネ、だから、食べよ」
あうあう……;
言葉バラバラだよぉ。
何言ってるのか自分でもよく解らない。
でも、気持ちは………悪くない。
「うん(^_^)V」
彼女は頷くと微笑んだ。
う〜、可愛イーーッ☆
「よ、よし、じゃ、じゃあ、待ってて!今飲み物持ってくるから」
勢いよく部屋を飛び出す!
ひゃあぁぁぁ〜〜(^_^;)
何慌ててンだろう!?!?
顔熱いし、コレじゃあ、まるであたしが……。
†
目を閉じると、何故だか幾つもの顔が浮かんできた。
笑ってる顔、怒ってる顔、泣いてる顔、悲しんでる顔、寝顔………。
セナ――
そうだよ!しっかりしなきゃ!!
あたしのせい……じゃないけど、でも、あたしのせいなんだ!
気持ちが悪い。
変な葛藤のせいで、心の中がぐちゃぐちゃにかき混ぜられたみたい。
でも、それでも、ゼッタイにふらついてちゃいけない!
だって、そんなのあたしじゃないし☆
†
「お帰り」
烏龍茶の入ったコップを手に部屋の前まで来た途端、扉が開きセナが顔を出した。
「あ、うん」
部屋に入りながらふと疑問に思う。
「セナ、あたしが戻ってくるの、分かった?」
「うん。何となくね」
足音、とかかなぁ……?
ま、いっか。
コップを机の上に置くとあたしは再びパソコンの電源を入れた。
「ご飯食べてからにすればいいのにぃ」
あたしの手元を見ながら、言う。
「いいじゃん。って言うか、あたしいっつもこうだから」
「もぅ、お行儀悪いなぁ」
セナはそう言うと、机の引き出しから紙皿を取り出し、幾つか料理を取り分けた。
「はい、コレね」
そう言い、残りを床にある座卓の上に持って行く。
そして、そこでニッコリ笑って食べ出した。
………って、ちょっと待てよ!
何でこの娘はあたしの机の中に紙皿何てあること知ってるの!?
そりゃ、そこそこは来てるけど……………ン?いない間に物色された?
ま、ソレならそれでいいけどさ……。
さてっと、そんなことは忘れてあたしも食べよ。
右手でマウスを掴み左手で端を操る。
はぁ、こう言うとき両利きだと楽だわ♪
昔はフツーの右利きだったんだけどね。子供の頃サッカーやってて、両脚でボール蹴りたかったから連取したら、いつの間にか手も感覚的に使えるようになってたんだよなぁ。
何でか判んないんだけどね。いつの間にかだから。
いつもの癖で、取り敢えずメールの送受信アプリを起動して新着メールの確認。
49通……うーん、一日寝てたからなぁ……。あ、って、あそっか、ここ何日か見てないっけ!
そんなことを思いながらメールの中身を確認していく。
……う〜ん、相変わらず迷惑メール多いなぁ……。
件名などから中身を見ずに何通かのメールを削除していく。
と………shine………。
え!?
とっさにセナの方を振り向く。
無邪気に食べているセナの姿が目に映る。
って、オイオイ、溢しちゃってるよ……;
まったくぅ、掃除するのあたしなんだから(_ _;)
まぁ、そんなこと言ったってしょうがないだろうけどさぁ……。
…………………って、そうじゃない!
「セナ………――」
「ン?アキちゃんどうかした??」
小首を傾げる彼女・・・・ホントカワイイョ!!
じゃなくてorz
「あ、何でもない何でもない……」
あたしは手を振りながらそう言って、再びPCに目をやった。
ダメダメ、違ったらどうするの。勝手にそんなこと決めつけて……。
そう思い直し、思い切ってそのメールファイルの中身を見ることにした。
件名は………なし、か。
じゃあ、中身は何だ……。
ファイルをクリックし、内容を表示する。
“貴女の笑顔が見たいから、ボクは泣かないことにします”
……なんだ?
“貴女に、ボクを見てもらいたいから、ボクは笑っていられます”
そうか…。
“貴女と一緒にいたい。ただそれだけ……”
うん。
“だから、そっとでいいの……ボクの手を、握って……いつもみたいに”
・・・・・・・・・・・・・・・。
――――ッ!
