『後悔するぜ……人間……』
「は、そう言うことは勝ってから言ってほしいなぁ」
『まぁ、生きがいいのは嬉しいがな……いいカモだぜ』
「御託はいらねぇよ……それより、そろそろ始めねぇか?」
『大人しく消滅しちまえよ』
「それは……テメェだぁぁぁーーー!!」
俺は叫びながら剛鬼角に飛びかかった。
『ククク……弱い犬ほどよく吠える……その典型だなぁ』
「うるせぇぇ!」
全身を反らしながら、片腕を地面につき右足で剛鬼角の顎を蹴る上げる。
――チッ、効かねぇか
「チィッ!」
ま、しょうがねぇな。
なら、もう一回さっきの作ってみるか……。
頭の中でボールを連想しながら、ソレが手元にあるのを思い浮かべる。
――できた!
手の中にあるソレは、明らかにさっき造ったモノよりは小さい。
が、そんなことを言っている場合じゃない。殺られる前にや殺らなきゃ……。
「散りヤガレエェェ!!」
ダンクのように鬼の頭にボールを叩き付けた。
『小賢しい……』
しかし、それは、鬼の角に突き当たり粉砕した……。
「…………万事休す、か…………さて、どうしてもんかなぁ……」
『どう?そんなことも解らないのか……?簡単じゃねぇか!大人しく、くたばっちまえばいいんだよぉ!!!!』
100%断りたいことをさらっと言っちゃってくれてる……。
「バーカ、そんなこと出来るわけねぇだろ……約束したんだからよ……生き返るって」
『なら、精一杯、足掻いてみろやーーー!!』
言われなくても……――
「――戦って殺るって!!!」
再びイメージを作り、ソレを手の中に創造する。
そして、今度はソレを――
「いっけえぇぇぇーー!!」
――蹴り飛ばした。
が、やはりというか、当然というか、ソレはいとも簡単に鬼に打ち砕かれた。
『お前は学習能力がないのか?無駄だと言うことがそろそろ解るだろう』
は、ははは……。
「さぁな……」
思いっきり理解してるわ、バカ野郎……。
問題はそんなこっちゃねぇ……。
何かが…………………掴めそうなんだ。もう、少しで……。
「もう一度……」
呟きながら、ソレを再び作る。が、逃走ソレはゴルフボール大にまで縮小してしまった。
「ちくしょう……俺に、もっと力を……」
―― 鷹久さん…… ――
え?
「アスカ………?」
―― 済みません……こんなはずじゃあ…… ――
「お、お前なに言って……」
―― ボクは、大丈夫です。 ――
「大丈夫って……」
あんな状態で大丈夫なわけがない……。
―― 鷹久さん……だから、ボクの……私の力、使って下さい ――
「アスカ?」
…………
返事がない。
「アスカ?」
もう一度呼びかけたが、やはり何の反応もない。
『オイ、人間……テメェさっきから何とは話してヤガル……?』
そうか……アスカ……。
『聞いているのか?』
「うるせぇ」
『ン?』
「うるせぇって言ってンだよぉーーー!!」
怒鳴りながら、俺は手の中の球体を握りしめた。
と、ソレは瞬時に熱を帯びだし、通常ならば絶対に持ってはいられないであろうと思うところまで発熱してきた。
が、俺にはその熱さが何故だかとても心地よく感じた。
「オイ、剛鬼角……お前に最後のチャンスをやるよ」
『……』
反応に困ってか、近い出来なくてかしらないが、黙り込む剛鬼角。
「命乞いして、逃げだしな……」
『……貴様、とうとう狂ったか?命乞いをしなきゃならねぇのは、テメェの方だろうが。えぇ、違うか?』
「ソレを返答と受け取っていいのか?」
『………やはり狂ったか……ならば、大人しく食われちまえよ!』
言うなり、鬼は俺に飛びかかってきた。
鬼の右ストレートが俺のミゾオチに入る。
「――ガハッ!!」
一瞬目の前がまっ白になり、吐血する俺。が、自分でも不思議なくらいに、その時不安はなかった。
『オラオラオラーー!!』
鬼のラッシュは続き、両頬、両腕、両脚……再び腹……頭……。
全身に強い衝撃を受け、俺はその場に倒れ込んだ。
「ふ、はは……」
笑っていられる場合でないのは理解している。
が、口からは勝手に笑みがこぼれた。
そして、ゆっくりと立ち上がる。
やっべぇなぁ……骨が殆ど砕けちまってるよ……。
あ、体ねぇんだから、骨ってのはおかしいか。
まぁ、全身痛ぇコトに代わりはねぇけどなぁ。
けど、何だろう……耐えれねぇほどの痛みじゃねぇ……。
『て、テメェ……何で立ってやがるんだ……!?』
血が目に入ってあまり視界はよくない。
が、その口調から剛鬼角は明らかに動揺している。
「さぁな……俺、にも……何で、か……解んねぇんだ……」
なんてな……コレが、たぶん……アスカの……力。
ずっと握り続けている、ソレは今だ発熱を繰り返している。
と、その時、何故かそこでもういい。そう思った。
「さてと……そろそろさっきの続きを言わせて貰うか……」
『な、何?』
「言っただろ……今のウチに逃げだせって……その続きさぁ」
言いながら、俺は右手をゆっくり開く。
その瞬間、ソレは目映いばかりの光を放った。
『グワッ!』
思わず目を塞いだであろう鬼。
「この力が、何したがってるのかは……俺にもわからねぇんだよ……」
と、光を見ると、ソレは球体から長い棒のようなモノに姿を変えていった。
そうか……鎌か。
まだ棒状だったそれを見て、俺は何故だかそう思った。
「そろそろ……逝けよ!」
その棒 ―― 鎌を掴むと、双頭の蛇を腕に絡める。
そして、ソレを水平に構えると、俺の口は勝手に何かを話し出した。
「“双蛇(そうじゃ)の理(ことわり)により……良悪(りょうあ)の判断を下す!”」
『な、なに……』
“かの鬼(き)……その徳を些細(ささ)なすモノなり”
紅い瞳の蛇が口を開き、俺の言葉に続けた。
“よって、その身は死国に委ねん”
今度は蒼い瞳の蛇が言う。
そして、再び俺の口が開かれた。
「“解(かい)!かの者、生存を却下す!頂命(ちょうめい)!!”」
声と共に、俺の体も動き出した。
蛇が腕から外れ、鎌を逆手に持ち替えると、剛鬼角に向かって振り翳す!
と、ソレは一瞬にして、鬼の頭(かしら)を削ぎ落とした。
「“了(りょう)……”」

