2007/01/09


今日の妄想。長文注意。





ドミノがイーグルに手紙を書こうと考えたのは、昼間にヒコーキ雲を見たせいではなく
今夜がただ単に、あの日と同じでひどく冷えたからだった。

電気ストーブを強に設定し床までとどく膝掛けを用意して机に向かった。手紙を書く
には日が浅すぎるような気もしたが、ドミノは話をしたくてたまらない気持ちを抑える
ことができなかった。
Eメールもろくに読まないイーグルの忙しさから察するに(実際にはイーグルがメール
チェックを億劫がっただけなのだが)、パソコンの電源を入れる手間の無い手紙の方が
イーグルには都合がいいのだろうとドミノは考えた。パソコンと違って読む場所を選ぶ
ことも無いし、それに、手書きの手紙の方が話をしている感覚に近い気がした。
さっそく街で購入してきた赤い可愛らしい花を飾った便箋を取り出すと、ドミノは最初
の1行を書き始めた。電気ストーブがまだ部屋を十分に温めていなかったせいで文字は
多少ブレていた。


「こんにちは、イーグル。突然の手紙で驚いた? まだあれから数週間も経っていない
けれど、元気にしていますか? 私はもちろん元気です。今夜はあの日みたいに、とって
も寒いです。まるでフィスティバルが昨日あったかと錯覚するぐらいです。
さて、あれからイーグルはすぐに帰国してしまったので、アスカがどうしたのか、気に
なっていると思います。アスカはもちろん元気です。相変わらず図書館で勉強ばかり
しています




ヘルボウズとの戦いを終えて数日。めちゃくちゃになっていた国境の整理と、ブラック
ホール軍が残した爪痕を消すためにショーグン達は各地へと戻っていったが、この日は
山や川の多い地形を見てまわったために、それに都合のいい空軍部隊を指揮していた
イーグルの協力をもってドミノは任務を終え、共にレッドスター軍の基地の中にいた。
数ヶ月は会えることが無いだろうと思っていたドミノが浮き足立つのも当然で、今から
出かければ、都市部で行われているフィスティバルも一緒に見て回れるかもしれない
という期待が全身を支配していた。
ヒコーキ雲が見えてキレイ、とイーグルを呼び止めたのは、フィスティバルへ誘うため
の口実のひとつだったが、隣に立っているイーグルの存在感に圧倒されて言葉を忘れて
しまったようだった。断られるかもしれないという不安もあった。
空は雲が少しかかるだけの快晴で、真っ青な画面を横に分割していくようなヒコーキ雲
の白い線がくっきりと見えた。
「ね? 本当にキレイに見えるでしょう?」
「そうだな」
ドミノはすーっと伸びる細長い雲を目で追いながら、次はどう話しかけるか迷っていた。
イーグルの目は青空を捉えていて放さない。何を考えているのだろう、とドミノがその
顔を見るとイーグルもドミノに目を移し、思いがけず二人は見つめあった。
「あ、あの! もし、時間があったら」
いまフィスティバルの真っ最中なんだけど、街へ一緒に行かない?とドミノが言い出す
前に後方から声をかけられてドミノは振り向いた。二人に声をかけたのはアスカだった。

「ここにいたのねドミノ。探したわ。イーグルも一緒でちょうどいいわ」
何がちょうどいいのか、このときのドミノにはさっぱりわからなかった。だから、次に
アスカが言い出したことにひどく驚いた。
「フィスティバルに行くんでしょ? 私も行くんだけど、イーグルも一緒にどう?」
このあとは二人ともオフだって聞いたから、どうせヒマでしょう?と続けたアスカに、
ドミノは出端をくじかれた形になった。
「ああ、かまわない」
「じゃあ三十分後にここで落ち合いましょう。ドミノ、行くわよ」
戸惑っているドミノをよそに淡々と話を決めると、アスカは兵舎へと歩いていった。
イーグルに軽く声をかけてから、慌ててその後ろを追いかけた。
「ちょっと! どういうつもりなの?」
「感謝しなさいよ。かわりに誘ってあげたんだから」
からかい半分で、にやりとアスカが笑った。
「何を考えているの? 理由があるんでしょう。隠さないでよ」
「素直に、ドミノはイーグルとのデートを楽しんでいればいいの」
アスカの顔は冷静を保っていた。ドミノは頬を膨らませた。
返答を聞いて、やはり何らかの策に自分達が利用されているのだという疑念が湧いたが、
ドミノはこういう顔をしたアスカがひどく頑固なことを知っていた。そして、すぐに
気持ちを切り替えた。
私たちは知らないほうが都合がいいってことね。
それならば、と、疑念を振り払った。アスカを信頼していた。そして、思わぬ形で希望
が叶ったことを素直に喜びつつ、もう一度アスカに問いかけた。
「ね、何を着て行ったらいいと思う?」



