「あの、小野寺さんは、本当に完全に操られていたんでしょうか?」
「どういうコト?」
「そう言えば、さっき奏魏君何かいいことがあったって言ってたわよね」
「え、ええ……」
「つまり、操られては言えないはずのことを小野寺さんから聞いたったコトね」
高木は奏魏を見ていった。
「………はい、実は……――」
「なるほど……つまりは、立花籐兵衛がのことした最後のマシンが杜若君のライトフライヤーと言うことになるのね」
「はい。元々は風見志郎――仮面ライダーV3が乗るはずだったマシンだったようです。俺は、神谷さんから名前を聞く前に、小野寺剛司という名は知っていました。ライトフライヤーの設計図に書かれた二つのサインの内の一つがそうだったので」
ちなみに、もう一つは湧輝の父、杜若朋春であったことを付け加え言った。
「だから、そんなこと、操られていては言えないのでは、と……」
「ほぉ……ま、双十の言ってることはあながち間違いじゃねぇ……ちなみに、説明できるか?神谷さん……この事実がどういうコトなのか」
薄く笑みを浮かべ言う静戒。
「………残念ながら……」
「そうかい。ま、至って簡単なことなんだけどな……降霊って知ってるか?」
一同が黙って頷く。
死者の魂を一時的に憑依させその人間の身体を使って霊が話すことの出来る霊術だ。
「結構。ンじゃよぉ、その降霊で完全に霊を自分に移す力のある能力者が此の世に何人いるか知ってるか?」
静戒の問いに一時の沈黙が訪れる。
数秒の後、静戒は回答を出した。
「正しい数値じゃない。コレは断っておくぜ。あくまで俺の知る範囲でだ……ゼロだ」
「……龍、いったい何が言いたいの?」
「………幸香、もうちょい待ってくれるか……ソレじゃあ、次の問。その降霊の逆は可能か?」
やはり黙っている一同。
「答えは“YES”」
妙に発音よく言う静戒。
「所謂、乗り移られたって状態さ。さて、では、この時に霊や物の怪、つまり魑魅魍魎が人や他の生き物の体を完全に制御することは出来るか?」
やはり沈黙。
「コレは……半分は可能。半分は不可能だ……取り憑かれたのが人じゃない生き物ならば自我が弱いために可能だ。が、人に関しては自我が強いために不可能となる。もっとも、何らかの形で自我を失っていたり、脳的な病状のある者は別だがな」
「………つまり、どういうコトなんですか?」
「何だよ。まだ解んねぇのか、双十?……ま、言ってもいいけどな。神谷さんはどうだ?あんたの言うところの趣味の知識を使えば答えは簡単に出るんじゃないのか?」
「……ええ……言いたいことは分かったわ。けど……」
そこで言葉を切る神谷。
そして、ソレを見守るように見る一同。
「………やっぱりいい……他にないわね」
「何だよ、反論は言っておいた方がいいぜ」
「いいわ。郷に入っては郷に従え、長いものには巻かれろ……餅は餅屋……原則的に専門家に同行は言わないわ。つまり、小野寺さんの自我が強かったためにセイドの力と本人の力が反発し合って、時にはセイド時には本人の言葉となっていたという訳ね」
「そう言うこと。納得したか?双十」
「………分かりました」
「それじゃあ、ま、みんな一応程度かも知れないけど……これからどうすればいいと思う?」
しばらく後、煎れてきたコーヒーを配りながら高木が聞いた。
「どうって……行くしかないだろう。なぁ、双十」
「そう、ですね……」
「行くって……まさか二人ともッ!」
「察しの通りです。俺と静戒さんは、南極に、いえ、冥界に行きます」
「正気なの!?」
「ああ」
「奴等が本当に壊滅したとしてだ。その場合更なる危険があるのはわかるだろう……そいつは、防がなきゃならねぇ」
「で、でも……ソレなら国連や世界に――」
「言ってどうなるんですか?」
高木の言葉を遮り奏魏は言った。
「仮に世界各国から軍隊を派遣して……それで勝てると思いますか?DEVILにでさえ日本の勢力は手を焼いていた。日本の軍事力は大国から比較しても決して劣るものではありません。ソレが一切効かなかったンです……正直、日本を襲っていたのは奴等の中で弱者でしょう……ソレすらあの能力(ちから)です。世界中の軍隊が動いたところで到底適うとは思えません。何千何万の軍隊よりも俺達………俺達MASKED RIDER一人の方がいい……そんなこと、分かっているはずです!!」
「そ、それでも……」
「それでも何だよ」
今度は静戒が言う。
「僅かでもどうにか出来る可能性があるならばやってみろ?とか言うのか……無駄なことだ。街を襲ってやがった奴等の上に四天王ってのがいたんだろ。それをあの小僧は一掃したんだろ?つまり、奴等の上の上の奴等を相手にしなきゃならねぇんだ」
「理解って下さい……無駄な血は流しても仕方ないんです」
奏魏は俯きがちに言った。
「なら――」
「――私も行く!!」
高木が言いたかったことを先に言われてしまった。
勢いよく扉を開け放ち入ってきた声の主はそう言って奏魏の前に素早く立った。
