「さて、説明して貰おうじゃねぇか……龍――」
異空間から解放された斉藤がそう言いながら龍に詰め寄った。
「――まず、テメェ、どう言うつもりだ……俺に逆らうだけじゃあ飽きたらず、あまつさえ俺を別空間に押し込めやがって……えぇ?」
「ハ、ハハ……やっぱ、課長、怒ってます?」
「………テメェ、喧嘩売ってのか?」
「い、いえ……そんなことはありませんけど………」
詰め寄る斉藤に龍もたじたじ。
「俺だって、一応課長の身を案じてですねぇ……あのまま埜田とやり合ってたら、俺か埜田の攻撃で課長、死んでますよ。だから……」
「だから異空間に飛ばしただぁ……んじゃねぇ……と、言いてぇとこだが、テメェの首はこのヤマが片付くまで繋げといてやるよ……だがなぁ、その他にもいくつか聞きてぇ事があるんだが………」
ザッと室内を見渡し、そう言い懐に手を忍ばせる斉藤。
「あ、あの……課長、暴力はいけませんよ、それにですねぇ、ここが何でこんな惨状になってるかは俺にも分かりませんし………」
「ほう……」
目が据わってる………。ヤバイ……。
そんな斉藤を見て龍はそう思った。
しかし、龍にも心霊課の現状のが分かるわけがない。やったのは、鬼士華、操兵、轟霊角の三人。いや、三体なのだから。
「まぁいい。どうせ責任は回ってくるだろうが、このヤマの片が付きゃでゼロになるだろう……本来は黒字だが、まぁ仕方ねぇ……なら次の質問だ。お前が俺飛ばす前に言っていた、高木が人間じゃねぇってのはどういう意味だ?」
「え、ええ……」
それまで、恐々といった口調だったが受け答えをしていた龍が、口を濁した。
「答えろ」
「城島との戦闘の時なんですけど―――」
龍は戦闘中の高木の変動ぶり――ユカについて――を斉藤に話した。
「なるほど……で、お前はどう思ってんだ?」
「俺は、ですか……正直分かりません……そう言う知識は、余り詳しくありませんから」
「そうか……なら、俺の意見を聞け―――」
そう言って語り出した斉藤の言葉を聞きながら、龍は目を見開き『まさか』という言葉を全身で表現していた。
埜田、城島を逮捕してから一時間が経過していた。今、取り調べの真っ最中である。
埜田には本城が、城島には大村と山岳が着いて取り調べを行っていた。
「お前に何があったんだ、埜田?」
『さぁな……しかし出世したなぁ、本城。警察官なら誰でも憧れる警視にまで成ってよう』
「………」
『そう嫌な顔するなよ。分かったよ。知っていることだけ吐いてやる。だがなぁ、悪いことは言わねぇからこのヤマから手を引け。は並々ならぬヤツだ。正直、消されるのが落だ……』
神妙な顔をして、そう項垂れてみせる埜田。
そんな埜田を見ながら手元の調書にペンを走らせる。
「埜田、少し待っていろ」
そう言うと、本城はズボンのポケットから携帯を取りだし、大村のも席とに発進した。
「ああ、大村警部、悪いが外して山岳一人に任せて欲しい。理由は……悪いが口外はできん……」
『………はい……分かりました』
腑に落ちない。それも当たり前だろうが、警察組織は完全に縦の関係にある。それを解っている、大村の返事を聞くと再び埜田の顔を見た。そして、埜田も―――
『いいか、本城――』
―――本城を見るとそう再び口を開いた。
『――今から俺の言うことは絵空事じゃない。真実だ。それと、俺の話が終わるまで、黙って聞いていてくれ。いいな。』
「私には解らないことだらけだ。静戒も課長もお前のことを城島だと言っていたが、私にはまだそれが信じられん」
「そりゃそうだろうなぁ。常人にはよう……」
「はぁ、いったいお前達は何なんだ?」
「俺達は紅蓮さ……他に答えはねぇよ」
口元に笑みを浮かべ馬鹿にした口調でそう言いながら上目遣いで大村を見る。
その時、携帯の着信を知らせる音が聞こえた。
「………出ねぇのか?」
「………」
黙って扉に目をやると、山岳に目配せする大村。
「……」
