2009/06/07
今日の妄想。番外編!
イーグル+女性キャラで妄想してみよう。
act2「サーシャ編」
テラスにいたイーグルは教会の鐘の音を聞いた。夜陰にごーんという重たい音が
鳴り響いていく。イーグルは憂いを帯びた顔で夜の街を眺めた。
室内の喧騒にひどくイラついている。こういった社交界の付き合いは苦手だった。
父親の古い友人で、祖父のように慕っているベオルドブルグ伯が主催者でなければ、
こんなパーティなど出席しなかっただろう。
「こんなところに呼んで、申し訳なかったね、イーグル」
伯はいつもの穏やかな口調でイーグルを出迎えた。
「キミの顔が見れて何よりも嬉しい。大きくなったな。軍服がよく似合う」
「身体はよろしいのですか?」
「ああ、もうすっかりよくなったよ」
前に話をしたときは心臓を悪くして療養をしていた頃だった。それを感じさせない
元気そうな姿を見て、イーグルはほっとしていた。
パーティはベオルドブルグ伯が所持していた美術品を街の小さな博物館に寄贈した
ことを祝うものであった。
美術品の中には、ベオルドブルグ伯がイーグルの父親のために、と馴染みの工房に
発注した万年筆もあった。大きな鷲がデザインされた美しい万年筆だったが、
イーグルの父はそれを見ることなく亡くなっていた。残されたイーグルは伯にそれを
送られたが、頑として受け取らなかった。やがて工房は資金不足を理由に閉鎖され、
ペンの希少価値だけが残ったのだった。
イーグルは今夜、ペンを受け取るか否かで悩んでいた。
「あら、イーグル殿ではありませんか。来ていらしたのですね」
親しく声をかけられてイーグルは顔を上げた。
振り返ると、そこには黒髪の美女が華やかなドレスを着て立っていた。
「失礼ですが、どちらのご婦人で……」
「こんな格好をしていては分かりませんか? 共に戦った仲ですのに」
「ん。ま、まさかサーシャ……ショーグン?」
「こんな場所ですもの、サーシャ、で結構ですわ」
サーシャは気品に満ちた顔で微笑んだ。軍服姿しか見たことの無かったイーグルは
なんだか気恥ずかしくなり、そっと視線をずらした。
「イーグル殿がベオルドブルグ伯爵とご懇意であることを風の噂で聞いたことが
ありましたの。まさか本当に会えるとは、思ってもいませんでしたわ」
「フン、俺は狐にでも化かされたような気分だ」
「あまりこういう場は慣れておられないようですわね」
「フン」
クスクスとサーシャが笑う。
「そんなことより、ここへ招待されているということは―――」
君も伯爵の知り合いなのか、とイーグルが問おうとした次の瞬間、室内から大きな
悲鳴が上がった。がたん、という何かが倒れる音がした。
「きゃああっ。伯爵様!」
「失礼する!」
イーグルは考えるよりも先に走り出していた。
何が起こったかは直感的に察していた。ベオルドブルグ伯が倒れたのだ。
異常を感じてざわつく大広間の中、イーグルは人を掻き分けながら全力で走った。
部屋の奥ではすでに伯爵の主治医がその横たわった身体を診ていた。
「ドクター! 伯は、大丈夫なのか!」
「すぐに病院へ運んだほうがいいかもしれません。誰か!」
伯爵の使用人が部屋の奥から出てきた。
「で、ですが、このあたりには、こんな時間にやっている病院などありません」
「なんだと!」
たまらず、イーグルが怒鳴りつけた。使用人はただ、おどおどしている。焦りと不安
から思わず拳を強く握り締める。
「私のヘリを出しましょう」
いつのまにやらイーグルの後ろに来ていたサーシャが進み出た。
「ここへ来るために乗ってきたヘリが近くに控えてありますわ。それで、救急を
やっている街の病院まで運びましょう。イーグル殿、よろしいですわね」
「あ、ああ」
伯爵はこの歳まで独身を貫いており、家族らしい家族は見当たらなかった。
「俺も行こう」
使用人たちにあとのことを任せ、イーグルとサーシャを含む数人は、伯爵を丁重に
ヘリへ乗せると暗い夜の空へ飛び立った。
イーグルの手はずっと伯爵へ添えられていた。
後半につづく
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2009/06/13
今日の妄想。番外編!