都市部へ出るために地下鉄を使おうと、アスカが提案した。中央広場ではたくさんの
人々が、パレードやら大道芸人やら屋台やら店のバーゲンセールやらを狙って集まって
いるはずだった。ドミノとイーグルは頷いて、三人で電車を待っていた。
日は西に傾いていて、風が冷たかった。スカートを穿いてきたのは失敗だったかなと
ドミノは思ったが地下鉄のホームにごったがえす人ごみに呑まれると、それも感じなく
なった。変わりに、今日になって初めて履いたブーツが靴擦れをおこさないか心配する
ようになった。
ホームで電車を待ちながら、黒いコートに手を突っ込んだまま出そうとしないイーグル
が、あちらこちらで見知らぬ男(おそらく、私服に着替えた兵士たちなのだろう)と
話をしつつ携帯電話を握り締めたアスカの態度に苛立っていた。
「どういうつもりなんだ? アスカは何かをたくらんでいるようだが」
問いかけられたドミノは「うん。私たちは知らないほうがいいみたい。大丈夫。アスカ
のことだから、考えがあってのことだと思う。気にしないで」と努めて明るく答えたが
怪訝そうな表情のままイーグルは黙ってしまった。
もう、アスカったら。こっちの作戦にもちょっとは策を練ってよ!
ドミノはようやく現れた電車の光を思わず睨んでいた。


三人が中央広場に着いたときには、すでにパレードも大道芸人たちも片づけをしている
最中だった。それでも人の多さは変わっておらず、通りのカフェは混雑していたし、
屋台のみやげ物を売り買いする声が楽しそうに響いていた。ドミノは適当に空いている
カフェのテーブルを見つけると、さっさと席に着いた。そのまま通りを歩くつもりで
いたアスカとイーグルは、ドミノが店員にミルクティーを頼んでいるのを見ると、顔を
合わせてドミノに続いた。

