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『お前ごときに何が出来る……?』
それは、青年を見据えると、ただ一言だけそう言った。
「それはこっちの台詞だな……“DEVILの魔物”が」
『………そうか、理由は分からんが、消しておくに越したことはない人間のようだ』
「黙れ……」
深夜の何処かのビルの屋上。
青年とそれは対峙していた。
『せめて死に方ぐらいは選ばしてやる。幸いこの高さだ。自害するには丁度よかろう?それとも、我に消されたいか?』
「黙れ……」
『しかし、つくづく人間という生き物は理解出来ん。確実に死ぬ。絶対に勝てぬと解っていながら、なぜこうも刃向かうのか……』
「黙れって言ってンだろ……」
『結論は、出たか?』
「……ああ。お前今、確実に死ぬ、絶対に勝てねぇって言ったなぁ」
『それがどうした?事実ではないのか?体力、力、精神力……その他どの面を取っていても、この人間界にする汝等よりも、冥界を祖とする我らの方が勝っているのは明白』
「ハハ……そりゃ、人間が相手の時だろ?」
青年は薄い笑みを浮かべると、腰の下でゆっくりと腕を交差させた。
『言っている意味が分からんが』
「直わかるさ……もっとも、解った瞬間、お前は此の世から消える運命だがな」
そう言い、次に口が動いたとき、言葉には出さなかったが、その唇の動きからあるキーワードが発せられた。
『下らん……もう止めた。おとなしく……死ねい!!』
叫ぶなり地を蹴り、青年に突進するソレ。
と、同時に、青年の唇は再び動く。そして、それと同時に、その腕を腰に持って行き――
「――FLAAaaSH(フラーーーッシュ)!!」
叫ぶと同時に青年の体は光に包まれ、光が消えたとき、そこに立っていた者は青年の姿ではなく、対峙していた者同様、異形のモノだった。
ほぼ同時に、ソレの拳が、元青年のみぞおちに炸裂する、はずだった。
が、倒れたのは、ソレの方だった。
腹部を押さえ、元青年の前にうずくまる。
青年の足がゆっくりと下りる。ソレよりも一瞬早く青年の蹴りが決まっていたのだ。
「とどめだ……トウッ!」
青年は高々と飛び上がると、その落下を利用し、加速された蹴りをソレの肩付近に打ち込んだ。
「ライダーーキイイィィーーック!」
当たった瞬間、ソレは言葉通り跡形もなく、悲鳴すらなく消え去った。
「ヘッ、残念ながら、俺は人間じゃあねぇんだよ」
紅く光るマフラーをたなびかせ、青年はビルから飛び降りた。
その下に待っていたのは、一台の二輪車。
見た目はモトクロス用のそれに似ているが、フレームと言わず、グリップと言わず、どこも過去に見た物とは違っていた。
青年はそれに飛び乗ると、その場を後にした。
「………今のは、先輩とも違う……俺や先輩達、結城の他に、仮面ライダーが……!?それも、この世界にか……」
青年の飛び降りた位置から、下を見ながらそう呟く人影が見えた。
それは……。
†
デストロンが滅びて数ヶ月、風見志郎は次に現れるかもしれない悪の組織の為に、パトロールを怠らない毎日を過ごしていた。
そんなある日。
「風見志郎だな……」
ある高原を走っていた風見にそう声をかけてきた男が居た。
「ああ、風見志郎だ。何か用か?」
「なに、つまらん用さ。デストロンの基地がまだ、この近くにある。中には戦闘員だけだが数十人いるようなんだ。あんたに、何とかしてもらいたいんだが……頼めるか?」
「………貴様、何者だ?」
「お、俺は、別に妖しいもんじゃねぇよ……」
それを聞いた途端、風見はその男の胸ぐらをつかんだ。
「嘘をつけッ!貴様、俺が誰だか知っていて近づいて来たな。言え!デストロンだな!」
「ち、違う。俺はデストロンなんかじゃない!た、頼まれたんだ」
「頼まれたぁ?誰にだ!」
「だ、だからよう、デ……デス……ッ!!」
男はそこで言葉を詰まらせ、突然全身の力が抜けたかのように風見に寄りかかってきた。それに慌てて手を放す風見。
と、男の身体は、まるで蒸発するように消え去ってしまった。
「デストロンッ!……出てこいっ!」
「キ、キキィィーー!!」
「キイイィィー!」
「そこか……」
岩陰の陰から、声と共に数人の戦闘員が姿を現す。
「風見志郎、逃げても無駄だ。大人しく投降しろ!」
「なにぃ?」
その瞬間、風見は背中に冷たい物を感じ取りとっさに視線をそちらに移す。
そこには、銃を押し当てた戦闘員の姿があった。
「チィッ!」
舌打ちをしながら、両手を頭の後ろで組む風見。
「よし、連れて行け!」
戦闘員の中でリーダー格であろう者がそう言うと、銃を押し当てた戦闘員は風見に前に進むように促した。
「何処に行くつもりだ?」
「黙って歩け……だが教えてやる。お前の死に場所にだ」
「その台詞は何度も聞いたが、俺は生きてるぞ」
「ああ、そうだな……ならば言い方を変えてやろう。お前の、死ぬ空間にだ」
「何?」
「っと、着いたぞ」
そこには、幾重にも重なった見たこともない機械群があった。
「これは……?」
「空間移転装置だ」
「空間移転装置だと!」
「そう。初めはショッカーやゲルショッカー、それにデストロンの怪人達を今に甦らせようと考え造っていたものだが、いいことを思いついてな。仮面ライダーV3の始末。つまり、風見志郎、お前を何処か別の世界に送ってしまえば、我々の仕事も楽になると言うものだ。どうだ、すばらしいとは思わんか?」
「何を馬鹿なことを!貴様達の首領は既に俺が倒した。それに、仮に俺をどうにか出来たとしても、まだ仮面ライダーはいるぅ!」
「そう。それも考えた。しかし、残った1号2号など、カメバズーカでさえ倒せたのだ。どうにかならないはずがない。それに、裏切り者の結城丈治もプロトンロケットの件で死んでいる……」
「貴様ぁ!」
「消えるがいい!風見志郎!!」
叫ぶなり、科学班戦闘員が何かのスイッチを押し、それと同時に、背に銃を突き立てていた者が風見を突き飛ばした。
「クゥ!う、わ、ああぁぁぁーー!!」
「ふ、は、はははははっ!消したぞ、ついに宿敵仮面ライダーが消え去ったのだぁ!」
「ぐっ、わぁ!」
高笑いも終わらぬうちに、一人の戦闘員が部屋に倒れ込んできた。
「ど、どうした!?」
「ラ、ライダー2号が……」
「デストロン、風見志郎をどうした!?」
「は、ははは……今頃は何処かの世界を彷徨っているだろうよ。残念だったなぁ、仮面ライダー2号!そして、お前もいけい!」
「残念だったなぁ。少し遅れてしまったが、この装置は壊させてもらった」
そう言う声に振り返る戦闘員。
「お、お前は、ライダー1号!」
「風見は心配いらんだろう。それよりも隼人、まずはこいつ等からだ」
「そうだな」
「行くぞ!!」
『トウッ!!』
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