「奏魏君、ムリはするな……それよりも、杜若君を呼べ!それまでは俺が食い止める!」
『食い止める?我等をか……?冗談にしては笑えないな』
「フ……この世界に来てな……多少は力が増えた……お前達ぐらい……ソードアーム!」
ライダーマンの腕には、日本刀のような曲刀がはめられていた。
「行くぞ!!奏魏君、早く!」
「は、はい!!」
奏魏は返事をすると、FLASHのセンサーに反応する周波数で言葉を送った。
「湧輝、この前の爆弾魔が現れた。場所は近くの公園だ……来てくれ!」
†
「ったく……だから言ったじゃねぇかよ……大丈夫かって……龍、悪いけどまとめは後にしようぜ……双十が厄介なことになった。あんた等が現れたときの爆弾魔が現れたっぽい……消しに行く……あんた等も来るか?」
「そうだな……せっかくの共同戦線だ、行くだろ、幸香?」
「そうね……」
「なら、行こうぜ……双十のスーツはまだ完璧じゃないらしい。結城さんだけじゃ、正直心許ないだろうからな」
†
「結城さん、湧輝はすぐに来ます……それまでは、俺も……」
FGは改めて構えを取ると、獄憐に躍りかかった。
「はぁぁ……セイヤッ!!」
『グワッ!』
『そこまでにしてくれない?ボウヤ』
「何ッ?」
少し離れたところにいる酷憐を見るとその腕には、ライダーマンの左手が握られていた。
『このまま……壊しちゃってもいいのよ』
「だ、大丈夫だ……俺は……」
「結城さん!」
『アニキ……そいつは放っておきなよ……それよりも、コレ使って、遊ばない?』
『……なるほど、それも面白そうだな……』
『でしょ?じゃあ……バイバイ、ボウヤ』
酷憐の言葉に、魔物二人は空間に消えた。そして、その腕に捕まっていたライダーマンも……。
「ッ!!」
「悪い、双十、待たせた!」
「湧輝……結城さん……捕らわれちまった……」
「は?」
『ボウヤ、少し遅かったわねぇ……』
杜若が疑問詞を上げたとき、空中にそう言葉が響いた。
それは酷憐の笑みとも取れる口調のものだった。
「酷憐!結城さんをどうするつもりだ!!」
『大したことではない……よくある話だ。処刑するのだよ……だが、ただ処分しては面白くない。お前達にも希望をやろう。この世界の時間で言う明朝の日の出。その時までに助け出せれば、解放してやる。なぁに、心配するな。舞台はこの世界だ。その気になれば探し当てることはできるだろう』
その獄憐の言葉を最後に、空間から聞こえる声は途絶えた。
†
「何とかなんねぇのか、龍!サツの力でよう!」
「してやりてぇのは山々だが、事実上存在しないはずの人間の捜索は困難だ。特に警察ではな」
「チッ……使いてぇ時に使えねぇ……あ、そうだ、双十!お前の装備は結城さんが造ったんだよなぁ。なら、波長がリンクできるんじゃねぇのか?」
「論理上は……不可能ではないが……」
結局四人は杜若の家に戻った。
タイムリミットは、後――半日。
夜明けはおよそ朝六時過ぎ。今は一八時過ぎ。
「ちくしょう!オイ、双十、何でテメェ俺に連絡なんかした!よほどのことがあれば感じ取れるんだ!お前だって知ってるだろう?それを……」
「杜若君、落ち着いて。今は、結城さんの場所を探る方が先よ」
「……わかってら!」
杜若は言うと立ち上がり、部屋を出て行った。
「湧輝!」
「奏魏、アイツだって馬鹿じゃねぇ。放っておけ。自分が、悔しいんだよ……彼奴の気持ちは解らねぇでもねぇ」
「でも、静戒さん……」
「それよりも、論理上は、可能なんだろ?」
「………はい」
「なら、やろうぜ」
ピンポォォーーーン。
と、その時、呼び鈴が鳴った。
†
「馬鹿野郎……俺は……結局何も護れちゃいねぇじゃねぇかよ……」
自宅の屋上。
杜若は、手すりに寄りかかりながら毒づいた。
「――なら、これから護ればいいじゃない」
「!?絢耶、お前、何でウチに……」