何、この感情!?
思わず左手で口を塞ぐ。
急に声が出そうになった。
それと同時に目頭が熱くなる……。
その衝動を抑えようと、両目を固く瞑り右手でコップを掴む。
烏龍茶を声の出そうな喉に流し込もうとコップに口を付けた途端、解放された口から叫び声が漏れた。
「――――!!」
………アレ、声が、出ない……。
しかし、体は仰け反り、両目からは熱い涙が流れた。
反り返っているため、涙は頭に流れていく。
「アキ、ちゃん……?」
あたしのそんな痴態を見てセナが呟いた。
「――――――」
あたしは言葉を出すことが出来なかった。
ただあふれ出す涙で、セナの姿が霞んでいく。
――せな……ごめん、ね……――
口だけは動くのに言葉にならない。
「アキちゃん……」
セナが立ち上がるのが判った。
あたしは上体を起こそうと腹筋に力を入れる。
「アキちゃん、ゴメン、ね……」
――セナ――
軽く勢いを付けながら上体を起こし、首だけでセナに振り向く。
「――――」
ダメだ、声にならない……。
あ、そうだ、烏龍茶……何でか保っていられたコップを持つ手を引き寄せ中身を一気に飲み干した。
まるで乾ききっていたような“声”に潤いが戻った。
「セナ」
やっとの思いで、彼女の名を呼ぶ。
そして、立ち上がり彼女に向き直る。
「……うん」
セナが、少しずつ近付いてくる。
そして――
「大丈夫だから……」
そう言うと、彼女はあたしの頭を包み込んだ。両手で、深く。
その瞬間、あたしは脱力した。全身の力が抜け、彼女に自分の全体重を掛けた。
顔がセナの胸に当たる。
………気持ちい……。
素直にそんな思いが浮かんだ。
感覚とか触覚とかじゃない。
人に支えてもらっている。そのことが、凄く気持ちい。
そして、あたしの涙は一層激しく湧いた。
彼女の胸を濡らし、それでも足りない気持ちが床に落ちる。
「ヨシヨシ……もう、大丈夫だから……」
そう子供をあやすように言いながら彼女はあたしの頭を撫でた。
「もう、何もないから……」
言いながら彼女はゆっくりと腰を降ろした。
ソレに伴い、あたしの体もセナに寄りかかりながら崩れる。
「――あ、ひゃあッ!」
腰を降ろす途中、彼女は後ろに倒れてしまった。
あ……そう、だよね……セナじゃあ、ムリだよ。あたしの身体支えるなんて。
彼女は基本的に体育系に向いていない。
だから、力とか体力とかにも昔っから縁がないって言ってたし。
………。
そして、当然あたしの体も彼女に覆い被さるようにして崩れ落ちる。
ゆっくりと世界が昇がっていく。
ああ、コレがアドレナリンの分泌量だかってので起こる現象か……。
確か普通は事故とか、そう言ったときに起こったりするんだよねぇ……。
とっさに両手を出そうとしたけど間に合わない。
と、言うか……体中の力が未だに抜け手を動かすことが出来なかった。
そして、
ドサッ!
あたし達は床に倒れ込んだ。
「みゅ〜〜〜(@_@)」
情けない声が聞こえたと思ったら、セナの目がグルグル回ってる。
って、オイ!
