#1

FLASH、変身!
「あれから数日は経ったな……しかし妙だ。何故何も怒らない……」
風見は喫茶店の窓から空を見上げながらそう呟いた。
そこは、風見が元いた世界で、世話になっていた立花藤兵衛が、過去に経営していた店、喫茶店『Amigo(アミーゴ)』に似ていた。

風見が得体の知らないライダーと、異形の者との戦闘を目撃してから数日、その世界にコレと言った変化は見られなかった。

そこは、風見が居た世界と、とても似ていた。
ただ違うのは、巨大なビル群が多すぎること。そして、風見が見たこともない機械類が発展し散乱していること。
が、言葉は不思議と日本語が通じた。貨幣も日本銀行発行のものが使える。
風見がいた世界のその時代 ―― 西暦一九七三年 ―― には、まだこれほど発展はしてなかった。
もっとも、それは別の世界なのだから、当然と言えば当然なのだが……。

「それに、あのライダーは……そもそも何故仮面ライダーが居る……アレは、ショッカーが本郷先輩と一文字さんを改造した姿のはず……俺の場合は、本郷さんが、結城はデストロンの嫌がる仮面ライダーを元にスーツを作った。つまり、この姿さえ他の世界などにはあるはずがない……」
「そうとも限らないと思うぞ……」
風見が自問自答を繰り返していたとき、突然後ろから声をかけられた。
「ッ!!」
そこには、よく知った顔があった。



「DEVILのヤツ……いったい何考えてやがる!」
壁に拳をめり込ませんがら、青年はそう毒づいた。
「まぁそういうな、湧輝(ゆうき)。こんな言い方はないかもしれないが、奴等のおかげで、親父さんの研究が日の目を見れたんだろう?」
「………そりゃそうだけどよう……でも、そんな日は来ちゃいけないはずだったんだ!第一、人間の改造なんて……そりゃ、過去には幾つも行動に移して成功した例はある。だが、その何万倍も失敗の方が多いんだ。だからって訳じゃねぇけど………」
「解ってる。だが、それがお前の……仮面ライダーとしての使命なんだ。お前はもう、ただの杜若(かきつばた)湧輝って、人間じゃないんだ」
「そんなことは……解ってる……――」
言葉を交わしている片方は、異形の者を打ち倒した仮面ライダー ―― 杜若湧輝。
もう一人は……ほぼ杜若と同じ年齢と見えるから、杜若の友人、もしくは、理解者と言ったところだろう。
杜若が改造人間であることを知っている。そればかりか、その経緯も理解しているようだ。
「――解ってはいるんだが……ッ!!」
何かを言いかけた途端、杜若が言葉を詰まらせ、神妙な顔つきになった。
「来たのか?」
「………ああ……DEVILだ……」

「 ―― 仮面ライダーFLASH杜若湧輝は改造人間である。
突如現れた冥界の悪魔『デビル』を倒さんと、
彼は、彼の父親の発明した生物合成技術により、オニヤンマとの合成人間となった。
そして、人類の自由と平和のために雄々しく立ち上がった ―― 」

「何勝手なナレーション入れてんだよ、双十(そうじ)」
「ああ、せっかく悪に立ち向かう正義のヒーローになったんだから、このぐらいやろうかと思ったんだが、気に入らなかったか?」
「当たり前だ。第一、俺は正義のひーろーじゃねぇ。何処にでも居る、単なる改造人間だ」
「あ、そ。まぁ、行ってこいよ。どっちにしても、奴等と戦えるのはお前だけなんだからよ」
「そうなんだよなぁ……なぁ、お前も改造されてみる気ねぇ?」
「冗談はその身体だけにしてくれよな」
「………ま、行ってくら」
杜若はそう言うと、ヘルメットを片手に部屋を飛び出していった。
その後ろ姿を見ながら、、小声で「何処にでも居るわけないだろう」と、双十は付け加えた。



