2006/06/26


今日の妄想。
これ(2006/04/14)のつづきを妄想したくなったので、つづき。




静まった冷たい階段にコツン、と足音が響いていく。

上の階に人気が無いことはすぐにわかった。夜は更けていたが明かりをつけず、
階段の窓から射す月光を頼りに一段ずつ踏みしめていた。ふと触れた壁の
ひんやりとした感覚が不安を大きくした。
ダメダメ、弱気になっちゃ。信じればいいのよ。
この先に居るであろうイーグルの姿と昼間の出来事を、ドミノは思い浮かべた。
ハッとしたあの顔。後に続いた無言。去る背中。それが真実を告げている気がした。
どうしてあんなことを言ってしまったのだろう。

イーグルが妬いていたのだ。おそらく。間違いなく。
ハンナとジョンが同じ空間にいたことに。

3階に上がったドミノは、ほの暗い階段の先を見つめて、ため息をついた。
「……風に当たってくる」と、イーグルが言ったときには、その後ろをついていく
勇気がおきなかった。やきもちだと自分が指摘したことにイーグルが戸惑っている
ことが見て取れた。
それでも、今までイーグルがかけてくれた言葉を信じていたい。
イーグルは、私のことを大事にしてくれている。
……だから信じよう。

会えばこの不安をきっと吹き飛ばしてくれるはずだ、と根拠の無い希望を抱いて
ドミノは屋上へ向けて歩き出した。こつん、と再び足音が響いていく。




風が吹いた。星空に少し雲がかかっている。けれど寒くはなく、むしろ心地いい。
月は普段より明るく輝き、隣に並ぶ建物の姿もはっきりと見える。
イーグルはフェンスに手を乗せ寄りかかった。屋上にいると施設中に溢れる
人の気配が薄れて落ち着けた。反面、胸中は複雑で、昼間に起きたことを何度も
思い出しては自問自答してしまう。
俺はハンナのことをどう思っているんだ?……よくわからない。
「フン、ばかばかしい」

ばかばかしい、ともう一度、心の中で繰り返した。
その答えを出したところで、どうするつもりなんだ?
手で顔の半面を覆った。昼間のドミノの顔が浮かぶ。不安そうな顔をしていた。
ハンナとジョンが同じ部屋にいるのを見たとき、その光景を気に食わなかったのは
事実だった。ハンナに対してイライラするのはいつものことだが、あの時の憤りが
嫉妬なのかどうかはわからなかった。ドミノに嫉妬なのかと問われイーグルは戸惑った。
答えることができずに逃げ出してしまった。

嫉妬だったのか?
再び自分に問いかける。
……わからない。
顔に当てていた手で今度は頭を抱えた。




ふいに、後ろからドアの開くガチャン、という音がした。屋上に誰かが来たのだ。
イーグルは顔を上げて音の方へ振り返った。現れた人物が誰なのか、月の光が弱く
視認するまでに少しかかった。こちらにだんだん近づいてくる。

「イーグル。よかった、ここにいたのね」
柔らかな口調だった。
屋上の扉が閉じる音がそこで聞こえた。ガ、チャン。
「……ハンナか。何の用だ」
答えながらイーグルはフェンスの外に体を向けた。その横にすっとハンナが並ぶ。
二人はシンとした夜の空気に包まれていた。そこから見える建物の窓には
それぞれ明かりが灯っている。都会の高層ビルの夜景、とまではいかずとも
それなりに美しい。
「昼間は言いすぎたわ。ごめんなさいね」
「……いや」
また風が吹き、木々が揺れた。体を返し、後ろをフェンスに寄りかからせたイーグルは
足元の固い影を見つめていた。
内側を向いたイーグルと、外の景色を見ているハンナは、お互いに顔の表情を
確かめることが出来ない。

