2010/09/17


今日の妄想。番外編!
イーグル+女性キャラで妄想してみよう。



act4「キャット編」






雑踏の中で、イーグルの背中を見失いそうになった。

人でごちゃごちゃになったスクランブル交差点。漂う汗の匂いにうんざりする。
このままバックレちゃおうかな、と思った瞬間、ハンナがあたしの手をとった。
子供扱いはやめてよ。きもちわるいっ。

あたしはその手を振りほどいて、早足でイーグルを追いかけた。
そんなにあたしが嫌いなら、このまま置いて行っちゃえばいいのに。
そうすればあたしもラクなのに。
イーグルは雑居ビルの前で立ち止まって、あたしたちを待っていた。

なんでこんなことになってるんだっけ。ああ、そうだ。曖昧な返事をしたからだ。


「あなたを連れて行きたいの。親睦会をかねて」
ハンナがそう言い出したとき、あたしはゲームをやっていた。
買ったばかりのシミュレーションRPG。ファンタジー世界にいる主人公たちは、
神殿から盗まれた秘法を取り戻す旅をしている。
「一緒に行きましょう。美味しいランチの予約もしてあるわ」
「あー。うんうん」
行き先も聞かないまま、日取りが決まってしまった。


イーグルも一緒だと知ったのは待ち合わせ場所に着いてからで、マイペースな
ハンナと、無口なイーグルの間で、あたしは途方にくれた。
いつまでも携帯でネットしているだけじゃ間が持たなくて、仕方なくハンナの
「今日は暑いわねぇ」とか「あら、あのお店無くなっちゃったのね」とかいう
呟きに付き合ってしまった。

ランチをしたレストランはハンナの行き着けの店らしかった。
ビーフシチューオムライスを食べている間もイーグルは何も喋らなかった。

嫌われていることは知っている。でもそれもしょうがないとあたしは思う。
それだけのことをあたしはやったんだし、イーグルが怒る気持ちも今なら少しだけ
分からないでもないから。
「過ぎたことよ」なんてハンナは言ったけど、イーグルはまだ割り切れてない。
時々、あの時の夢を見る。
あのころのあたしは、街を壊すことが楽しいことだと思い込んでいた。


「ここよ。このビルに間違いないわ」
ハンナが指差したのは、いかにも現代風のピカピカ光っている大きなビルだった。
回転扉をくぐると、クーラーの涼しい空気が身体を冷やした。
店舗とオフィスが入り混じっているらしいこの大きなビルは、休日のせいなのか
ヒトがまばらで、怖いくらいに静まり返っていた。ズラリと並んだエレベーターの
数が大げさに思える。
「11階よ」
ハンナの指示を聞いて、イーグルがボタンを押した。
扉が閉まる直前に会社員風の背広男が乗り込んできて、あたしたちの沈黙は
いっそう深まった。男は8階で降りていった。

11階です、という機械的な声がして、扉が開いた。真っ先にハンナが降りた。
あたしは降りてすぐ目の前にあった案内板に目がいった。
白いボードの案内板には大きく「戦場写真展はこちらです」と書かれていた。

「あたし、帰る」
エレベーターに向き直すと、ハンナがまた、あたしの手を握った。
「だめよ」
「なんで。あたし、行きたくない」
「あなたは、もっといろんなものを見るべきなのよ。自分の目でね」
ハンナはあたしと同じようにして立ち止まっていたイーグルの顔を見た。
「あなたにも同じことが言えるわ」
チッ、と舌打ちするのが聞こえた。あたしは下を向いていた。

そのまま手を引かれて、フロアを進んだ。
硬い床にハンナのミュールがコツンコツンとフロアいっぱいに音をたてる。
「いらっしゃいませ」
声を聞いて、顔を上げた。
展示会の入り口には、瓦礫でぐちゃぐちゃになった建物の前で、ぼろ布を持って
笑っている小さな子供の写真が飾られていた。写真は白黒だった。崩れてボロボロ
になったレンガ。むき出しになった鉄筋。

あたしは、はじめて造ったラジオが壊れたときのことを思い出した。

組み立てたラジオの形が気に入らなくて、あたしは別の形に作り変えようと、
分解をしはじめた。早く次のステップにいきたくて、焦った手に、力が入って
しまった。小さなパーツがパキンと折れた。
もう元には戻らない。あたしは思い通りにいかなかったことよりも、自分で壊して
しまったことが悲しくて、たくさん泣いた。
次が上手くいけばいいとホークに言われて、あたしは別のものを造りはじめた。
そして、だんだんモノが壊れることに慣れていった。
街も同じだと思ってた。次が上手くいけばいい。