「奏魏君!私も、湧輝の所に行く!」
「な、え、あの、ちょっと……」
たじろぐ奏魏。
それはそうだろう、まったく予想だにしていなかった相手が現れたのだから。
「知り合いか?双十」
そんな奏魏を尻目に言う静戒。
「え、ええ……まぁ……」
「そいつも、お前や湧輝のような民間警察なのか?」
「いえ……彼女は……」
「そうか。なら、部外者だな……ったく、ウチの警備はどうなってんだ……そもそも何で民間人が簡単に入ってこれンだよ」
「えっと……済みません」
謝る奏魏。
「お前が謝るこたねぇよ……ま、警備面は後で文句言ってくらぁ……ま、それはいいとして……嬢ちゃん、あんたはとっとと帰んな。邪魔なだけだ」
何の容赦も遠慮もなく言い放つ静戒を高木が制そうとしたが――
「素人の出てきていい場じゃねぇんだよ!」
ソレも気にせずそう怒鳴った。
「何、このオジサン?」
が、そう言った声の主は奏魏に聞きながら静戒を指さした。
「ちょ……す、済みません……静戒さん……ちょっと、待っててください!」
言って、その手を取ると室外に連れ出す奏魏。
「――坂口!お前何で此処に居るんだ!!」
「え?奏魏君の知り合いだっていったら入れてくれたよ」
「マジかよ……」
もの凄く脱力する奏魏。
「うん。コレ、見せたらね」
言いながら手帳のような物を見せる彼女。
そこには『杜若研究室』の文字。そして、故・杜若朋春の署名捺印がされていた。
そして、彼女の氏名――坂口絢耶の署名捺印も。
ソレは、旧研究所時代に朋春が作った研究員及び関係者のみに渡された身分証明である。
元々は科警研にも朋春が勤めていたために其処への出入りのために作られたのだが、どうやらまだ警視庁ではその効力は有効なようだ……。
「まったく……何でそんな物お前が……」
言って頭を巡らせる奏魏。
本当は「偽造だろ?」とか言うつもりであったが、残念ながらソレが本物である事実の記憶が在ってしまった。
数年前、まだ朋春が健在の頃、冗談半分で自分と坂口の分を杜若を通して作ってもらったことを。
あんなコトするものじゃないと後悔したところで今更遅いのだが……。
「ま、まぁ、来ちゃったのは仕方ないけど……でも、ここからは危険なんだ。湧輝から聞いただろ?状況は……今はソレに輪を掛けて大変なときなんだ。だから、黙って帰ってくれ……此処は、危ないんだ!」
「此処は?ソレってどういうコト?この警視庁?それとも日本?そんなんじゃないでしょ?危ないのは、世界中何処に言っても同じでしょ!」
「……それは……」
坂口のその言葉に黙ってしまう奏魏。
「なら、連れってってよ!」
「そんな遊びに行くみたいに言われても……」
「――いいんじゃないの?」
「高木さん!」
いつの間に部屋を出たのか、そう言う高木の姿があった。
「そうね。どうせ日本(ここ)にいても危険なんだから」
「神谷さんまで何言ってるンですか!」
同様に神谷の姿も。
「ね、奏魏君邪魔しないから」
そう言う女性三人に言われてたじろぐ奏魏。
助けを求めようと扉を開けた。
「静戒さんからも何か言って下さいよ」
「双十、諦めろって……女ってのは一度わがまま言い出したら聞かねぇんだからよ」
苦笑気味に言う静戒。
「さっすが大人の男、分かってるじゃない!」
ウィンクしながら笑顔の坂口。
「何だよ嬢ちゃん、オジサンに言われて嬉しいか?」
「フフ……オジサンは言葉のあや。まだ若いんでしょ?」
「オジサンでもいいんじゃないの?あなた、奏魏君と同じ位の年でしょ?女子高生にとったら二十四なんてもうオジサンだろうし」
茶化す高木。
坂口の思わぬ登場で緊迫した空間に穏和な空気が流れた。
「それじゃ、自己紹介も終わったところで……本題ね」
坂口に対する自己紹介を終えた後、その場で最上階級の高木を中心に言葉を主に向けた。
「まず、一つ報告。既に事実上解散していたけど、完全に捜査本部――対策室は破棄したわ」
「そうだな、その方がいい。どうせ、こっからは誰の力も借りれねぇしな」
「そ。私たちで、やらなきゃならないから」
「その上で、ちょっと変かも知れないけど……新対策チームを編制してもらった」
「新しくだ!?お前何考えてんだよ!今誰の力も――」
「――警視総監に、ですね?」
静戒が口を挟み、そして、奏魏も。
「……そう。奏魏君は知ってるわよね。現警察組織のトップで、そして、元FBI捜査官の、あの、警視総監に……」
「そう言えば、双十お前、確か前にも総監に会うとか……」
「……なるほど……静戒君、総監の名前、言ってみて」
静戒の言葉に、神谷がそう言った。
「名前……………………って、まさか!?同姓同名とかじゃねぇのかよ……」
「いいえ。彼は……SHOCKERと戦った戦士の一人、滝一也(たきかずや)その人よ」
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