「ドミノに、やきもちだと言われた」
顔を下に向けたまま、吐き捨てるようにイーグルが言うと、ハンナは落ち着いた口調で
返した。
「グリーンアースでは、あなたとモップ以外、私と一対一で話そうなんて男が
いないものね」
隣にいるハンナの顔をようやくイーグルが見た。いつもと変わらない横顔。
冷静な表情。整った髪。肌の色。
雲が月にかかり、暗くなった。二人は何もせずにただ立っていた。イーグルが沈黙を
破って話し出そうとしたが、一瞬躊躇して、覆った雲が月から離れるほうが早かった。
イーグルは目を下に逸らしてから、もう一度ハンナの顔を見て言った。
「キスしてもいいか?」
全く表情を変えずハンナは「いいわ」とただ静かに答えた。



ふうっとドミノが息をつく。
階段を上がると次第に窓が少なくなり暗闇が増したが、月の光は思ったよりも
だいぶ明るいらしく、屋上の扉がはっきり見えた。扉の向こうにイーグルがいると思うと
自然と足が早く動いた。
ノブを回すと重たい扉がガチャンと音を出し、屋上が見える。

そしてドミノはその場で凍りついた。




・・・


えと。続きはなんとなくできてるんですけど。

激しくかまってもらいたいので誰かが「続きがほしい!」と言ってくれるまで
続きを書かない方向でヨロシク!(笑


※後日談
続きが書きたくなったので、リクエストなしだったけどやります。

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今日の妄想つづき。





柔らかな月の光が二人を照らしていた。

屋上のフェンスからゆっくりと体を離し、はじめてイーグルとハンナは向かい合った。
風が吹いて、わさわさと葉の擦れる音が聞こえる。夜空の雲がスッと一瞬月を隠し
すぐに動いていった。
ぼんやりとした月の明かりでハンナの顔がとても美しく見える。イーグルはその肩に
そっと触れるとハンナが女性だということを実感した。思っていたよりも、だいぶ
細い肩だった。
ぎゅっと手に力を込めて、軽く唇を重ねた。
イーグルがすぐに顔を離すと、ふふっとハンナが微笑を浮かべ「キスとはこうする
ものよ」と言うと、イーグルの顔を手で押さえ再び唇を重ねた。イーグルの体が
ビクッと小さく反応したが、逆らうことはなく、そのまま快感に身を委ねていった。


ガチャン!


突然大きく扉の開閉する音がした。
驚いて体を離した二人が顔を向けると、屋上扉の前に人が立っていた。
淡い月の光で影になっていたが、イーグルにはそれが誰だかすぐにわかった。
「……ドミノ」
ぽそりと、呟くように言った。
目の前の光景によほどショックを受けたのか、ドミノの体は凍って動けずにいた。
やがてぽたぽたと涙が溢れてきて、視界が歪んだ。ぐっと力を込めて涙を止めようと
踏ん張ったが、反対にどんどん流れてくる。
イーグルの姿を見ることが嫌になり、ドミノは顔を背け、扉のノブに手をかけた。
「ドミノ!!」
名前を叫ぶと、イーグルは走り出した。開かれた扉が閉まる前にノブを掴み、
力いっぱいにそれを開けてドミノの後を追った。
イーグルの後ろ姿を見ながら、ハンナは小さく微笑みのような、ため息をついた。


「待てドミノ!」
屋上から階段を下りてすぐの踊り場で、ドミノの腕を捕まえた。
「いやっ!はなしてぇっ!」
ドミノは両腕を大きく振って抵抗した。イーグルは逆らうドミノの体を無理に引き寄せ、
顔を向き合わせた。激しい怒りの表情をしたドミノの顔は、涙でぼろぼろになっていた。
「いやあっ!」
「ドミノ!」
諌めようとイーグルが力任せに肩を抱こうとすると、ドミノはキッと睨み、すかさず
手を振りかざした。ぱあんっと頬を叩く音が階段に響きわたった。それでもイーグルは
掴んだドミノの腕を離そうとはしなかった。そしてただじっと顔を見つめていた。
泣きながら激しい動きをしたせいで、ドミノは呼吸が苦しくなり、肩を上下させながら
「はぁっ、はぁっ」と息つぎをした。叩いた手のひらがジンと痛む。イーグルの顔を
見ることができず、視界に入らないように顔を背けていた。

