過日行われた世界陸上の400MHで為末選手が銅メダルを獲得しました。「為末スゴイっすね!」という大家くんからのメールで起き「3位」と聞いた時に少し涙ぐんでしまいました・・。4年前の世界陸上で為末選手がメダルを獲った時はどちらかと言うと「凄い」という種類の感動だったと思います。特に彼は中学時代から段違いの超エリート選手だった印象が非常に強かったためでしょうか・・。しかし今回、ゴールへ飛び込み、順位が確定するまでの仕草と雨の中で泣いている姿や淡々と自分を語る彼は、己を信じ、己と向き合い、巳の身を削ぎ、研ぎ澄ましながら切り開いてきた姿・・まさに「侍」でした。
もう一つ、同じ競技者として「凄いな」と感じたことは「ゴールで飛び込んで骨が折れても構わない・・骨は元に戻りますから・・」というコメントにはドキッとしました。僕の現役時代・・悔しいし恥ずかしいけれど、そんな発想は出てこなかった。きっとそこまでの決意を持って臨んでいなかったから、そんな思いにも至らなかったのだと思います・・。
世界陸上といえば、91年の東京大会で高野さんが400mで決勝に残った時の感動は僕の中では過去最高でした。この時、僕はテレビの前でスタート前から泣いていました。スタンドからの高野コール、そしてスタート直後の大歓声・・走ることであんなにも多くの人の心が動くものなのか・・涙と鳥肌が立ちました。それは単純に脚が速いととか、日本人が初めて短距離種目で決勝に残ったという単純なことではなく、高野さんの走ることへ信念や決意そして積み重ねてきた努力がオーラとなり見る者の心を動かしたのだと思います。そして由美婦人のコメント・・これも泣けました。学生時代このレースを何度も見直しては涙を流していたのを懐かしく思います。
もう一つ印象深いのは95年のイエテボリ大会で、山崎さんが400mHで日本人で初めて決勝の舞台に立った時です。予選で日本記録を樹立し、準決勝で3位に入り決勝進出を決めた時のガッツポーズ・・。そして日の丸をつけて決勝の舞台に立っている姿はとてもカッコよかった(羨ましさもありました)。自らを信じて切り開いた13歩の大きなストライドと、世界一のハードリングでカミカゼの如くぶっ飛ばす・・・。苅部さん・斉藤さん・山崎さん達とは同じ舞台で走ったことも、表彰台に立てたりもしたけれど「憧れ」に近いものがありました・・(僕が追いつけなかった理由の一つだった訳ですが)・・。
当時スポーツ選手に「侍」という比喩はあまり使われていませんでしたが、高野さんも、山崎さんも間違いなく「侍」だったと思います。自分自身と自分の道を信じて貫き通す。歴代の侍達が切り開いてきたとてつもなく険しい道を高野さんや山崎さん、そして為末選手がまた一歩切り開いた・・そんな風に感じています・・まだまだサムライはラストではないですね・・。