まったく……。こんな成るまであたしは………。
自分で自分が歯がゆい。
「なぁんてね……大丈夫だよ。あたしは……」
彼女はそう言うと再び両手であたしの頭を包んだ。
「今はアキちゃん余計な心配しないで」
……うん。
あたしはセナの胸の中で静かに頷いた。
「(^^)/ヨシヨシ」
完全に子供扱いだ。
普段はセナに自分がそう接してるって自覚があるだけに、妙な感じがする。
でも、嫌な感じは全然しない。
しばらくあたし達は動かなかった。
数分後、あたしは試しに手に指を曲げてみた。
……うん、ちゃんと動く。
ソレを確認すると、両手を床に着き、上体を起こそうとした。
が、どうやらソコまで気持ちは回復していないようで、腕立て伏せの失敗のようにそのまま再びセナの胸に顔を薄めてしまった………(///^^///)
「ふぁあ……アキちゃんに押し倒されちゃった(笑)」
「……まったく……」
溜め息混じりに言って苦笑する。
あ、声、ちゃんと出るじゃん。
†
「セナー、学校行くよぉ!」
相変わらず(単なる不用心なのか、何かとても安心なのか判らないけど)鍵のかかってないドアを勢いよく開けると、あたしは部屋内に一歩入った。
………どこからか水の流れる音が聞こえる。
「またかぁ……」
この娘時々あるんだよなぁ。
「せなぁ〜〜」
名前を呼びながら室内を奥に進む。
ま、どうせ呼んだって聞こえないんだろうけどねぇ……。
だって……。
ザーザーザーザー………
ほら、やっぱシャワー浴びてる……。
ま〜た今起きたなぁ……。
歩きながら浴室前に着きそこから再び声を掛ける。
「セナァー!」
『ふみゃ?』
まぁた猫化してるなぁ・・;
ドア越しにくぐもった声が聞こえる。
「セナ学校!」
『ああ、わかってるニャン♪』
「わかってないでしょ?ほら、先行っちゃうよ!」
『みゃああぁぁーー!アキちゃんのじわるぅぅぅ』
子供かよ……。
まったく、頭いいんだから本当こういうのなければなぁ……。ちゃんとした恋愛に目覚めると思うのに。
そんなことを思っていたら、何でか急に顔が熱くなってきた。
あぁぁ〜〜〜、もう!あたしのバカバカバカッ!
何であたしが……。
「ふぁ、お待たせぇ」
あたしが勝手に四苦八苦してる最中にセナは浴室から出てきた。
「あ、うん……って、服着なさい服!」
身体だけをタオルで覆って、髪を拭きつつ出てきたのだ。
「あぅ……まぁいいじゃん。ボクとアキちゃんの仲なんだからさぁ☆」
そう言うと、パチッ☆とウィンク。
………くぅ〜〜、ホンット悔しいほど可愛いなぁ。
そう思うとセナの肢体を見てしまう。
「そんなに見ないでよ。恥ずかしいってば(///^^///)」
そう言うと彼女は再び浴室に消えた。
「あ、あ……ゴメン、ね……」
あれ……今何か違和感感じたような……。
『もう、アキちゃんのえっちぃ』
笑ながらのそんな声が聞こえた。
はぁ、まったく……今日のあたしは何なんだよ。
あれから何となく自分でもおかしいのは気づいている。
でもなぁ……出来るだけ何ともないようにしてるんだよ。だって、セナに心配かけたくないし……何よりも、あたし自身がそんな自分が嫌になりそうだから。自分が嫌いになっちゃったらきっと周りからも嫌われちゃう。
「――セナに嫌われるなんて、イヤだもん……何か、今も……気持ちいったら……嫌われそうで……」
『大丈夫だよ。嫌いに何てならないから』
!?!?
あ、あたし……な、何で口に出して……って、言うか、何で……こんなコト考えてるんだろう!?
あぁぁぁ……なんか思いっきり叫びたいよ。
「嫌いにはならないけど……何か今のアキちゃん、告白しようかどうしようか迷ってる“恋する乙女”みたいだね(笑)」
「な、な、あ、な、何言ってンの!」
「ウソウソ、ソレより学校……遅れそうなんでしょ?早く行こ」
「うぅぅ……」
セナはそう言うと鞄を片手に出口へ向かっていった。
「まったく、誰のせいだと……」
「ホラ、アキちゃん鍵閉めるよぉ」
「あー待ってー!」
あたしは駆け出しながら彼女の横顔に何故かちょっとしたうれしさを感じた。
†
「今日って1時間目なんだっけ?」
「ええっとねぇ……分かんない。ヒトミちゃん、今日の1時間目って何?」
「えっと、確か体育だよ」
「だってさ」
「そなんだ。おはよ、ヒトミ」
「アキ、元気そうだね」
「何言ってンの!あたしから元気取ったら何にも残らないよ」
たまたま下駄箱であったヒトミとそんな会話をしながら、あたし達は教室に向かった。
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