「水臭いわよ、アスカ」
ドミノは心底不満げに、湯気ののぼるミルクティーの入ったカップを両手で掴みながら
呟いた。おかげでイーグルの機嫌が悪くなっちゃったじゃない、とは言わなかった。
コーヒーに口をつけてからイーグルも続いた。
「オレたちに手伝えることがあれば言えばいい」
アスカは一拍置いてから、二人を見ないようにして言った。
「いいのよ、これはウチのことだから。それに二人共、いまはオフじゃないの」
「だったら! アスカもオフか任務中なのかはっきりしてよ! 一緒にいるこっちが
落ち着かないじゃない!」
そうして声を荒げたドミノがいかにもドミノらしすぎて、アスカは軽く笑った。見ると
イーグルも同じように笑っていた。ドミノはいたって真面目な顔をしていた。
フィスティバルの賑やかな雰囲気と、テーブルを囲んだ二人の真剣さにアスカは息を
ついた。そして周りを見渡して何かを確認すると、覚悟を決めた。
「実は人を探しているの。ウチにいた人なんだけど」
ウチ、というのがイエローコメット軍を指していることはわかっていたが、探している
人の重要性までは、二人ともピンとこなかった。アスカは持っているバックから写真を
取り出すとテーブルに出した。写真には、二十代か三十代と思われる男性がにっこりと
笑っていた。ドミノが驚いて声を出した。
「この人、見覚えある! リョウの隊にいたはず!」
「うんそう。ウチの人だったの」アスカは紅茶の入ったカップを混ぜながら、淡々と
答えた。「けれど本当はブラックホール軍だったの」
それを聞いて更に驚いたドミノは、忙しなく周りときょろきょろ見渡したあとに顔を
近づけて「それって三重のスパイだった、ってこと?」と小声で問いかけた。
まったく、この子は本当に特殊部隊長としてやっていけるのだろうかと飽きれながら、
アスカは年上の同級生を見つめた。
「そんな人、こっちに潜らせなくても……」
ドミノが極めて遠まわしに不満を述べる。
「仕方ないじゃない、あのときはリョウの偽者があっちこっちでドカンと暴れてたんだ から」
少し間をおいてから、写真を見つめつつイーグルが切り出した。
「で、こいつを探せばいいんだな?」
アスカは慌てて二人の顔を見た。
「いいのよ、だいたいの位置は掴んでるし。ウチの人たちが頑張ってくれてる。だから
二人はただ楽しく遊んでくれていればいいわ。それだけで私をカムフラージュしてくれ
ているんだから」
「聞いたからにはもう黙って見てるなんてできないよ! 私たちも協力する!」
再び声を荒げたドミノに対してイーグルがうなずいた。だからあなたたちには話したく
なかったのに、とアスカは息をついた。このカップルは真っ直ぐすぎる。
黙っているアスカに対してドミノは苛立ちを隠せず、身を乗り出した。
「他の人たちが頑張ってくれているんだから、アスカは気楽にしてればいいじゃない!
せっかく一緒にここまで来たんだから、一緒に楽しもうよ! それか任務に私たちも
加えるか、どっちかにして!」
真剣に二択を迫るドミノを見つめながら、アスカは吹き出して笑い出した。あんまり
楽しそうに笑っているので、ドミノは戸惑いながら顔を赤らめた。 「何? 私、そんな面白いことを言った?」
「ううん、前に、正反対のようなことを言われたことがあったの」
笑いながらアスカが答えた。
「正反対?」
「情報戦を重要視するなら、集団でいるときですら常に協調しすぎるな、ひとりの時と
同じように冷静でいることが肝心だ、ってね。いま思えば、なんの意図も無く言ったの
かもしれないけど」
温かいミルクティーを呑んで、ドミノの息が白く上がった。
「えー、それって、みんなと歩調を合わせるなってこと? 私には絶対無理。そんなの
誰に言われたの?」
「初恋の人」
あくまでも淡々とアスカは言ったが、ドミノは飛び上がって食いついた。
「えええっ! だ、誰だか聞いてもいい?」
「うん、まぁ、ビリーなんだけど」
「えええええええっ!」
盛り上がる女二人のやりとりを見て、イーグルは居心地悪そうに顔を外へ向けていた。






つづく



・・・

すげー長くなりそうだな、コレ。
えと、複数の方の意見(というか妄想?)を参考にしつつ、アスカの恋愛について
私なりの妄想をしてます。
イードミのラヴが余分に入るのは仕様です。むしろ後半にあqwせdrftgyふじこlp;

ストーリーの補足的な言い訳をひとつ。
アスカに対して、「時代が時代ならば姫だった」という設定から、イーグルはアスカに
儀礼的な態度をとっているという見方がありますが、GBWAのキャンペーンでイーグルは
アスカを呼び捨てにしていることがわかっています。
そこから、私はイーグルはアスカにも他のショーグンと同じ態度をとっていると妄想
しました。
そんなわけで、この妄想の中ではそういう態度になってます。ご了承ください。

