#16

本当の敵は?
「双十、コイツ任せろ、お前はパーティーの主催者を絞めてこい」
エンジンの回転数を上げて前輪を上げ、そのまま敵に乗り上げた。
「さ、遊ぼうぜ……」



「静戒さん、ホントに遊ぶつもりだ……湧輝と言いまったく……」
愚痴りながらFGはエンジンをフルスロットルに入れた。
「ダメだ……遅いな……」
風を切っているせいで、その声は周りには何も聞こえない……はずだった……。
『遅いか……そうだな……遅すぎるな……だが、所詮人間の限界は其処までだ』
「ああ、理解ってるさ。けどなぁ、ソレを人間じゃない奴に言われたくはねぇんだよ!」
言いながらバイクから飛び降りるとそのまま真横にいた異様のモノに裏拳を食らわす。
「DEVIL……だな」
『ああ、そうさ……あの黄色い奴はどうした?怖くて逃げ出したか?ま、そりゃそうだよな。俺等はV3を滅したんだからなぁ』
FGの裏拳など無かったようにそう言い立っているソレ。
『偽晶(ぎしょう)、戯れが過ぎるぞ』
と、ソレ――偽晶の言葉が終わると同時に空間を割って人間に近い姿の者が姿を現した。
『あ、惡紋様!?』
その登場に驚きを隠せない偽晶。
「アモン?」
『済まない……部下の非礼を詫びよう』
「お前、何者だ?」
『そうだな……この世界に併せて言うなら……DEVILの四天王の一角。そんなところだとでも思ってもらえればいいだろう』
「なん、だと………!?」
『聞こえなかったのか?』
「そうじゃない……そんなヤツが、何でのこのこ出てきやがったんだ!」
『お前達に少し聞きたいことが出来てな……なぁに、簡単なことだ。あの霊能師についてだ』
「霊能師?静戒さんのことか」
『セイカイ……ソレが奴の名か……一つ聞きたい。ヤツは、祠祭師ではないのだな?』
「シサイシ?なんのことだ?」
『数千年の昔にこの世界にいた祠祭師――ヒミコとは関係ないのだな?』
「ヒミコ?……邪馬台国の卑弥呼か?」
『そうだ。古の時代の祠祭師、ヒミコだ』
「悪いが解らないな。俺はあの人の力が一体どういうものなのか知らないんでね」
『そうか……ならば、本人に直接聞くか……偽晶、少し相手をしてやれ。私はセイカイを消す。仮に関係があった場合、あまりいい結果は出さないだろうからな』
言うと、惡紋は空間に消えた。



『兄さん、聞いた?』
『何をだ……?』
『惡紋のあの言葉』
『ン?』
『自分を四天王の一角だとか言ってなかった?』
『ああ、あの戯れ言か』
『うん……どう思う?』
『どうというと?』
『お仕置きが……必要じゃないかなぁ……』
『仕置きか……そうだな。だが、それなら、俺達にも非はあるぞ。あんな下級者達をのさばらせているのだからな』
『それは……まぁ、そうだね。でも、なら、責任を取ればいいんでしょ?』
『まぁ、それはそうだな』
『じゃあ、ボクが滅してくるよ。あの四人をさ』
『ほぉ。いくら下級とは言いよお、束になれば中の下程度の力は出ると思うが』
『まぁ、そうかもね。でも問題ないって。だって、ボクは上の下なんだから』
『謙遜か?』
『そんなんじゃないよ。兄さんにはまだまだ叶わないし。それに……まだ彼等にも勝てる気がしないから』
『そうか……解った。ならば、遊んでこい』
『はーい』
惡紋達四人がいた空間によほど近いが、それよりも更に闇の深い空間。そこで、二人の物の声が響いていた。
その言葉内容から間違っても杜若達の見方ではないことだけは確かであろう。
しかも、惡紋達などとは比べものにならない禍々しさを発していると言うことも……。



『偽晶……だっけか?』
『ッ!?!?!?!?!?!?』
空間を切って現れた者の顔を見て偽晶はFGから視線を放さざるをえなかった。
『な、何故アナタがこんなところに!』
『そう驚かないでよ。惡紋達から何聞いてるか知らないけど、戦士達を封じたのはボク達だよ』
『ボク、達!?』
偽晶の驚きは誰がやったとかではなかった。現れた者が言った複数を意味する言葉“達”
『ま、まさか……』
『ン?兄さんも動いてるってコトだよ』
『サ、サイ――』
『はい、そこまで。兄さんの名は口にしない方がいいよ』
言ったその者の目を見て偽晶は凍り付いた。
「オイ、待てよ。何なんだ、お前?」
FGは突然現れ偽晶を事実上の無効状態に追いやったソレに声をかけた。

