2006/04/14


今日の妄想。





オメガランドの爽やかな風が、車庫の前にいる二人の体を駆け抜けた。



普段はそこここにいる兵士たちが、宿舎に引き上げているせいだろう。基地は静かだ。
戦車のキャタピラが動く音も戦闘機の耳に付く音も、騒がしい話し声も無い。
道路の片隅の標識が少し斜めに立っている。

「気持ちいい風ね、イーグル」
前を歩いていたドミノが葉のざわめく音と共に赤毛を揺らした。
風が草木の匂いを運んでオメガランドの豊かな自然を髣髴とさせる。
ドミノは手を頭上に思い切り伸ばし目をつぶったまま深呼吸をした。
「ねぇイーグル。少し散歩しない?」
気持ち良さそうに体を伸ばすドミノに見惚れていたイーグルは、満面の笑みの
彼女に対して申し訳なさそうな顔で答えた。話し出すまで間が空く。
「いや。ハンナとの出撃が決まって、話し合わなければならないことがあるんだ。
すまんな。次の機会にしよう」
たちまちドミノの顔は曇った。


建物に入り、会議室に向かう階段を上り始めてもドミノは離れようとしなかった。
踊り場で振り返り「本当についてくる気なのか?」と聞くと心底不満げな顔で
「ついてきたら迷惑?」と突っ張った。
やれやれ、さっきまではあんなに笑っていたのにどうしたことだろう。
作戦会議だというのに、どこまでも付いて来そうな雰囲気だ。
彼女には関係ないはずなのだが。
困惑するイーグルは後ろを歩くドミノを叱ることができなかった。なにかに
怒っている面持ちだ。触らぬ神に祟りなし。黙って先を歩くことにした。


ハンナさんと二人きりで会議?冗談じゃない!
知らず知らずに荒い足音を立ててしまう。頬を膨らませてドミノはイーグルの
背中を見る、というよりは睨むに近い表情で追いかけていた。

イーグルからすれば、ハンナのことは仕事仲間のような感覚なのかもしれない。
けれどもドミノはそう思えなかった。そう言うイーグルを信用しきれなかった。
常にイーグルの傍にいる女性。イーグルと共に戦える女性。そこに恋愛感情が
あるのかどうかはわからない。それでも、なるべく二人だけで会うのはやめてほしい。
ドミノは二人の距離の近さに妬いていた。

そんな想いを理解していないイーグルは、ドミノが急に不機嫌になった理由を
散歩をしなかったことがそんなに悲しかったのか、と考えていた。



階段から離れ、廊下を真っ直ぐに進む。兵士達の話し声がうっすらと聞こえていたが
扉の閉まった部屋にいるせいか、さほど大きく感じない。黙ったまま歩く
二人の足音が廊下に響き渡った。

ハンナさんには「作戦会議に参加することで戦い方を勉強したい」とでも言えばいいか。
いや「モップさんに二人がケンカをしないように仲裁を頼まれた」と言ったほうが
追い出されないですむか、などどドミノが会議に参加する言い訳を考えていると、
イーグルが立ち止まった。
会議室と書かれた部屋の扉に軽くノックをする。イーグルは中から返事がくる前に
勢いよく扉を開けた。そして中の様子を知って仰天した。


丸く中央を囲むように並べられた机のひとつにジョンが座り、正面の壁に埋め込まれた
ホワイトボードにハンナが何かを書き連ねている。ジョンは必死で手元の
ノートにそれを写しているようだった。
「……何をしている」
急に刺々しい声を出したイーグルを不振に思い、ドミノは背中越しに部屋を覗いた。
ハンナとジョンがいる。何をイーグルは怒っているのだろう?

「あら」
入り口に立っていたイーグルに気づき、ハンナは手に持っていたマジックを置いて、
ちらりと時計を見ると話しかけた。
「まだあなたと約束した時間まであと10分あるわ。それまで待っていてちょうだい」
「フン、くだらん質問に答える必要は無い。すぐにやめろ」
「くだらない質問なんかじゃないわ。大切なことよ」
「そんな男を相手にしている場合じゃないだろう」
「だから少し待っていて、と言ってるじゃないの」
腰に手をあてて顔を少し上げ、ハンナを見下すようにイーグルが言うと、その態度に
対抗するような様子で腰に手をあてたハンナが返す。
「貴様、そいつの質問を優先する気か?冗談じゃない!」
「順番というものがあるでしょう。彼の方があなたより先に来たのだし
まだ約束の時間ではないわ」
「ふざけるな。作戦会議をすると言い出したのは貴様だぞ!それなのに、くだらん
質問とやらでオレを後回しにするなど言語道断だ!」
どうやら二人は臨戦態勢に入ってしまったようだった。

「あの!いいんです、すいません。すぐに出ますから」
ピリピリした空気を諌めるためにジョンは慌てて席を立ち上がった。そして急いで
机を片付け出て行こうとしたが、ハンナがすぐに引き止めた。
「そうはいかないわ。肝心なところがまだあるのよ。ミスを起こしてからでは遅いわ。
いま聞いていってちょうだい」
その台詞でイーグルはますます苛立った。ジョンに対して吐き捨てるように言う。
「作戦が立てられんだろう。貴様はさっさと出て行ってもらおうか」
「そんな言い方しなくてもいいでしょう」
「この期におよんで、まだそいつを庇うつもりか?」
「何をわけのわからないことを言ってるの」

二人の間に挟まれたジョンは何も言えず、ただ立ち尽くすしかなかった。
ひと息ついてから、叱るようにハンナが続けた。
「イーグル。あなた少しおかしいわよ。いつもなら私との作戦会議なんて
ろくにしないじゃないの。今日に限ってそんな……」


ここでようやくドミノが割って入る。


「ハンナさん!私、イーグルと待ってますから!ゆっくり質問に答えてあげてください。
ね、10分なんてすぐだもの。行きましょ、イーグル」
強く腕を掴むと、引きずるようにドミノはイーグルを廊下へ連れ出した。突然のことで
不意を衝かれたのか逆らうこともなく、立っていたことで開きっぱなしになっていた扉が
大きな音を立ててガチャンと閉まった。



「まったく、なんなんだあの男は」
会議室から少し離れた廊下で、腕を組みながらイーグルは壁に寄りかかった。
薄暗い廊下の窓からは空が見える。

ふと隣にいたドミノがぽつりと呟いた。「イーグル、やっぱり少し変」
「なんだと?どこがだ」
「ジョンを見てから急に怒り出して……。今だってまだイライラしてる」
「……そんなことはない」
イーグルは視線を合わせようとしないドミノを横目で見た。それからようやく
顔を上げたドミノは、真剣な表情で言いたくない言葉を搾り出した。

「なんか……、やきもち、やいてるみたい」

「えっ?」
自身でもわからなかった苛立ちの正体を言い当てられてしまった。
そんなことを思うイーグルの表情を、ドミノが見逃すはずは無かった。





・・・


ぐはっ!
無理!イーグル×ハンナ無理!!私には上手く妄想できねぇ!
やっぱドミノが登場するとダメかー。

前半のケンカっぽいイーグルドミノのやりとりで致死量です。
自分の妄想なのに萌え死にしそうになりますた。
気づけー。イーグルたん、ドミノの気持ちに気づけー。(笑

元ネタはあおっちさんから。いつもありがとうございまーす。ノシ
見苦しい文章になってしまって申し訳ないです。

もちろん、この妄想は続きません。

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