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2007/02/16


今日の妄想つづき。





紅茶はすでに冷めつつあり、茶葉の苦味が口に広がった。

フィスティバルの盛り上がりは冷めそうになく、広場にいる人は全く減りそうにない。
新しく現れたストリートパフォーマーのアコーディオンが通りに鳴り響いた。アスカは
その雰囲気に和みつつあり、話の続きをいかにも聞きたがっている目をしたドミノの
顔を見て、にっこりと笑った。通り行く人の靴音が石畳をコツコツと鳴らしている。
「ビリーとは、レッドスターへ留学する前の、おとうさんと学校見学のときにはじめて
会ったの。元々おとうさんは私の留学には乗り気じゃなかったから、見学の前にちょっ
とした喧嘩しててね、私はまだ怒ってた。だから困らせるつもりでわざと別行動をして
校舎を一人で歩いてたの。二階のテラスに、一人でじっと空を見ている人がいて。変な
人だな、と思って見ていたら、その人が突然声をかけてきたわ。……それがビリーだっ
たの」
「なんて言ってきたの?」
「お嬢ちゃん、ここはおまえさんが来るところじゃないぜ、って」
カップを手に持ち、アスカはにこやかに言った。「ひどい言い方だと思わない?」
ドミノが黙って頷くと、でしょう?と呟いた。
「私はカチンときたわ。すぐ言い返したの。私はお嬢ちゃんって名前じゃ無いし、絶対
にここへ入学してやるわ、ってね。ビリーは面白そうに頷いて色々と話しかけてきた」
へええ、と楽しそうにドミノが相槌を打つ。
「その頃の私はおとうさん以外の男の人とあんまり話をしたことがなかったから、私の
話をビリーが丁寧に聞いてくれることが嬉しかった。おとうさんは頭ごなしに怒鳴る
だけだったし、私の意見を聞いてくれることなんてほとんどなかった」
「で、好きになっちゃったんだ!」
嬉しそうにドミノが問いかける。アスカは少し恥ずかしそうに、笑って答えた。
「それだけじゃないわ。たくさん話をする中で、ビリーが突然聞いたの。レッドスター
の学校で何を勉強する気なんだ?って」
「それで?」
「戦いで重要なのは情報収集、だから情報を集める方法を知りたいって私は言った。
そうしたら、すぐにビリーが言い返したの。じゃあまずは集団の中でも冷静でいること
だ、ってね。おまえさんがもう少し冷静になれば、ひとりで行動する危険性にももっと
早く気づくだろう? こんなところでウロウロしている場合じゃないぜって。勉強する
前に天国へ誘拐されるかもしれないぜ、って」
ふふふ、とアスカが苦笑する。
「そのときハッとしたわ。変に丁寧なやり方で、私はビリーにおとうさんのところへ
戻るよう、諭されちゃったのよ。恥ずかしくなっちゃった。迷子の子供みたいに相手を
されてたことに、その時ようやく気がついたの」
「ムッとしなかった?」とドミノが問いかけると、アスカは黙って首を振った。
「むしろそのやり方に感心しちゃった。この人、頭がいいわ、って。結構、ショック
だったな」
「ショック?」
「それまでは私の言うことにただ頷くだけの人が多かったのよ。言い返す人なんて全然
いなかった」
ここで、二人ともカップを空にした。イーグルは身体を外へ向けたまま、黙っていた。
アスカが話を続ける。
「それで、私はすっかりビリーに夢中になっちゃって、もう一度会いたいと思って、
あの学校に留学を決めたの。他の学校も留学の候補にいれてたんだけど」
目を細めて、ひと息ついた。
「でも私がレッドスターに来たときには、もうビリーはレッドスターにいなかった。次
に会ったのは、私がブルームーンの情報を求めて国境近くの街に待機してたときだった
……ビリーったらね、私に会ったことをすっかり忘れてたの」
えぇ、とドミノが言った。アスカは苦笑しながら続けた。
「仕方ないわ。私はビリーからしてみれば、ただの迷子だったんだし。そんな思い出話
しても意味がないと思って、私ははじめて会ったように振舞ったの。そうしたらね、
ふとビリーが呟いたの。ずいぶん冷静なんだな、って」
ふふふ、と再びアスカが笑った。
「おかしいでしょ? ビリーが私に冷静でいろって教えたのにね」



そこまで言うと、突然アスカは携帯電話を取り出した。「ちょっとごめん」
テーブルを囲んだ二人が返答をする前に、慌てて電話を耳に当てる。
「それほんとう?」
アスカの口から咄嗟に出たその一言が、ドミノとイーグルに緊張を与えた。
スパイを追っていた兵士達からの連絡であろうことは容易に想像できる。そして、その
重い口調を見ると、どうやら事態が暗転したような気配だ。ドミノとイーグルは顔を
合わせた。アスカは冷静に電話を続ける。
「とにかくそこは動かないようにして」
ドミノとイーグルの視線に気がつくと、アスカは話を切り上げることにしてこう言った。
「すぐそっちに向かうわ。こちらからかけ直す」
はい、ええ、わかった、と相槌をうち、大きな仕草で携帯を閉じると席を立った。
財布から紅茶の料金を取り出しテーブルに置く。
「二人共ありがとう。邪魔して悪かったわ。楽しかった。またこういう機会があると
いいわね」