「居ちゃいけない?子供の頃はよくお互い行き来してたじゃない」
「そんな、ガキの頃の話は……」
「どうかなぁ。今の方がよっぽど子供に見えるけどな」
「なんだよ、それ……」
外を見渡せるように向き直ると、杜若は街の灯りを見ながら言った 。
「昔はかなり無鉄砲だったけど、でも、そんな弱音吐かなかったじゃない。例えダメでも、次頑張ればいいって。湧輝は、周りが何言っても殆ど聞かなかった。でも、思いっきりやったことは、悪い方向に行ったことはなかった。でしょ?」
「……どっちにしても、ガキの力でやったことだ。大したことじゃねぇよ」
「そうかなぁ……?」
坂口は杜若の横に並ぶと、うっすらと見える星空を仰いだ。
「私はそうは思わないな。だって、気持ちの問題でしょ?今、湧輝が何してるかは知らない。でも、思いっきりやれれば、それでいいんじゃないの?例え結果がどんなに悪いことになっても、それは、全部湧輝が悪い分けじゃない。それを、全部背負い込んじゃったらダメだよ」
「……お前なぁ……ンな楽観的なコトじゃねぇんだよ……世界がなくなっちまうかも知れねぇんだぞ」
「何それ?もの凄い大袈裟に聞こえるんだけど」
「……はぁ……まぁいいや」
杜若はため息混じりに坂口を見ると、急に真面目な顔になって言った。
「なぁ、絢耶……“仮面ライダー”って、知ってるか?」
「……うん……この前、奏魏君に言われて、気になって調べてみた。五十年くらい前から、時折現れては、狂人集団を壊滅させてる、無償で戦う戦士――でしょ?」
「そう。その一人が、敵にさらわれちまったんだ……」
「え?だって、もう何年も現れてないのに……まだ、戦ってるの?」
「………………………いいか、絢耶……よく聞け。たぶん普通の人間じゃあ信じられないことだ。だが、今から話すことは真実だ。と、その前に謝っとく。この前話したのは、ウソだ」
「うん。知ってた。だって、湧輝の目が、泳いでたんだもん……」
「フッ……そうか。まぁいいや。ンじゃあ……聞けよ」
「うん」
「まずは、約五十年前、世界征服を企みSHOCKERって集団がいた――」
†
「どうだ?場所は判ったか?」
「……まだです。でも――」
「いい。焦るな。まだ、十時間もある……ギリギリまで粘ろうぜ……」
「………はい」
†
「………………………」
杜若が、坂口に五十年に渡る仮面ライダーの歴史を語り、また自分自身もそのライダーだと話し終わったのは、話し始めて二時間が経過したときだった。
勿論、それは杜若が知る範囲でのことのために、全てではない。しかし、何度となく世界が存続の危機に陥ってたこと。そして、それを砕くための正義の系譜が語られていた。
当然と言えば当然だが、聞き終わった坂口には言葉がなかった。
「改めて言っとく。真実だ。歴史に裏に隠された、コレは、真実の歴史だ。俺は、改造人間なんだ」
言葉の出ない坂口に、そう付け加える杜若。
「………えっと……そう、なんだ……」
やっと言葉を出すと、坂口はその場に崩れ落ちた。ショックのためか、あまりに衝撃が大きかったようだ。
「オイオイ、大丈夫かよ?!」
「う、うん……ゴメン……」
杜若に支えられながら立ち上がると、坂口は無理に微笑みを浮かべた。
「絢耶……お前……」
「あ、ねぇ、湧輝、私にも何かできることないかなぁ?」
「は、お前何言って……だいたい、もうじき受験なんだろ。ンなこと言ってる場合じゃ――」
「いいの。世界平和のため。って言うか、世界がなくなっちゃったら受験どころじゃないもんね」
「そりゃ、そうだけどよう……あのな、何で俺がお前にこんな話したか解るか?」
「……なんで?」
「お前を、巻き込みたくねぇからだよ」
「へぇ、結構優しいトコあるんだ。でも大丈夫だから。って言うか、私も仲間に入れてよ。こんな面白そうなこと、滅多に味わえないでしょ?」
「……面白そうって……解ってンのかよ?」