姿は確かに人間だ。
それもまだ一二,三歳の子供に見える。肌の色はインドア派のように若干白すぎる気もするが、今時の子供ならば別におかしな点ではない。
服装も、パーカーにハーフパンツ。肩を越える程伸びた髪が、一見すると女子のようにも見える。
が、容姿でおかしかったのは振り向いたときのその瞳だった。
純白な眼球の中に禍々しく輝くのは日本人の黒でも欧州のようなエメラルドカラーやブルーでもない。まるで、闇夜に流れた血液のようなどす黒いが確かな赤を見ることのできる紅であった。
『ああ、ゴメンね、お兄さん』
振り向いたとき、FGは圧倒的におかしい点に気づいた。
その頭の位置が自分や偽晶のその位置と同じ位置に存在していたのだ。
コイツは、浮いている……。
一歩後ろに飛び退くと構えを取る。
『そんな嫌わないでよ』
心底残念そうに言う。
『別にお兄さんをどうこうしようって訳じゃないんだからさぁ。でもま、話くらいは聞いて欲しいから、ちょっと待っててよ。ケーシチョーだかって、場所で』
言うなり、ソレは空間を再び渡り虚空に消えた。
と、それと同時に目の前の偽晶の頭部が吹っ飛んだ。
「ッ!?」
声に出せない驚嘆がFGの全身を通り過ぎる。
「な、なんなんだ……あの子供は?!」



『やっほー、取呪(しゅしゅ)。それに……確か、セイカイ、さんだっけ?パーティー、ボクも混ぜてよ』
「何だテメェは……テメェも、DEVILか?」
『うーん、お兄さん達の言い方をすればそうかも知れないけど、正しくはもっと上だけどね』
「ほざけ」
『チェ、怒られちゃった。ま、そんなことはどうでもいいや。取呪、偽晶には死んでもらったよ。君も、逝きたい?それとも……』
『――た、助けてください!』
言うが早いか、静戒の相手――取呪は空間にその身を消した。
「何なんだ?このガキのせい……なのか」
『ま、そうなるかな。あのさぁ、さっきFG――カナギさんだっけ――にも言ったんだけど、ケーシチョーって、トコで待っててよ。ちょっと聞いて欲しいことがあるからさ。それじゃ、ボクはコレで』
言うと、再びソレは空間に消えた。
「何なんだ……いったい?」



結局、二人は、それから十数分後、警視庁の捜査一課、強行犯係の室内に来ていた。
「それじゃあ、双十のところにも現れやがったのか?」
「はい。でも、いったい何なんでしょうか?」
「解んね。が、そいつがとんでもなくヤバイ相手ってのは確かだな」
「ええ、何せ、敵を一瞬で倒しましたから。どうやら、DEVIL内部でも決裂が起きているみたいですね」
「ああ、それが俺等にとっていいことなのかどうなのかは判らねぇがな」
「そう、ですね」
「しかし、自分で言いつけといて、何も言って来ねぇなぁ」
「遊ばれてるだけ何じゃないの?二人とも」
そう言って室内に入ってきたのは二人の女性――神谷と高木だった。
「遊ばれてるだと?」
「だって、相手は子供――の姿――だったんでしょ?」
「ああ」
「って、ことは、中身も子供なんじゃないかってコト」
「そう言ってもなぁ」
「あ、そうだ。双十君、ちょっといい」
手に持ったファイルを振りながら神谷は奏魏に言った。
「え、あ、はい……何か、ありましたか?」
「ちょっと面白いことがね。科捜研に来て」
「はい……それじゃあ、俺は――」
「ああ、何かあったらしらせてやる」
その静戒の言葉を聞き、奏魏は神谷について部屋を出て行った。



「神谷さん。それで?」
科捜研に着いた奏魏は早速本題に取りかかろうとした。
「彼等――仮面ライダーにとても詳しい人物が一人上がったわ」
「それは……?」
「立花(たちばな)、籐兵衛(とうべい)」
「立花?」
「仮面ライダー1号からストロンガーまでの七人の戦士達の育ての親とも言って良い人物よ」
「それで、その人は?」
「……四十年前の時、既に彼は五十近かった……残念ながら彼はもう他界してしまっているわ」
「そう、ですか……」
「でも、その意志を次いだ人が一人いるの。当時まだ十三歳の子供だった。立花籐兵衛と、仮面ライダー1号本郷猛等によって設立された子供だけの機関――通称、少年仮面ライダー隊の中心的な人物だったらしいわ。名前は……小野寺(おのでら)、剛司(たけし)」