山岳は大村に答えるように黙って肯くと城島に視線を合わせた。
「課長、どうかしましたか?……………」
そう言いながら室内に目をやる。
「はい。分かりました」
大村は短いその会話を終えると部屋を出た。
そして、大村に変わって山岳が城島の前に座る。
「どうしたんだ?」
「お前には関係のないことだ」
城島の問いにそう答えながら席を移動する山岳。
「まぁ、そりゃそうだな……で、続きやんのか?」
「当たり前だ。なら、始めるぞ。今紅蓮がてているものの中で重要なものを上げろ」
「その質問には悪いが返答しかねるな。その訳は簡単だ。俺のような下っ端には、そこまで通達がねぇからさ。俺は連絡のあったことだけを実行するのみ。ちなみに、俺への連絡は柿嵜官から来る」
「柿嵜……」
その名前を聞き、表情を歪める。が――
「なら、次の問いに移ろうか――」
直ぐに元の顔つきになって、城島の尋問を再開した。
「――柒刀の入手先は?」
「それも知らねぇ。柒刀の名前ぐらいは知っているが、あの三振りがそれだと知ったのは静戒との戦闘中だ。まさか、そんなたいそうな物を俺に預けてくれるなんて思ってもみなかったからな」
「そうか……」
『紅蓮は、霊界への扉を開けようとしている。目的は、霊界消滅。その真意は、俺のような霊体をもっと人間界に増やす為だ。人は、いや、人でなくても生きとし生けるものは、全て死ねば霊界に行く。そして、一定の平等の下の裁きの後、、、など、色々な方向に進む。だが、その制度を破り、あるいは霊界からの要請で幽体、もしくは霊体のまま現世に留まる者もいる。俺のような……。それを人為的にやろうとしているんだ。その為にはその機関を持っている霊界が邪魔でしょうがない。だから神取は霊界の破滅のために、そこへ通じる扉を開けようそしている。その為の、資金作り、能力者の収集、権力の強大化。そして、である警察組織の破滅それが、現在の紅蓮の動きだ』
「………だが、何故幽霊を現世に増やそうとする?」
その本城のはもっともである。
『その理由は、の建設だ』
「死の国……それはいいとして、建設、だと……つまり、この世に『死の国』という単語に合う場所を創るというのか!?」
『そうなるな……』
「なんと言うことだ……だが、本当にそんなことは可能なのか?」
『論理上は、少なくても不可能じゃねぇ……問題なのはそれをやることにより、俺のような力を持ったが増えると言うことだ。そしたら、まず警察や今居る霊能者なんかじゃ対処の使用がねぇだろうな……だが、それが紅蓮の、俺の知っている限りでの真実だ』
「………」
埜田の言葉に反応すら示さず、ただ空を見る本城。そして……。
「私たちには、何もできないのか……」
そう呟いた。
「後三日……」
「ん?」
「総帥は俺にそう言った。後三日でを殺れとな……つまり、その間に何かがあるんだろうよ」
部屋を出て行こうとした山岳に城島はそう言った。
「………」
黙ってその言葉を聞きながら、取調室を後にする山岳。
「高木幸香という婦警はな、突然警察学校にやって来やがったんだ。入校の時はいなかったらしい。だが、気づいたらアイツはいた。お前の同期としてな。そして、めでたく本庁入り。で、一課の警部。トントン拍子に上がってきた。だがなぁ、アイツの過去は誰一人知らねぇんだ。履歴書や、署に保管されてる個人データにも名前や現住所など、今時点で分かること以外、生年月日や出生地、学歴なんかも乗ってねぇ。だから、どういう経路でここに入ったのかもよく分からなければ、何故デカになったのかも解らねぇ。その上で、俺が導き出した答えは、紅蓮が送り込んできた密偵……」
「なっ!?」
斉藤の言葉を聞き、そう声を上げる龍。
「勿論根拠はある。アイツを起用したのは、森薗謹子だ。どういうことかは判るな」
「………つまり、紅蓮が今起こっていることの為に、警察内部から攻撃するように送り込んできた…………敵………」