「うん♪」
満面とは言わないが、かなり嬉しそうな坂口の顔を見て、杜若は例えようのない疲れに襲われた。
†
「解ったか……」
「ええ……ただ……場所があまりよくありません」
「どういうコト?」
「砕石場です。足場が悪すぎる」
「いや、上等だ」
「湧輝!」
「まぁ、ヒーローの戦闘場所としては面白いんじゃないの?」
「坂口……湧輝、お前、坂口に……」
「仲間に入れてくれってよ。まぁ、そう青筋立てるな双十。コイツは言い出したらきかねぇってコトぐらい知ってるんだろう?」
「……杜若君……民間人を巻きもむつもり?」
「高木さん、固いこと言わないでくださいよ。コイツには……絶対に傷一つ付けさせませんから。それは俺が保証します」
「――そう言う問題じゃねぇ!幸香はそう言ったトコだろうが……俺の場合はそう言う問題じゃねぇ……足手まといは邪魔なだけなんだよ。ガキ一人増えるってのがどれだけ足枷になるか、テメェ解ってンのか?」
「龍……それも心配するな。俺が、なんとでもする。あんたには、余計な動きをさせるつもりはねぇよ。それよりも、結城さんの居場所が分かったんだろ?行こうぜ。なぁ、絢耶」
「そうね!」
その二人を見て、奏魏は頭を抱えた。そして、高木は困った顔をし、静戒は目を閉じた。
「さて、ライダーマン結城丈二を……救出に行くぜ!」
「ああ」
「足手まといは放置する。いいな?」
「好きにしな」
杜若、奏魏、静戒の三人はそれぞれのバイクに跨り、エンジンをかけた。
高木と坂口は、一応の拠点となっている、研究所で待機だ。
「よっしゃ!行くゼェ!!!」
闇夜に光るのは空に浮かんだ月のみ。
本来はそんなところであろう山道を、三台のマシンが風を切って走りすぎていった。
「……変身……」
杜若が静かにそのコードを唱えると、マシンごと金色の光で覆われ、数秒後、そこには金色に、漆黒の瞳の戦史が走行していた。そして、そのマシンもまた月明かりに照らされ、金色に輝いていた。
「ほぉ、それが“変身”か」
「ああ」
応えると同時に更にスピードを上げる。
「速度違反で捕まるぞ」
「MASKED RIDERにそんなものはねぇよ!!」
「まったく……このままでは引き離されるなぁ……しょうがない……」
奏魏は上着を脱ぎ捨てると、右手を左腕に伸ばし、スロットを取り出した。そして、一定のボタンを押すと、それを、腰に巻かれたベルトのチェンジャーに挿定した。
「変……身!」
それと同時に、ベルトから幾筋かの光が放射され、奏魏の体を包んでいく。
光の中から――
朱色の肩――
青緑の胸――
蒼い腕――
白い脚――
が、見え、真紅の瞳が見えたとき、そこを走行するのは、多色の仮面ライダーだった。
「FGチェンジ、完了……」
FGは、そう言うと、次にバイクのグリップ部にあるスイッチを押す。
と、バイクも一瞬光に包まれ、次の瞬間には黒を基調色とした、過去のどの型とも一致しない特殊なマシンに変わっていた。
ソレに変わったと同時に、一気に加速する。
FGがFLASHに追いついたとき、時速メーターは既に200を切っていた。
「ったく……アレが……まさしくライダーだな……面白れぇ連中だ……まぁ、所詮はトシロウだ。コレでも一応オートレーサー目指してたんだぜ」
言いながら、静戒は上着のコートの中から数枚の札を取りだした。
「真・連・北・然……速!」
呪(しゅ)を唱えながら札を一気にばらまく。
と、それぞれが、静戒のバイクに張り付き、張り付いた部分が炎のように燃えだした。
「朱炎(しゅえん)、剛来!!」
更にそう唱えると、静戒のバイクはソレまでのカラーを変え、燃えるような紅蓮に変わった。
「さて……テメェ等、待ちやがれ!!」
加速する静戒はまるで炎が趨るようだった。
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