「逃がした?!それなら、なぜ緑川博士は殺されなきゃならなかったんですか?」
小野寺の言葉に奏魏は疑問符をぶつける。
「博士はもう不要とされていたからだ……だから、本郷猛脱走を口実に緑川博士を抹殺したんだ」
「……」
黙る奏魏。
「………分かりました。でも、それじゃあ、仮面ライダーとはいったい何なんですか!」
「仮面ライダー……本郷さん達は……いや、正しくは、風見さんと結城さん、それに神さん、山本さんを除く人達は――」
†
「改造人間の乗る特殊マシン――バイクの脳となる存在なの」
†
「――ッ」
奏魏には声が出せなかった。
†
「冗談、だろ……」
言葉を発したのは静戒だけだった。
『ふふ……冗談じゃないよ、お兄さん』
完全に馬鹿にした口調で言うセイド。
「巫山戯ンな!!」
†
「――ちょ、ちょっと待ってください。知能を持ったマシン……それじゃ……南光太郎のバトルホッパーも」
「そう。そして、正しくはソレを元に作られたんだ……仮面ライダーも、マシンも」
「そんな……どういうコトなんですか……」
†
『どういうコトって、ボクたちが作ったんだよ……ゴルゴムを』
「……ええ、そう言うことらしいわ」
「らしいわじゃねぇ、何平静ぶってヤガル!」
「静戒くん、落ち着いて。コレは、歴史の裏に隠された真実なの!」
神谷は声を荒げて言った。
『いいよ。もうお姉さんに説明してもらわなくても。ここからはボクが話してあげる。ちゃんと聞いてよね、お兄さん』
地に足を着くと、下から覗き込むようにして静戒を見た。
『ゴルゴムは僕たち冥界の民が人間界の生き物を改造して数十万年前に作った組織。そして、五万年ごとに変わる創世王の為に知能を持つ特殊マシンを造らせた。さて、ここで問題です。次期創世王となる世紀王は何故二人いるのでしょうか?』
「まさか……」
高木が口を覆いながら後退りする。
『お姉さんには解ったみたいだね……そ、最後の審判で負けちゃった方はそのマシンの脳を完全にするのに役立ってもらうのさ。ま、BLACK・SUNが創世王を倒しちゃったからもうどうでもいいことだけどね』
「……巫山戯るな……人間をオモチャみたいに言いやがって……」
言う静戒の手には既に紅の刃が握りしめられていた。
「龍ッ!!」
制しようと前に出る高木だったが、一歩及ばず静戒はセイドに斬りかかった。
「ハァッ!!」
掛け声を上げ斬撃を放つ静戒。
『おっとっと……ちょっと、いきなりだなぁ、お兄さん。でもね、お兄さん、人間なんてボクたちにとったら所詮オモチャみたいなものなんだよ』
セイドは空間に消え、そして声だけがそう響いた。
†
「つまり、そのゴルゴムのやり方を何らかの方法で暗黒B52星雲の者が知ったんだ。そして、それをその時ゴルゴムのあった地球で再現した、もっとも、たまたまゴルゴムの活動が停滞化していただけだったからソレは再現と言うよりは単なる猿真似だったと言った方が正しいかも知れないがな……」
小野寺は自分に言い聞かせるように言った。
「そのことは……そのことは知っているんですか?本郷さん達、改造人間――仮面ライダー――は」
「私には解らない。だが、本郷さんほどの人だ。あの人は天才と言われた人だ。ゴルゴムと南くんの活動で気づいたかも知れない。いや、もしかしたらもっと前に既に気づいていたのかも知れない……」
その目は既にサイクロンしか写っていないようだった。
「つまり、ライダーは……段々と、そのマシンに同化していくという、コト、デスか……?」
「本来は、そうらしい」
「本来?」
サイクロンから視線を外し自分を見た小野寺の視線に奏魏が同調する。
「そう。本来は、だ。しかし、その事実の詳しい所までは暗黒B52星雲の連中もショッカーも知らなかった。だから、どうやったらライダーがマシンと同化するのかは解らなかったんだ。そして、一号二号がその同化を抑えた理由は他にもある。あの人達は自らの強化のためにマシンを乗り換えたんだ。だから、同機がうまく行かず、同化も起きなかった。他の戦士達が同化しなかった理由もその前者と同じコトだ」
小野寺はそこまで言うと言葉を切り奏魏を見た。
「……そう、ですか……なら、悪いですけど、少し話を戻させてください。貴方は、何故湧輝にマシン……FLASHの専用マシン、ライトフライヤーを造ったんですか?」
「奏魏君、アレはな、私が造ったものじゃないんだ。最終的には確かに私が完成まで持って行った。だが、アレを造ったのは、立花会長と……風見さんなんだよ」
†
「済みません、静戒さん……今、戻りました」
そう言って奏魏は警視庁の地下の空き部屋に入ってきた。
その顔は、何故か溌剌とすらしているように見えた。
「……奏魏君、何かいいことでもあったの?」
睨み付ける静戒を押さえる意味も込めて、高木は奏魏に尋ねた。
「ええ、ちょっと……ソレより静戒さん、あの子供の姿したヤツは何か言ってましたか?」
「ああ、とんでもねぇコトをサラッと言ってきやがった……」
吐き捨てるように言う静戒。
「その様子じゃ、ホントにろくでもないコトなんでしょうね……」
「ああ、ま、そうばかりでもないかも知れないけどな」
「どういうことですか?」
「あの小僧がな、DEVIL……壊滅してくれたんだとよ……」