「ふぁあぁぁあぁぁ」
あくびをしながら、俺はキーボードから手を外した。
「あ、鷹久さん、書き終わりました?」
「ああ、だいたいな……それにしても、あの時飛鳥が助けてくれなかったら、ホントに消えるトコだったよ」
「へへ……ま、そのお陰でボクはしばらく人間界(こっち)で、生活しなくちゃならなくなっちゃいましたけどね」
「まぁいいじゃねぇかよ……それなりに学校は楽しいだろ?」
「そりゃまぁ……」

剛鬼角を倒した後、俺は疲れ果ててその場に崩れ落ちてしまった。
そして、そのままトキの手によって、体に戻されたようだ。
そのことは、後から飛鳥に聞いた。
そして、飛鳥も……。
おかしな話がだが、飛鳥も今は実体を持って俺達の世界にいる。
周囲の人たちの記憶は操作され、一時的に飛鳥の存在を認めさせているらしい。
無茶をした罰とかで、一年間、こっちで暮らすことを命じられたらしい。
ま、所謂世間勉強と言ったところのようだ。
ちなみに、飛鳥のこっちので名前は「大塚飛鳥」
一応、俺の従姉妹ってコトになっているらしい。で、記憶操作高を受けている学校やウチの親とかは、ソレで認めてしまっている。
なのに、俺にはソレが聞かないとかで……何とも複雑な話だ。

で、俺が今何をしているかというと……。
「それじゃ、印刷して、早く出し行きましょ!」
「ああ」
小説を書いている。
もともと、高校を出たら文系の大学に行くつもりで居たし、普段から少しづつ文章は書いていた。
なので、投稿というヤツをやってみようと思ったのだ。
幸いにして、人がやったことのない体験が俺にはある。
それを――
「あ、タイトル付け忘れた。飛鳥、考えてくれよ」
「うーん……じゃあ、霊界日帰り旅行、とか……」
「ンじゃ、それで……」
タイトルを打ち込むと、プリンターの電源を入れ、ソレを印刷した。
飛鳥の言ったタイトルに、一文付け加えて。
“霊界日帰り旅行〜死亡体験記〜”

Fin