「すまなかったドミノ……。けどオレは、君が」
「うそ!うそよ!」
イーグルの謝罪の言葉を、わざと遮った。ドミノはもう何も信じられなくなっていた。
「それ以上なにか言ったら、許さないから!」
「……」
しばしの沈黙。イーグルが握る細い腕だけが、かろうじて二人をそこに止めていた。
階段がようやく静けさを取り戻し、ドミノの肩でしていた呼吸が整っていく。
それでも涙だけは止まりそうになかった。
「うっ……ふぇっ……。くっ……」
イーグルは苦しそうに涙を流すドミノの顔を一瞬たりとも目を離さずに、じっと
見つめていたが、かけるべき言葉が何もでてこなかった。もう抱き寄せようなどとは
思わなかった。抵抗されることがわかっていた。未だに、イーグルの顔を見ようと
しないドミノを見つめ続けることしかできなかった。
残された片腕で涙を拭き取りながら、ドミノがぽつりと言った。
「どうして」
「……」
「どうしてキスしたの」
薄暗い階段の踊り場で、その言葉が溶けていった。月が隠れたのか、スッと、闇が
一層濃さを増す。暗闇に目は慣れてはいたが、ドミノがそのまま夜に吸い込まれて
いってしまいそうな危うさがあった。手を離すことができない。けれど、ドミノの
問いに答えを出すことがイーグルにはできなかった。答えに迷う。
「……すまん」かろうじて返事を搾り出した。「だが、ああなってから、オレは
ようやく君のことが」
話の途中でドミノがキッと、イーグルの顔を睨んだ。再び大きく腕を振り上げる。
頬を打つ、ぱあんっという音が先ほどよりも強い力であることを示していた。

「イーグルなんて大ッ嫌い!もう顔も見たくない!!」

手が緩んだ隙をついて腕を振りほどくと、ドミノはその勢いのまま階段を駆け下りて
いった。残されたイーグルは耐えられずに弱弱しく壁にもたれかかると、天を仰いだ。
足音がどんどん遠くなっていく。叩かれた頬の痛みなど、今受けた言葉のダメージと
比べればたいしたことがなかった。頭の中は真っ白になっていて、その場からしばらく
動けそうになかった。
ふいに、階段が明るくなる。月が顔を出したのだ。けれども闇に埋もれていた天井は
一向に光が射さず暗いままだった。
イーグルには、そこからじりじりと後悔が近づいてくるのがわかった。





・・・


やべっ、書くのがすっげぇ楽しい。(笑
ヘコむイーグルたんがでらカワイス。
前半は書いていてちょっと恥ずかしかったヨ。
もしあれがイードミだったら照れて書けなかったかもなぁ。←バカ

あーうー。
コレの続きはあるんですが、すんげー長いものになってしまいました。
楽しいです、すいません。
うっとおしいかもしれませんが、最後までお付き合いください。

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今日の妄想つづき。





昨夜に降っていた雨が、地面をじとっ、と湿らしている。

朝から小雨が降ったり止んだりを繰り返していた。
基地全体が出撃の準備をしていて慌しい。濡れた道路にキャタピラを張り付かせ、
戦車がごりごりと動いていく。コンクリートに白黒の模様が増えていき、そこに兵の
足跡が足され、偵察車や輸送車のタイヤの跡が足され、路肩の泥がはねた。曇った
空が昼間にしては弱すぎる明るさを放ち、今にも大降りの雨を呼びそうだ。
やれやれ、今度は視界が狭まりそうだな。
していたゴーグルを頭上にずらし、イーグルは空を見上げた。こういう日に飛ぶことは
好いていない。天候がこれ以上悪くならないように祈るばかりだった。