「…………本当、ですか?」
「わからね。だってよぉ、確認の方法がねぇだろ?」
「そりゃ、そうですけど……それで、ろくでもないって言うのは……?」
「仮面ライダーってのは、生態兵器じゃねぇって話をしていきやがったんだよ」
「何ですって!」
奏魏は相当驚いているようだ。
が、それは別にセイドがその話をしていったからと言うわけではない。勿論、小野寺からたった今同じ話を聞いたからある。
奏魏の予想通りの驚きに、若干満足気味の静戒。
「それって――」
「……凄いタイミングね……」
奏魏は、小野寺から聞かされた話を打ち明けた。
そして、凡そ一分の沈黙の後、高木はそう言った。
「そうだな……」
疲れたように椅子に座ると目を押さえて静戒も言う。
「どう思います……?」
「どうって、何が?」
「その、タイミングがです」
「どういう意味だ?」
「おかしいと思いませんか?俺と静戒さん達、まったく離れた場所でほぼ同時刻にまったく同じライダー達の抹消された記録を聞かされるなんて……偶然なんて、ありえません!」
豪語する奏魏。
「お前の言うことも分かるけどな……それだと、その小野寺っておっさんを疑うことになるんだぜ」
静戒のその言葉に一瞬困った顔をする奏魏。
「そんなこと、分かってます……でも……――」
「――説明しましょうか?」
奏魏が何か言いかけたとき、そう女性の声がした。
その声に、その場の誰もが心当たりがあった。
その為に、全員が声のする部屋の入り口に向かい振り返る。
「神谷、さん……」
その名を呼んだのは奏魏だ。
「説明しましょうか?」
彼女はそう繰り返し聞いた。
†
『セイド、だったか?』
『ン、どうかしたの、兄さん』
『いや、お前が人間達に名乗っていた名さ』
『ああ、その音が一番近いと思ったからね。でも、どうだっていいじゃない。そんなの』
『まぁな……けどまぁ、俺も名を付けてみるかなぁ……そうだなぁ…………サイファー、この辺でいいかな……』
『ふふ……相変わらず物好きだよね。兄さんは』
『オイオイ、物好きとか言うなよ。ただ単に……遊び好きなだけさ』
『ふふ。でもね、ソレが兄さんの悪い面だよ』
『悪いって、お前だって今遊んでたじゃないか。何だあの中途半端な傀儡は』
『あれ、やっぱり気づいてた。だってさぁ、カナギさん、来てくれなかったんだもん。仕方ないでしょ』
†
「説明って……神谷さん……」
片手を上げて制するような格好で声を掛ける静戒。
「アラ、やっぱり静戒くんは気づいてるのかな?」
からかうような口調で答える神谷。
「たぶん静戒くんの考えは当たっているわ。傀儡の術、よ……」
その口調は“本当はそんなモノは信じたくない”と物語っていた。
「傀儡、ですか……」
やはり重い口調で言う奏魏。そして、その気持ちの同意するように頷く高木。
「奏魏君、確か、君の報告では敵は式神を使っていたんでしょ?」
「ええ、まぁ……」
「ああ、ソレは間違いないぜ。俺が保証する」
言う奏魏と静戒。
「つまり、そこから考えるに小野寺さんがほぼ同時刻にセイドが話したことと同じコトを喋ったのはセイドによって操られていたからだと思うの。確か、本来は奏魏君にも此処にいるように。セイドはそう言ったんでしょ?でも、実際には私のせいでここには居なかった。しかし、敵は奏魏君にも話を聞かせたかった。だから、行き先である小野寺さんのところで傀儡の術を使って変わりに話させた……そんな所じゃないかしら?どう、静戒くん?貴方の方が専門でしょ?」
「………俺に異論はねぇよ」
「それじゃあ……小野寺さんは、操られていた、だけってこと、ですか?」
「そうなるわね。どう、違う?静戒くん」
「だから異論はねぇって言ってるだろう」
苛立ったように言う静戒。
「だが――」
異論はないと言ったもののそう接続詞を口にする。
「――疑問はある」
「……何?」
「疑問はその内容に関してじゃねぇンだけどよ……」
「焦らさないで」
「…………ま、いいか。あんたに関してだ。神谷玲子」
言って指さす。
「どういうコトかしら?」
挑発的に腕を組み問う神谷。
「疑問は二つ。一つは、何であんたがそんな本来あんた達科学者が毛嫌いしている非科学に詳しいか。もう一つは、何であんたは双十に小野寺っておっさんのコトを話したか、だ。明確な回答が欲しいな」
「なんだ。そんなこと……簡単だわ。まず一つ目は、単なる趣味。普段自分の居ない世界のことに注目するのは誰しもあるコトよ。ことに、何らかの専門家ならね。料理研究家がファーストフードに行ったり、抽象画家がコンピュータを弄る。対局する物を見ることで気が紛れることは少なくはないわ。それが私の場合は霊や魔なんかの非科学だった。で、二つ目。コレはタイミングは単なる偶然。それに、仮面ライダーに詳しい人物を警察や科学者の横の繋がりで捜して欲しいって言ったのは奏魏君からなのよ」
そこで一息入れ、神谷は続けた。
「どう、納得できたかしら?」
「………静戒さん、神谷さんの言っていることにウソはないと思います」
ダメ押しのように奏魏が声を出した。
「…………分かった、納得しよう」
言うと静戒は背を向けた。
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