「なぁ、これってほんの少ししか使えないんだろ?」
外に出て……空中に浮かびながら、俺は次の動きをアスカに聞いていた。
『そうですねぇ……』
「じゃよう、俺は感じ取ったりってのも正直あんま自信ないし、どうやって探すんだよ?」
『基本的にあるような場所探せばいいんじゃないですか?』
訳の分からんことを……。
「あのなぁ、虫取り行くんじゃねぇんだぞ。有りそうなとこって……」
『ああ、ボクの言い方が悪かったですね。そこそこですけど、場所の特定は不可能じゃないんですよ』
!?
「そこそこって、どのくらいなんだ?」
『それは人によりけりですね』
言っている意味が分からない……。
特定が出来るってことは、それなりに定められた範囲に存在するってことだろう。なのに、人によりけり……人それぞれなんて……?
「どういう意味だ?」
『えっとですねぇ、人によっては、世界中です。でも、人によっては一つの町内とかそう言う単位よりも狭くなるんです。つまり、ほんの近所に存在する可能性もあるってことですよ』
益々解らんぞ…。
そんな俺の顔を見てか ―― ……そもそも向こうからは見えているのだから、やっぱ見てだろうけど…… ――
アスカは、言葉を続けた。
『霊体が単体で存在できる場所って言うのは、それなりに神聖な場所じゃないとダメなんですよ。だから、ボクも少し霊力を制御すれば、神社とかいっただけで、そりゃもう………』
そこでアスカは一瞬顔をしかめた。
『まぁ、それはいいとして、だから、鷹久さんの霊体もそう言った場所にあるはずなんです』
「ちょ、ちょっと待てよ……そんなモン世界中探したって何十年かかるか!?」
『あ、それは大丈夫です。世界中ランダムにある訳じゃあないですから。基本的にその人と何らかの縁とか縁(ゆかり)がある場所にあるんです。だから、鷹久さん、そう言った場所、何処か心当たり有ります?』
「ああ……」
俺はアスカの言葉に、半ば愕然としながらそう答えるだけ応えた。
『どこですか?』
「日本中だ」
『え?』
「だから、日本中だ……ただし、沖縄は除くけどな」
『日本中!?』
「そうだ。ガキのころな、何を思ってか知らねぇが、親父に日本中の神社仏閣回らされてたことがある。ほとんど有名なところばかりだった気はするんだが……何処行ったかまでは覚えてねぇや……」
『………本当、ですか?』
「ああ。だから、日本中だ」
『そんなのどうやって探すんですか!?』
………知るか……。
自分で心当たりある聖域って言ったんじゃねぇかよ……。
『どうするんですぅ?』
無責任に、困ったような表情をする。
いや、顔は見えないんだけど……声の調子からそう思ってしまう。
「で、ホント、どうすんだ?」
『そうですねぇ……取り敢えず、その中で一番深いところとかは覚えてます?』
「深い?」
『ええ。つまり、思い入れがあるとか、小さい頃でもいいので、よく行ったとか。そう言うのです』
「そう言われてもなぁ……」
我ながら不信心者だからなぁ……。
「あ!」
『心当たり、あるんですか!?』
「あ、ああ、まぁな……」
あることはあるけどなぁ……。
中学ぐらいまで毎年初詣に行ってた場所。
「ただなぁ……」
『ただ、何か?』
「いやな……場所が、覚えてねぇんだよ」
『えぇぇ!何でですか!?毎年行ってたんでしょう!』
「そりゃそうだけどな……俺さぁ、そこ、車で連れてかれてたもんでな……道分かんねぇんだよ」
『そう、ですか……あ、そうだ!なら、名前は、分かりますか?』
「ああ、そのぐらいならな。黄時雨(きしぐれ)って、神社だ」
『キシグレ?』
「えっとなぁ、正しくは ―― 」
『 ―― 黄京時雨(ききょうしぐれ)神社』
「『えっ!?』」
今の声、アスカじゃない。女性のようだったけど……。
それに、その後アスカは俺と同時に声を上げている。
じゃあ……?
『誰?』
『アスカ、久しいねぇ……あたしだよ。朱鷺(とき)さ』
『トキ!?』
「お、オイ、アスカ、トキって誰だよ?」
『あ、えっと………簡単に言うと私の敵です』
「敵?」
『ええ、生神(しょうじん)ですから』
「ショウジンって、何なんだ?」
『生きようとする意志を強く支援する神さ』
『………まぁ、そう言うのです』
「けどよう、その生神が何で、だ?」
『ああ、あんた、生きたいんだろ?手伝ってやろうと思ってね』
『えっ!?な、何で!鷹久さんはボクが生き返らせます!トキの力なんかいりません!』
『まぁそういうなよ。なぁ、あんただってそう思うだろう?』
………目の前(?)で、姿無き言葉の応酬が行われている………。
『聞いてンのかい?』
「あ、ああ……で、えっと……まぁ、そうだなぁ……せっかくなら早いほうがいいしなぁ……アスカ、この、トキちゃんってのの力、借りちゃダメなのか?」
『トキちゃん!?』
『トキちゃんねぇ♪』
ン?ん?なんか、悪いこと、言ったか?
『あんた、死なすよ』
「へっ?」
『あは、トキちゃんったら照れちゃって……鷹久さん、トキってねホントは結構可愛いのに、悪ぶってる子供みたいなのなんですよ。ね、トキちゃん』
『アスカああぁぁーー!』
トキがそう叫んだ途端、二人の声が途絶え、それまで何となく感じていた気配も途絶えた。
「………オイ………」
俺ほっといて勝手に消えるなよ……。
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