「結城……生きていたのか!?」
「ああ……と、言うよりも、爆発の瞬間、あまりの破裂の大きさか、空間が捻れてしまったらしい、その為に、この空間に放り出された」
「そうか……」
結城丈治。またの名を仮面ライダー4号、ライダーマン。
デストロンとの死闘の中、プロトン爆弾を積んだロケットを空中で四散させるために、自らが乗り込み自爆によりデストロンの計画を食い止めた正義の戦士、仮面ライダーの一人である。
「だが結城、他にもライダーが居るかもしれないとは、どういうことだ?」
「言葉通りの意味だ。俺はこの世界に来て、あることを感じている」
「あること……?ここが、どこだか判るとでも言うのか?」
「まぁ、そこまでは行かないが、近いところまでは行っている。ここは……日本で、我々の未来なんじゃないかと言うことだ」
「未来だと!?」



「……デストロンか!?」
『デストロン?ああ、そう言えばそのような愚者の組織が四〇年ほど前にあったようだなぁ。だが、既にそのような旧組織はない』
結城の前に立っているのは杜若が倒した者に類似する容姿を持つもの……。
それは、杜若との戦闘の二週間ほど前のことだった。
プロトンロケットの爆発により捻れた空間から結城がこの世界にやってきた日だ。
『そうそう、ついでに教えといてやろう、我はゴッドでもデルザーでも、ゴルゴムでもないぞ……』
「ゴッド?デルザー?ゴルゴム?……何のことだ?」
『おや、知らなかったか?デストロン同様に過去に存在した愚者どもの集団よぉ。もっとも、全てが仮面ライダーと名乗る者達に消されてしまったがな……まぁ、そのおかげで今我らがこの世界を占拠できるわけだがな。愚者といえども、集まられては少々厄介だからな』
「………貴様、今何と言った!?仮面ライダーだと!仮面ライダーが、他にもいると言うのか!?」
『何を驚いている……まぁ、もっとも奴等は消えてしまったがな……我らがこの世界に現れるのを察知して、一番初めの空間に歪みの場所に集まりおった。その時に、我らが出てきた穴に吸い込まれていったわ。今頃は冥界の何処かを彷徨っているだろうよ。そう、我らが故郷をな。我はDEVILの、冥界の使者だ。この人間界を貰い受けるためのな』
それは、僅かに口の端を上げ、笑みに似た表情を作った。



「………なるほど……だが、にわかには信じがたいことだな」
「お前もそう思うか。だが、ヤツは確かに仮面ライダーの名を口にした。それに、デストロンを過去の組織と呼んだ」
「………ああ、しかしだ、それが本当だとするなら、更に別の世界に他のライダー達が捕らわれていると言うことだ」
「そう……つまり――」
「――ここは未来で、他にも仮面ライダー、居る……と、言うことは、アレはやはり、仮面、ライダーなのか……?」
風見は視線を僅かにずらすと杜若のことを考えてそう呟いた。



『ヒャァヒャヒャヒャヒャ……!』
不気味な高笑いをあげ、それはビルに閃光を放った。
と、そのビルの上半分が跡形もなく吹き飛んだ。
『面白れぇなぁ……こんなにも脆いとよう!ヒャァヒャヒャヒャヒャ!』
再び口から発せられた閃光は次のビルに向かって飛んでいく。
はずだった。
が、それは途中で消え去った。
『ン?何だぁ?テメェ』
ソレは、自分の閃光を消し去った者を凝視すると、怒りにも取れる低い声でそう言った。
そこにいるのは……。
黄を基本色にし、黒い瞳。
真紅のマフラーをなびかせ、黄金色の拳を突き出し立っていた。
『そうか、テメェだな、戯朱(ざしゅ)をやったのは……なるほど、そうかぁ、テメェがなぁ……』
一瞬感心しているようにも取れるが、それは、楽しんでいる台詞だった。
どうやら、戦いを楽しんでしまうタイプのようである。
「そうか、あの化け物はザシュってのか。まぁ、どうでもいいがな。さて、死ぬ準備は出来たか」
『俺が、死ぬ?冗談だろう……なんせ、死ぬのはお前なんだからなぁ……そうだ、死ぬ前に名前ぐらいは聞くいといやるよ』
「………俺の名は、仮面ライダーFLASH(フラッシュ)!」