「そういうことだ」
「嘘だ……幸香が……」
「俺も別段強い信んはねぇ。だが、お前の言う変貌ぶりから言って、まず間違いなく、高木はじゃねぇ」
「………」
龍には、何か言う気力すらなくなってしまったのか。その場に崩れ落ち、目を閉じていた。
龍も、その考えは持っており、現に斉藤に類似する言葉を継げている。
「それで、どうするつもりだ?」
斉藤は龍を見下ろし、口調を強くそう言った。
「………今は、ただ、事件を解決させるのみ、です……」
「そうか。ならば、一課に行け。本城一課長と山岳が埜田と城島の顎取りをしているはずだ」
「……はい……」
静かに返事をすると、壊滅状態の心霊課を出て一課に足を向けた。
「……ああ、課長……」
気の抜けた感じで本城の顔を見て言う龍。
その時本城は、丁度一段落したので、埜田の取り調べを切り上げ部屋から出てきた頃だった。
「?どうした、静戒…?」
「いえ、別にどうかしたというわけではないんですけど……」
言っている本人も、自分が同もしていないという自覚はないだろう。当然周囲から見た者も、「何かあったのか?」というように受け止めるはずである。
だが、それが龍の答えだった。元々自分の『負』をあまり周りに見せない性格のため、基本的には平静を装っているのだが、さすがに高木のことにはまいっているようだ。
「それより、課長、何か吐きましたか?」
顔を上げると本城にそう問う。
「ああ、それについてだが、山岳の城島の取り調べも切り上げたところなので、で会議を、と、思っていたんだが」
「はぁ、そうですか……でも、課が何者かに襲撃されて、壊滅状態なんですけど……ここじゃ、ダメなんですか?」
「壊滅状態!?」
「ええ、まぁ……そんなことはどうでもいいんですけどね。一応、星の目星はついてますし、課長も知っていますから……」
「あ、ああ、そうか……なら、斉藤を呼ぶか……」
そう言うと、龍に背を向け、一課長室に向かう本城。
「なら、俺、課長呼んできますけど……」
「いや、いい。それよりも、山岳を呼んできてくれ。斉藤は私が呼ぼう」
「あ、はい。そうですか。分かりました……」
十数分後、捜査一課長室内に、高木を除く紅蓮組織捜査員が集まっていた。
「早速だが斉藤、心霊課が襲撃されたそうだな」
「ああ。だがたいした問題はねぇ。必要な物は表には出しちゃいねぇからな」
「………そう、か……なら、それはいいとして本題に入る。紅蓮も、要人である埜田を捕らえられ、動くが有るはずだ。それに、城島の言うところの三日間の間に心霊課員を始末しろ。と言う神取の言葉も気になる。そこで、率直に言う。紅蓮に、神取カンパニー本部に、潜入する。そして、その間に、森薗参謀室長と、央朝公安委員長に対する札を請求する」
「あんた、正気か?」
そう声を上げたのは斉藤である。
「冗談を言っている顔に見えるか?私はこの件で大村警部と山岳巡査部長に少し裏を探ってもらった。その結果、この二人の裏は取れた。この前、静戒には大村警部に別に仕事をしてもらっていると言っただろう、それだ。大物なら大物なほど叩けば埃は出やすい。そう言うことだな。だが、あまり明確ではない写真程度の物しかない。今あるそれらを元に、その物証を得て欲しい。ついでに言うと、その写真や映像は現在復元中だ」
「………大村警部がよくそんなこと引き受けましたねぇ」
「彼と森薗室長とは以前から面識があってな、そのツテを使って、周囲の聞き込みなどを中心にしてもらった。警部も、仮にも知り合いが犯罪者でいるのを黙っていられなかったのだろう……まぁ、多少なりとも辛い仕事させてしまったがな」
「………内容は分かりました。それで、人員配分は?」
そう言い、もたれ掛かっていた扉を離れ、斉藤の横に立ち直すとそう言った。
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