「待って」
ドミノがアスカの前に立ち塞がった。「私たちが関わっちゃ迷惑かもしれないけど……
せめて何か手伝わせてよ。黙っていられない」
先ほどまで楽しそうに笑っていたドミノの顔が、一変して特殊部隊長の緊迫した顔に
なっていた。
アスカはその視線から逃れるように顔を背けた。
「でも、これはウチの問題だから、あなたたちを巻き込めない」
「フン」
黙って二人のやりとりを聞いていたイーグルが、口を開けた。
「だが今は非番だ」



薄暗くなった街に明かりがぽつぽつ灯っていく。アコーディオンの音も消えて、街は
夜の姿に変わろうとしていた。歩き回る人の数は増えても減ってもいないようだが、
質が変わりつつあった。いかにも高価そうなコートを着た婦人がブランドものの背広を
着こなした紳士と連れ立って歩いている。
ドミノに冷たい風が吹きつけ身体がぶるっと震えた。そして小さく「寒いっ」と呟いた。
前を歩いていたイーグルが振り返り、ドミノを見つめた。
「……どうしたの? イーグル」
「あ、いや。あの入り口でいいのか?」
イーグルが顔を向けた先には、地下鉄の下り階段が明るい街に対して場違いに思える程
ひっそりと存在していた。
「うん、そう。あそこは改札からも離れてるし、裏通りにあるから影が薄いの」
ドミノが言ったように、通り行く人々はまるでそれに気づくことなく過ぎていく。
人の流れに逆らわないよう気をつけながら二人はそこへ歩きはじめた。探している写真
の男が周りにいないかどうかも、確認をしながら。
先ほど話し合ったときのアスカの言葉を、ドミノは思い出した。


アスカは進行させていた作戦内容を大まかに説明して、最後にこう付け加えた。
「元々は、この広場へ追い込むつもりで尾行してたの。けれど気づかれて撒かれてしま
った。GPSはまだ気づかれていないようだけど、時間の問題ね。きっとすぐにここを
移動してしまうわ。この街で拘束したかったけど」
残念そうに言うアスカにドミノは食いついた。
「まだ間に合うかも。この近辺にいるのが間違いないなら、移動する直前に捕まえれば
いいのよ」
「だって、フィスティバルで人が大勢いるのよ?」
「自家用車や自前のバイクを使う場合は、寮に外出許可を申請するから使っていないと
思うの。タクシーはフィスティバルで混雑してるし、今日は郊外で検問するはずなの。
キャサリンシレイがなんだか手配してて……。同じ人を探してるのかもしれないけど。
それに、ここのバスは長距離を走らない。だから、地下鉄の改札を見張っていれば、
捕まえることができるかもしれない」
「キャサリンシレイに検問を依頼したのは私よ」
「なら話が早いじゃない。もう一度、作戦を練り直してよ。きっとまだ間に合う」
真剣な面持ちで、イーグルも頷いた。
「……まったく。あなたたちの楽天的な姿勢には感心するわ」
アスカがぼそっと言うと、ドミノが笑った。
「だって。何もしないよりは、できることをやって失敗したほうが、マシだと思わない
?」
改札付近にはイエローコメットの兵士がすでに待機しているというので、アスカはその
兵士達と合流することにした。ドミノとイーグルはGPSで表示された位置に移動して、
付近を見張る事にした。ドミノの話からすると、そこには地下鉄の入り口がある。


地下鉄の入り口を前にすると、その奥から流れてくる冷たい風に当たった。ドミノは
スカートの裾を気にしながら「寒いっ」とまた呟いた。今夜は雲の無い星空だが、風が
あって冷え込んでいる。地下へと続く階段の明かりはビルに比べて乏しい。薄暗さが
余計に寒さを強調しているようにも思えた。
階段を下りようとしてドミノが歩き出すと、イーグルが立ち止まった。
「……なにか、温かいものでも飲むか?」
イーグルが顔も向けずに呟くので、ドミノは聞き返すこともできなかった。
私を心配して言ってくれたの?
そのとき、二人の横を早足で横切った男がいた。咄嗟のことだったが、ドミノは足音を
聞いてふと顔を見つめていた。その男は地下鉄の入り口の近くにあった自販機の前で
立ち止まった。飲み物を選ぶ様子でいたが、それと同時に手帳を開くのも見えた。
「イーグル。あの人……」
二人に緊張が走った。