「ドミノ?」
空の様子を窺っていたイーグルの視線に、ドミノの姿が飛び込んだ。特殊部隊の面々が
その周りに整列し、士気を高めている。そして彼らは散開し、ドミノがこちらへ
歩いてきた。ツンとすました表情で前を横切っていく。驚いたイーグルは、慌てて
その後ろを追いかけた。
「ドミノ!君が出撃するのか!?聞いてないぞ!」
声をかけても、全く反応がない。
……完全無視か。まいったな……。
このまま追いかけても無意味だと感じ、イーグルはその場に止まり頭をかいた。
まあいい。元気そうで何よりだ。
イーグルの脳裏に数週間前のドミノの顔が浮かぶ。怒りの表情と止まらぬ涙。あれから
一言も言葉を交わしていない。二人で話し合う機会などあるわけもなく、イーグルには
自らそれを作ろうとする気力がなかった。どう詫びればドミノが許してくれるだろう。
何をしても逆効果になるような気がした。叩かれた頬の痛みが消えない。
泣き顔でいられるより、怒っている方がずっといい。
そう切り替えると、イーグルは兵の待つ飛行場へと歩いていった。
キーンと音を出して飛び立つ航空部隊を、ドミノがずっと見上げていた。



戦闘はドミノと行動するアスカの判断が功を奏し、シミュレーションよりもよほど
良い結果を残した。戦場には予想通り雨が降り、戦いが終結するまでそれは続いた。
イーグルの指揮する航空部隊もハンナからの支援があり、悪天候の中でも自由に
動くことができたが、ドミノを庇いながらの戦闘だったために予想外の被害を生んだ。



帰還した兵たちで基地の中は溢れかえっている。
誰もが泥水を受け、戦車のキャタピラには土が入り、そこここがひどく汚れていたが
戦いが終結した満足感で、皆喜びに満ちていた。
「アスカぁ!やったね!私たちの大勝利!!」
弾んだ声でドミノがアスカと手を交わした。二人とも雨と泥で全身がびしょびしょだ。
「そうね、なんとか勝ったわ」軽く息をつきながらアスカが答える。「イーグルたちが
支援してくれて助かったわ」
「そんなの関係ないよ!アスカのサクテキ能力のおかげだってば!」慌ててドミノが
アスカの言葉を否定すると、呆れた顔をしながら「はいはい。じゃあそういうことに
しておこうかな」と場を諌めた。
年下にうまく言い包められた形になったドミノが、納得のいかない表情をしていると、
突然アスカが立ち止まった。
別行動していた部隊の面々が、ぞろぞろと帰還してくる。その奥から、ひときわ大きな
声で言い争う二人がいた。イーグルとハンナだ。

「あんな動きをするなんて、無茶もいいところだったわ」
「フン、オレは間違ってなどいない」
「結果的にうまくいっただけよ。もう2度としないでちょうだい」
「貴様に言われる筋合いは無い」
「次に失敗しても知らないわよ」
「なんだと!?」
今度の言い争いは、当分終わりそうにない。
「またやってるわね、あの二人」
アスカが苦笑しながら言うと、ドミノは心底機嫌の悪そうな声で答えた。
「仲がいいわね」
わざと視界から二人を外す。今は一番見たくない光景だった。イーグルとは反対の
方向に行こうと思い、アスカに軽く声をかけた。
「ちょっと、戦車の手入れを手伝ってくるね」
「このまま?風邪ひくわよ」
「平気」
足早に去るドミノの背中に、苛立ちと侘しさの影が映っていた。





・・・


続きを文章で書くのがめんどくさくなったので、次からは漫画にします。
同人誌でコレをやろうかなぁとか思ってたんですけど。
ネタをあたためていても何にもならないからね。

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「すまん……」
小声なのに重く、その言葉が漂った。
イーグルは背中越しにドミノの涙を感じた。動かず、黙ることでその涙に答えていた。
次に言うべきことなど何も思いつかなかった。ただそこで立っていた。
二人はいつまでもそうしていた。





おしまい



・・・


はい、長々と申し訳ないです。付き合ってくれてありがとう!
彼氏にちらっと「イーグルってハンナとちゅーしてるよね」と聞いたら
「それは無いだろう」と言われたんですが、男の方の目線だと
こーいう話は不自然だったのでしょうか。うーん、すいません。

てめぇ!イーグルモテ杉!
って怒る方がこのサイトに来てるとは思いませんが、ゴメンナサイ。
ごめんね私がイーグル大好きで。(笑


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