イーグル+女性キャラで妄想してみよう。
act2「サーシャ編」の、つづき。
仄暗い病院の片隅で、イーグルは落ち着かなかった。
病院は大のつくほど苦手だった。
このまま置き去りにされるのではないかと思うと、不安でたまらなかった。ただ、
目の前に知った顔があるおかげで、自尊心を保つことができていた。
「病院は苦手ですの?」
サーシャはすべてを見透かしたような顔でこちらを眺めている。
「……さあな」
パーティからそのまま訪れた二人の格好は、当人のイーグルでさえ滑稽に感じた。
もしもこのままベオルドブルグ伯の意識が戻らなかったら、まるでピエロのようだと
イーグルは思った。
「そうだ。その、一応、礼を言っておこう」
向かいの長椅子に座っているサーシャの顔を見つめて言った。サーシャはやはり、
上品に微笑んでいた。
「困ったときはお互い様ですわ」
「いや、何か、返すべきなのかもしれん」
「それならば……お話をしてくださりませんこと?」
「お話?」
「ええ。伯爵とどういったお知り合いなのか興味があります」
「それは答えられないな。父が生きていた頃からの付き合いだが、俺もあまり
聞いたことがないんだ」
「イーグル殿のお父上と戦友だった、と聞いていますわ」
「え?」
「社交界のよくある噂の類でしょう」
そんな噂、イーグルは聞いたことがなかった。
返答しようとしたイーグルの言葉より先に、病室の扉が開いた。中から医師が出て
きた。その後ろから看護婦が顔を出して「お話したいそうですよ」と笑って言った。
イーグルが病室に入ると、伯爵はベットから半身を出して窓の外を眺めていた。
「君の父上と夢で会ってきたよ。まだ早い、と怒られてしまった」
そこまで言うと、伯爵はイーグルの方へ振り返って笑った。
「お父上とは学生時代からの付き合いでね、よく喧嘩をしたんだ。軍へは、私が先に
入隊したんだが、雑用ばかりやらされていた。だが私たちが再会したとき、君の
父上はショーグンとして、いや、エースパイロットとしての道を、もう歩き始めて
いたんだ」
「……おかげんは、よろしいのですか?」
静かなイーグルの問いに、伯爵は黙って頷いた。
「あの万年筆のことなんだが、やはり君に話しておこうと思ってね」
「え?」
「あれは、本当は私が君の母上の気を惹くために作らせたものなんだ」
イーグルは唖然とした。
「恥ずかしながら、一目惚れでね。しかも君の父上に紹介されたのが始まりだった。
私は様々な手を使って彼女に会っていた。だが、結果はこの通りさ」
自嘲気味に笑って続ける。
「万年筆が出来上がっても、なかなか渡すことができなくてね。父上が亡くなった
ときに、はじめて持って行ったんだ。馬鹿なことをしたと思った。あれを見るたび
心が痛むんだ。だがね、イーグル。あの見事な鷲の細工を見ていると、あれは君の手
にこそ相応しい、そう思えてくるんだ。猛々しい、誇り高い、王者の顔だ。今の君を
見て、私は心底そう思っているんだ」
伯爵は懇願するような顔でイーグルの目を見た。
「頼む。貰って、くれないか」
イーグルが病室を出ると、廊下ではまだサーシャが長椅子に座っていた。
「改めて礼を言おう。君も挨拶をしてくるといい」
「いいえ。私はこれで失礼しますわ。私、伯爵とは顔を合わせたことがありません
もの」
「は? いや、それならば、なぜ」
「パーティには知人の付き添いとして出席しましたの。でもこうして、イーグル殿と
伯爵殿のお力になれて、幸いでしたわ。あとでご紹介くださいね。では、これで」
しずしずと帰っていくサーシャの後姿を見ながら、イーグルは頭をかいた。
「やれやれ」
厄介な相手に仮を作ったものだ、と思いながらも、悪い気はしていなかった。
おしまい
ほぼイーグルのお話でした。
サーシャファンの方に申し訳ないです。ごめんなさい。
万年筆の行方は各自のご想像にお任せいたしますーw
次回!
今日の妄想。番外編!
イーグル+女性キャラで妄想してみよう。
act3「キャサリン編」です。
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