つづく



・・・

続きを書くのに、ずいぶん時間がかかってしまいました。
事件を話に盛り込むのってムーズーカーシーイ~。
慣れないことはするもんじゃないです、ハイ。

アスカの初恋話はこれでだいたい終わりですが、お話はもう少しだけ続きます。
どうかお付き合いください。

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2007/03/20


今日の妄想つづきのつづき。





男は自販機の前から動かない。イーグルとドミノは、男の様子を窺いながら次の行動を
どうするか揉めていた。

「今すぐ捕まえてやる!」勇ましく意気込んだドミノをイーグルが制止する。
「待てドミノ。なんだか様子がおかしいと思わないか?」
「でもほっておいたら逃げちゃうよ。早くぶっとばしちゃおう!」
「だ、だがな、その前に逃げられるかもしれんぞ。場所を選んだほうがいい」
「大丈夫大丈夫。こんな人混みだもん。早く走ることなんかできないよ」
「それはこちらも同じだろう。店の中にでも入られたら厄介だ」
ドミノは口を尖らせた。
「……だけど」
「あいつはさっきから手帳を見ている。何かを企んでいるのかもしれん」
そういえば、と、ドミノも男の背中を見つめた。寒さはもう忘れていた。

私だったら、とドミノは考えた。私だったらこんな包囲網に気づいたときは動かないで
相手の動きを探るか、いっそのこと相手の本陣までいってしまうかもしれない。
それか、もしくは。
「あ、そうか」
イーグルが顔を向けると、ドミノが言った。
「きっと、仲間と連絡をとろうとしてるのよ」
「一理あるな」
じろりと男の姿をイーグルが睨んだとき、ドミノの携帯電話が震えた。

「アスカから電話だ」
ドミノが洒落たハンドバックに手をかけると同時に、例の男が動きだした。男は足早に
自販機の前から去っていく。地下鉄の入り口には入らなかった。
「ドミノ、尾行をはじめるぞ」
イーグルが歩き出す。だがドミノはバックから電話を出すのに手間取って、イーグルに
措いて行かれた。
「ま、待って!」
思わず大きな声を出してしまった。イーグルは驚いた表情で振り返る。男がまだ視界に
入ることを確かめながら。
「ごめん。電話が出せなくて。先に行って。すぐ追いつくから」
ドミノは困り顔をしつつも片手で先に行くよう促した。電話を取り出す。
「行くぞ」携帯電話を耳につけたドミノの手を、イーグルがぐいと引いた。「オレに
聞こえるよう、会話をしてくれ。尾行するぞ」
「はい」
触れている掌の感触に胸が高まった。
いけない。任務に集中しなくちゃ。だけど、はじめて手をつないだのがこんなシーン
だなんて格好悪いなぁ。
一緒に歩くイーグルの歩幅に合わせてドミノも歩き出した。

「ハロー? アスカ?」
「出るのが遅いわよドミノ。まともなデートでもし始めたのかと思った」
「からかわないで。いま目標の尾行をはじめたところなのに」
イーグルとつないだ手をぎゅっと握る。
「わかってるわ。さっきまでGPSを確認してたから。接触をしないかとヒヤヒヤしたわ。
むこうの様子はどう?」
「立ち止まってずっと手帳を見てた」
「……私を、目視できる?」
「えっ?」
ドミノは顔を上げて、歩きながら辺りを見回した。夜の薄暗さと店の明かりと人混みが
ごちゃごちゃとして目に映る。
「アスカがいるぞ」
航空部隊を率いるイーグルは視力がいい。ドミノにはよく確認できなかったが、どうやら
アスカもこの周辺まで移動してきたようだ。途端にドミノは、イーグルと手をつないで
いるところをアスカに見られているのではないかと思い、ドキリとした。
男は公衆電話の前で止まっている。
「こちらも目標を確認したわ。公衆電話の前で立ち止まったということは仲間と連絡を
取り合うつもりなのかもしれない。……もしもしドミノ?」
「あ、うん。私もそう思った。仲間に連絡をとられたら厄介だけど。アスカはどう動く
のがベストだと思う?」
「ベストの行動なんてわからないわ。せいぜいベター止まり。やっぱり、この場所で
拘束するしかないのかもね」
「わかった。もうここでぶっとばしちゃう」
「……え? ド、ドミノ?」
ドミノは一方的に電話を切った。声を聞いていたイーグルが、ドミノの顔を見る。
「イーグルはここで待ってて」
「ドミノ」
握り締めていた手を離し、スッと男の方へ歩き出した。しっかりとした足取りで人混み
の中も、もたつくことなく進んでいく。ドミノは公衆電話の前にいた男の、まっすぐ
後ろに立った。
男は気配を察してか、振り返りドミノの顔を見て驚いた。