いくつかの写真を見た後、あたしは耐えられなくなって、ハンナの手を振りきって
中を駆け抜けた。フロアの奥にあった白いソファ風の椅子を見つけて、そこに
腰掛けた。心臓のどきどきが止まらなかった。
ハンナはあたしのあとをゆっくり追いかけてきた。
「やり方が汚いよ。こんな遠まわしなんてズルイ。バカじゃないの?」
「どうして」
「あたしを責めるなら、もっと直接言えばいいじゃん」
「あなたを責めてなんかいないわ」
嘘、と口ずさんで、ハンナを見つめた。

「キャット。あなたが、もし、あの写真たちを見て、そう思ったのなら、それは
 あなた自身がそういう風に思いたくなった、ということよ」
「意味分かんない」
その先は聞きたくなかった。

あたしは走ってそこから離れた。さっきのエレベーターの前まで行くと、そこに
イーグルが立っていた。






つづく



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2010/11/03


今日の妄想。番外編!
イーグル+女性キャラで妄想してみよう。



act4「キャット編」つづき。






騙されたんだ。俺たち二人とも。
そう気が付いたのは、エレベーターの前でキャットに会ったときだった。

キャットの目は赤く潤んでいた。
「あんたのほうがまだマシよ」
フロアに声が響いていく。
駆け足であの写真展を出てきたのは、俺だけではなかったらしい。
「あたしを責めるつもりなんでしょ、ハンナと一緒に」
責める言葉はいくらでもあった。だがこの時は何も言わなかった。なぜなら、そこで
キャットがわんわんと声をあげて泣き出したからだ。

困惑した。勝手に泣き出したのに、まるで俺が泣かせた格好になっている。これは
新たなイタズラなんだろうか。ここでやり方をしくじっても面白くない。キャットの
出方を見ることにして、そのまま何も言わずにおいた。
「ずるい」
エレベーターが到着音を告げて、クチを開けた。
「ハンナのやり方はずるい」
「行き先を知らなかったのは俺も同じだ」
キャットが顔を上げた。
「俺は、要人警護の任務だと聞いていた」
少しの沈黙の後、ぷっ、とキャットは噴き出した。ため息がでた。


これはあくまでもプライベートな依頼だと思ってちょうだい。
ハンナがそう俺に頼んできたのは、三日前のことだった。
「警護か」
「そう。一日だけ、一緒に街をまわってほしいの」
「フン。貴様がそう言うのなら、よほどの大物なんだろうな」
「え、ええ、まあ、そうかもしれないわね」
「かまわんが、なぜ俺に声をかけたんだ?」
にやりと笑ってハンナが答えた。「だって、相手はかわいい女の子ですもの」
真に受けたことを俺は悔いた。


放っておいたエレベーターがもう一度音を出した。ロビーへ下りるために乗り込むと
キャットもまた、黙って後ろをついてきた。
写真展から距離をおきたいという気持ちは同じらしい。あんなことをしておいて
まだ目を背けるつもりなのか。
エレベーターの隅にキャットが移動したのを確認し、俺は1階のボタンを押した。
側面に寄りかかると、なんとなく、目が上を向いた。各階の案内板の下にある
ランプが動き出した。


どうして目を背けるんだい。
あの男はそうして、俺にカメラを向けた。興味がない、と俺は答えた。
そんなに悩んでいる暇があったら、会いに行けばいいじゃないか。
うるさい、貴様に何がわかるんだ。俺はあの男の胸倉を掴んだ。
その瞬間あいつはシャッターを押した。いい顔が撮れたと言った。

写真展で名前を見るまで、忘れていた人物だ。ハンナと面識があったこともまったく
知らなかった。展示の中には、あのときのグリーンアースの景色があった。俺があの
頃、一緒に見た風景もあった。
ヘルボウズとの戦いを終え、国中がごたごたしている時期だった。

俺はひどく気がたっていた。誤解とはいえ、リョウやドミノたちを敵視し、仕返しと
ばかりにレッドスター国を攻めてしまったことを悔やんでいた。
戦いの中で仮の謝罪はしたが、俺の罪悪感はぬぐい切れていなかった。
もう一度レッドスターのショーグンたちに会わなければなるまい。
そう思いながらも、俺にはその決心がつかなかった。

そんなに悩んでいる暇があったら、会いに行けばいいじゃないか。
うるさい、貴様に何がわかるんだ。俺はあの男の胸倉を掴んだ。
その瞬間あいつはシャッターを押した。いい顔が撮れたと言った。

