「まったく、二人とも神なんだろ……もう少し人間に優しくっつうか……焦点置いて話してくんねぇかなぁ……」
まぁ、そんなことを呟いたところで、誰も居ないわけだからしょうがないか。
「さて、これからどうすりゃいいのやら……」
思わずため息が出る。

「ま、いいや。行くかな」
『で、どこいくんですか?』
声が再び聞こえた。
まったく、何やってんだか……。
「……アスカ、お前何処行ってたんだよ?」
『ちょっと、トキをまきに』
「まきにねぇ……で、俺は何処行けばいいんだ?」
『取り敢えずさっき言っていた神社にでも行ってみて下さい。何か状況が進展するかもしれませんし』
「まぁ、な。じゃ、行くか」
『はい』

とは言ってものの……その場所が何処にあるのか判らない。
「なぁ、何とからないのかよ?」
『何とかって、なるわけないじゃないですか。鷹久さんの問題なんですよ。だいたい、どうするとボクがその場所知ってるんですか?』
「そりゃあ、そうだけどさぁ」
そうは言ってもなぁ……手がかり……。
「あ!」
『どうしたんですか?』
「名前判るんだから、探す方法は幾らでもあるじゃん」
『え?』

数十分後、俺は図書館の資料コーナーにいた。本当は家でとも思ったんだが、本来死んだ人間がそう行き来するわけにも行かないと思い……。
「ネット使えばいいんだよ」
『ああ、確かにそうですね。しかし便利になったモンですねぇ』
「………お前、いくつだよ?」
『え、何がですか?』
「何がって、年だよ」
『何言ってるんですか!乙女に年を聞くなんてのはタブーですよ』
タブーって……そもそも人間じゃないんだし。
どう見たって(仮)、子供……。
『まぁ、いいんですけどね。って、言うよりも、ボク自身もよく覚えてないんでけどね。だいたい、600歳ぐらいです、人間で言うとですけどね』
………。
「ろっぴゃくぅぅ!?」
思わず叫ぶ。
と、途端に周囲からの視線を感じ後ろを見る。
“静かにしましょう”
“飲食はやめましょう”
など、幾つかの“館内での注意事項”が、目に入る。
「……済みません……」
小声で謝ると、再び画面に向かった。
「えっと、黄時雨……黄京時雨、か……神社ッと」
検索サイトで検索する。
「………四件」
個人サイトと思えるものや、観光案内などの物を除いて見ると、四件同名の神社の公式サイトがあった。
しかし、神社がホームページってのも、どうなんだろうなぁ?
「ま、いっか」
『?』
「で、この中で、家から車でそう時間かからない場所はッと……ここか」
それまで開いていた窓を閉じ、一つだけそのサイトだけを開いておく。
『ここ、ですか?』
TOPページに表示されている神社の外観を見て、アスカはそう言った。
「ああ、たぶんな」
『じゃあ、いきますか?』
「そりゃ、行くだろう」

ホームページに載っていた住所と簡単な地図をメモすると、図書館を出た。
「しかしなぁ、車およそ二十分……何で行く?」
『ボクは飛べますけど……鷹久さんはそう言うわけにもいきませんしねぇ』
「じゃあ、電車かなぁ……金ないし」
『あ、一つ方法ありますよ。ただ……』

「ちょっと待てぇぇぇーー!!」
『もう少しですから、我慢して下さい』
「さっきからそればっかじゃねぇかよ!いい加減死ぬって」
『もう既に死んでるんですから、その心配だけはないですよ』
「そう言う問題じゃねえぇぇーー!!」

取り敢えずは………着いた。
目の前にそびえる鳥居がその証拠だ。
が……。

『一つ方法ありますよ。ただ……』
「ただ、なんだよ?」
『肉体が持つかどうか……』
「どういう意味なんだ?」
『ボクの力で、鷹久さんの肉体を一時的に霊的に加工します。そうすれば、ボクが飛ぶときに運ぶことできますから』
「……どういう意味だかよく解んねぇけど……それが早くて、確実なら、それでいいんじゃねぇのか?」
『まぁ、通りはそうですけど。でも、ボク不器用だもんで、もの凄いゆっくりか最高速でしか飛べないんですよ』
「じゃあ、早くていいんじゃないのか?」
『だから、その場合、鷹久さんの体が保つかどうか確証が無くて』
「いいよ。ヤバそうだったら途中でやめれば。取り敢えず、やってみようぜ」