「リョウの軍にいた方ですよね。ちょっといいですか?」
男はドミノの問いかけに答えず走り出した。ドミノもそれを追いかける。周りを歩いて
いた人々は、急ぐ二人の勢いに圧倒されて皆顔を向けた。
「泥棒! 待ちなさい! 誰か、あの人を捕まえてください!」
女性特有の甲高い声がした。途端にドミノの前を走っていた男に視線が集中する。
男の進路を誰かが塞いで動きが止まった。
アスカ、ナイスサポート。
ドミノは心の中でにやりとした。
男の腕を持つと外側にぐるりとひね上げ、身体を地面に叩きつける。
「ぐあ」
「大人しくしてなさい」
ざわつく人の垣根を分けて、アスカと兵士らしき二人組が出てきた。ドミノは男が逃げ
ないように慎重な態度で二人組へ引き渡す。抵抗を諦めたのか、男は素直に歩いていく。

「ありがとうアスカ」
スカートの裾をはらいながらドミノはアスカと向かい合った。
「スタンドプレーには慣れてるから。自分じゃとても出来そうにないけどね」
ふふふ、と互いに笑いあう。
「捕まえたようだな」
イーグルが遅れて現れた。
「ええ、二人とも協力に感謝するわ。あとのことがあるから、私はここで」
アスカはそっとドミノに近づくと、肩をぽんと叩き「デートの続き頑張ってね」と呟き
去っていった。残された二人は立ち尽くしていた。
イーグルもドミノも、先ほどの興奮が治まって冷静を取り戻しつつあった。騒ぎのあと
の静けさが二人を妙に照れさせて、次にどうすべきなのか戸惑っていた。街の喧騒が
遠くに思える。
「……帰るか」
ようやくイーグルが搾り出した言葉に、ドミノは黙って頷いた。




「結局、アスカはパパであるキクチヨショーグンに相談して、あの男の人を捕虜として
扱っているようです。キャサリンシレイもときどき話を聞くようで、イエローコメット
に連絡をとっています。ねぇ、イーグル。あのときは騒動に気をとられちゃったから
質問ができなかったけど、私はときどきアスカはまだビリーが好きなんじゃないかと
思うことがあるの。けれどアスカはああいう立場だから、ブルームーンのショーグン
であるビリーに想いが打ち明けられないんじゃないかって。それってものすごく悲しい
ことだよね。ショーグン同士だから出会えたのに、だからこそ結ばれることができない
ような気がするの。私たちもそうなるんじゃないかって不安に


「う、なんだか告白してるみたい」
書きかけた手紙をくしゃくしゃに丸めて、ドミノは机に突っ伏した。
イーグルに会いたいな。
ぼんやりとそう思いながら、あの日つないだ手の感触を思い出すように掌を見つめた。
そういえば、アスカもビリーに会いたいと思って頑張ったって言ってたっけ。
なんだか切ないな。
ふう、と小さくため息をついた。
ショーグン同士の恋か。
昼間に噂話で聞いたことをフッとドミノは思い出す。
「キャサリンシレイとビリーショーグンって、学生時代に付き合ってたらしいですよ」
過去形になったその話と、自分の恋との共通点を照らし合わせる。そして拭えない不安
を振り払うように、再びペンを握り手紙と向き合った。
ふと、ドミノはアスカがその噂話を知っているような予感がした。






・・・


長々とお付き合い、ありがとうございました。
思わぬ長文になったことへ自分自身が驚いています。

はじめてサークル参加した冬コミで受けた刺激を整理するのと、自分への挑戦のために
今回こういったお話を妄想してみました。
話は恋愛中心ではなく、どちらかといえばドミノ、イーグル、アスカたちの普段の姿、
ゲームの外での雰囲気に焦点をあわせています。
こんな感じで会話をしているんじゃないかな~と。
こうしてちょっとずつGBWAからDSに向けてオトナになっていく三人です。

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