しばらく行動を共にしていたが、あの男に最後まで気を許すことはなかった。

責められるのが怖いんだろう。
男はカメラ越しにそう言った。


「ねえ、なんか様子がおかしくない?」
キャットの声で気が付いた。エレベーターが止まっている。だが、扉は開かない。
単一で低いアラーム音が響き始めた。俺はすぐに非常通報装置と書かれた受話器へ
手をかけた。応答はなかった。
「もしかして、通じないってやつ?」
俺は再びため息をついた。





つづく

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2010/12/04


今日の妄想。番外編!
イーグル+女性キャラで妄想してみよう。



act4「キャット編」つづきのつづき。






沈黙のまま10分が過ぎた。

ハンナと連絡をとったキャットいわく、警備会社の担当員が到着するまで、
俺たちはこのまま過ごさなければならないらしい。
耳障りな警報音がずっと鳴っている。キャットがもくもくとやっている携帯型
ゲーム機の音も不快だ。
俺の苛立ちは増すばかりだった。今日はろくなことがない。

「そういえばさあ」
座り込んでいるキャットが突然話しかけてきた。
「どうして写真展から逃げたの」
「逃げたわけではない」
「でも、あたしより先に出てきてた」
「入る気がおきなかっただけだ。貴様は逃げたのかもしれんが、俺は違う」
俺は横目でキャットを見た。視線はゲーム機から離れていない。
「あたしと同じよ」
「違う」
「見たくもないものから逃げたんでしょ」
眼が合った。しばらく睨み合う。
俺のどこかで何かが煮えたぎった。だが、同時に考えたくもない思いが出てくる。
似ているのだ。

「あっ、やばいっ」
キャットが再びゲーム機に目を落として硬直が解けた。
「あーあ。なんでこんなとこ来ちゃったのかなあ~」
ほぼ同時に、同じ言葉を思い浮かべていた。
「アンタも、ハンナに騙されてたんだっけ。キャハッ」
ため息をつきながら腕時計を見た。俺の返事を待たずにキャットはしゃべり続ける。
「まったくハンナに付き合うと、ろくなことになんないよね~」
同感だな、と心の中で答えた。

沈黙が戻る中で、ふと、逃げた、という単語に引っかかりを感じた。エレベーターの
前で泣き出したキャットの姿を思い起こす。
俺は逃げたわけじゃない。あの場にいるのが気に食わなかっただけだ。
なぜハンナは、わざわざ俺を騙してまで、あの写真展に連れてきたのだろう。
カメラに気を使った数週間。あの頃のグリーンアースの匂いが甦る。

エレベーターから解放されたのは、それから15分後だった。


「イーグル!」
俺たちを出迎えたのは、ハンナだけではなかった。無精ひげの痩せた男。
「ああ。こんなことになって申し訳ない。会えて本当に嬉しいよ。あのとき、キミの
 機嫌を損ねてしまったのがずっと気がかりで」
以前よりもこけた頬が不健康にやつれた印象を抱かせたが、眼に宿るものは
あの時となんら変わりない鋭さを持っていた。写真家にしておくのは惜しいくらいだ。

「あの頃よりも少し、背が伸びたかな?」
俺に対する態度も変わらない。
「おいハンナ。なぜこんなことをしたんだ?」
「あら。キャットには、きちんと親睦会だって、言ったのよ」
「げええ」
携帯型ゲーム機と黙って向かい合っていたキャットが、ロビーのソファから飛び
上がる勢いで声を出した。
ハンナがくすりと笑った。
「私たちの親睦会は、これからが本番よ」
「マジ?」
「彼の話は、あなたのためになるわよ。セッティングもしてあるわ」
「げげ」
ふいにキャットと眼が合ったので、視線をそらした。写真家はにこにこ笑っている。

やはり俺たちは、ハンナに騙されたのだ。
だが、こうでもされなければ、あの写真展に行くことはなかったとも思う。
「さあ移動しようか。僕の部屋へ案内するよ。キミに見て欲しい写真があるんだ」
俺も逃れることはできなそうだな。
浮かんだ様々な思いを抱えた結果、俺から出たのはこの一言だった。
「フン」






おしまい


イーグルと相性の悪いキャットは、絡ませるのがなかなか難しい素材ですが
共通点は多々あるんですよね。妄想して楽しかったです。


次回!

今日の妄想。番外編!
イーグル+女性キャラで妄想してみよう。
act5は「アスカ編」の予定です。




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