って、ことで、来たはいいが……。
だめだ……全身が痙攣してる。
実際に体は動かしていないが、風圧とかでかかった衝撃が、何十キロも全力疾走したような疲労を負わせている為だ。
「……あ、アスカ……少し、休んでいっていいか?」
なにしろ、車で二十分かかる距離をわずか一、二分で来たのだから。
『ええ、そうしますか。じゃあ、ボクは少し周りを見てきますから、鷹久さんは、身体休めながらイメージで力作っておいて下さい』
「はぁ?」
『一応、ここにあると仮定してなんですが、その場合……これはホントに最悪のパターンなんですが、戦闘になるかもしれません。だから、その時に鷹久さんも戦えるようになっておいて欲しいんです』
「戦、闘?」
『はい。霊体というのは、餓鬼とか、そう言った低級の魔物の好物なんです。でも、霊体自体は、持ち主が近づかないと使える状態になりません。だから、鷹久さんが近づいたときにもし近くにそう言った魔物が居た場合、それと霊体を賭けて戦わなくちゃならないんですよ。もし、食べられちゃったら、それで終わりですから』
かなり大切で、ヤバイことをあっさりと言うアスカ。
『ま、精神的に体内の一箇所に力を集めるようイメージしてくれればいいですから。じゃ、頑張って下さい』
そう言うことだけ言うと、声は聞こえなくなり、気配も消えた。
「………そんなこと、言われてもなぁ……ま、まずは体力の回復だな」
『はぁ、やっとアスカ居なくなったかぁ。しかし、あんたも大変だねぇ。普通の人間なら、全臓器が圧力で押しつぶされてるとこだよ』
「え!?と、トキ、ちゃん?」
『ちゃん付けで呼ぶな!次はホントに殺すよ』
生きることを勧める神が殺すって……。
「で、トキ……なんでここに?」
『ずっと居たよ。アスカと別れてから。ここに来るとは思ったからね。あんた、ちょっと面倒なことになってるから』
「どういうことだよ?」
『まぁ、体力と霊力蓄えながら聞きなよ。あんた、死にかけてるんだよ』
何を今更……そんなこと解りきってることだろう。
そうは思ったが、黙って頷く。
『今更……とか思った顔だねぇ。でもね、あんた死ぬことが決定するかもしれないんだよ』
「え!?何でだよ!アスカは俺を生き返らせる為に動いてくれてるんだろ」
『ああ、だけど、それはアスカが末端だからだ。霊界の上の連中は、あんたの返生は余りよく思っていない。だから、あんたの霊体に刺客を差し向けたようなんだ。さっきアスカが言っていたような餓鬼なんかじゃない。もっと上級のヤツだ』
「ホントなのかよ?」
『ああ。でも、あたしの力を使えば、それは覆すことができる。だって、あたしは生神なんだから』
「………なぁ、何でお前はそんなこと知ってるんだ?」
『え?』
「え?じゃないだろう。いくら末端と言っても、アスカはその方面の者だ。それが知らない情報を、何で生神のお前が知ってるんだよ?」
『あ、ああ、そういうことか。それは、あたしが生神だからだよ。あんたに言ったように、あたし達は人の生に関して、それを長らえようとする。だから、その逆になる“死”については敏感なんだ。だから、あんたが死にかけてるのを察知して、あたしに連絡が来たって訳。だから、デマじゃないから心配しなくてもいいよ』
……一応筋は通ってるなぁ。
でも、何処まで信じられるんだ。こいつの話。
でもまぁ、少なくても殺される心配はないかぁ。
「なぁ、その前にちょっと聞きたいんだけど、キミの力で、俺の霊力、って言うのか……そいつを上げることできないか?」
『何で?』
「何でって……姿見えないと何かと不便だろう」
『そう?あたしは見えるから双でもないけど……』
「あのなぁ……」
『ま、いいわ。一時的になら上げることはできるけど。でも、ホントに一時的。保って……二週間って、こと。それでもいいなら、上げてあげるけど……どうする?貴久くん』
「………そうだな。じゃあ、それでいいや。頼めるかな?」
『わかったわ』
その口調が、まるで不適な含み笑いを浮かべているように聞こえた。
『じゃ、やるから……大人しくしててね。貴久くん』

何だ、今の……声をかけられた瞬間、悪寒が走った。
と……!
「ン!うぅんううぅぅ……」
突然唇をふさがれた。
『ふぁ……どう?あたしのこと見える?』
解放された時すぐ目の前に彼女の顔があった。
舌なめずりをしながら、俺の顔を嬉しそうに見ている。
『で、どう?』
再び声をかけられたとき、何故か全身の力が抜けるように俺はその場に崩れ落ちてしまった。
薄れ行く意識の中で見えたのは、俺を見下ろす彼女 ―― 朱鷺の姿だった。獲物を狙うような、冷たい笑みを浮かべる……。