2005/12/12


今日の妄想。





忍んで入国したはずではあったが、軍の関係者にはその知らせが行き届いていた。
レッドスター特殊部隊の隊員たちが面白く思わないのも当然で、
どうにかしてそれを阻止してやろうと皆やっきになっていた。
何かの理由をつけては話しかけて足止めしたり、「あっちでケンカが起きている」
などと嘘をつき遠回りさせたりした。


特殊部隊長であるドミノは、隊員達のその行為にいちいち付き合ってはいたが
自分を待っているであろうイーグルに申し訳ないと思い、少し苛立ちはじめていた。
この国の観光案内、とは名目上の言い訳で待ちに待ったデートだった。

隊員達は自分らのアイドルを他国のショーグンの元へ行かせたくない一心で
あの手この手と奮闘したが、彼女の叱責を恐れ足止めを渋々やめた。
そして次なる策を話し合う途中で、誰かが言い出したのだ。
そうだ、矛先を隊長ではなくあの男に向ければいいのだ、と。



その頃、何も知らないイーグルは待ち合わせに指定されたカフェで
ブレンドコーヒーを片手に本を読んでいた。ドミノを待たせることがあっては
大変だと約束より30分ほど早めに部屋を出ていたのだ。
一見、平静を装ってはいたが本には全く集中しておらず、
時計を頻繁に確認しコーヒーカップを口にあててから、ようやくそれが
空になっていたことに気づく有様だった。

「イーグルショーグン……ですよね?」
名前を呼ばれて本から顔を上げると、目の前にブロンドの少女が立っていた。
ドミノと同じぐらいの背格好で年齢もそう違わないように見える。
イーグルが問いかける前に、彼女が話を続けた。
「隊長が急な用事で遅れることになってしまいまして、
待ち合わせの場所を変更したいと言伝を頼まれました。私、特殊部隊に所属する……」
「ああ、名前はいい。先にその場所とやらを教えてくれ」
呆れ顔で本を閉じながら少女の言葉を遮りイーグルが立ち上がる。
「わかりました」と返事を返した少女はカフェのガラスの外へ目くばせをした。
それを見た特殊部隊の男たちはガッツポーズをし、別行動している者たちへ連絡をした。
今頃ドミノを車に乗せて、こちらへ向かっているはずだった。



デートにまで付いてくるのではないだろうかと心配はしたが
待ち合わせの場所まで送る、と言い出した隊員たちの好意を断ることができず、
結局それに甘えることにしてカフェに向かうドミノは上機嫌だった。
手帳の中の小さいカレンダーには、赤いペンで大きな丸をこの日につけてある。
住み慣れた街にイーグルが存在していると思うだけで、まるで別の世界に
いるような気がして、わくわくしていた。
車の窓から見える景色が何もかも素晴らしく見える。
どこから行こうか、何を見せようか、どの店へ入ろうかと考えるだけで
赤信号にいちいち反応して止まる車を飛び出し、走り出したい気持ちだった。


「……どうして、こっちに曲がるの? 右じゃないの? 今の道」
車の窓から様子を眺めていたドミノは運転席にいる隊員に声をかけた。
「いや。この先は今、工事しているせいで渋滞なんですよ。
大丈夫です。すぐに着きます。近道なんですよ、ここ」
半信半疑なドミノを安心させるように助手席の隊員も「こっちのが早いんですよ」と
続けたので、あまり気にかけないようにして窓の外へ再び目を向けた。
後部座席に座っているドミノは、含み笑いをする隊員に気づかなかった。
そちろん、その理由も。



カフェに着いた時には、約束の時間を15分も過ぎていた。

小走りでドミノは自動ドアをくぐり、店内のテーブル席に座る客を見回したが
イーグルの姿を確認することができなかった。ゆっくり店内を歩いて姿を探したが
見つからなかった。
隊員の手前、使うことを遠慮していた携帯電話をカバンから出そうと手を入れた。
だがそれもまた見つからなかった。……気持ちが逸り、忘れてしまったのだ。
ドミノは今にも泣き出しそうな気持ちを抑えてアイスココアを注文すると席に着いた。
もしかしたら、イーグルもまた遅れているのかもしれない。
今のドミノにはそれを期待する以外に方法が無いように思われた。




つづく



・・・

続いちゃった……。(笑
いや、ここで終わらしてもいいんだけど。よくないよね?よくないよね?
プロットつくればよかったかしら。

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2005/12/14


今日の妄想つづき。





悲しむ、というよりは途方にくれていた。

カフェの自動ドアが開くたびにそれを開けた人物の顔を見てため息をつく。
人の笑い声。店員の挨拶。エスプレッソの入る音。すべてがイーグルを待ち続ける
ドミノにとっては壁をひとつ隔てた別の世界の出来事のように感じていた。
携帯電話の無いいらだち。来ないという不安。時間が過ぎる焦り。来ないという不安。不安。
軍服を着慣れたドミノの足が動くたび、スカートのひらひらした感触に戸惑う。履きなれない
白いパンプスも痛み出してきた。
空になったコップをテーブルに残し、5杯目となるドリンクを注文するためにドミノは
席を立ってレジカウンターに向かう。イーグルが別の席に座っていないかどうか慎重に
店内を確認しながら。


少しショーグンとお話させてください。
ドミノの部下だと言った女の子に案内されて入ったカフェで、まぁよく話が続くものだ、と
半ば呆れながらイーグルはその娘の相手をしていた。機嫌は悪くなる一方だった。
急な用事でドミノが遅れる、とその娘は話したがどうも腑に落ちない。たとえその娘が今日
非番だったとしても、自分と約束をしたドミノがこんなに遅れるほどの用事ならば、
すぐに携帯しているであろうポケットベルで呼び出されてもいいはずだ。この娘もまた
レッドスター軍の人間なのだから。
かといって連絡を取ろうとしても「隊長はすぐ来ます。」と止められる。なんだか妙だ。

頻繁に鳴る携帯電話を見て、イーグルは「それを貸してくれないか」と切り出した。
「ドミノに連絡をとるわけじゃない。これだけ遅れるならば今日の予定はもう諦めた。
リョウに変わるよう、連絡をしたいんだが……」
ドミノの部下は納得した表情を見せ「それならば一度、軍を通す必要がありますよね。
どうぞ」と言って携帯の中のメモリを操作しイーグルに手渡した。
カフェの外に出てから、娘から見えない位置に行き通話ボタンを押す。
「もしもし、キャサリン司令に確認したいことがあるんだが……」

「ドミノはもう出たはずよ。まだ会えていないの?」
キャサリンは意外そうな声をして応えた。
席に戻ってきたイーグルが何も言わずに腕組みをしていると、ドミノの部下は怪訝そうな
表情をして様子を伺っていた。たっぷりと間をおいて話し始める。
「なぜ、キミはオレを足止めしているんだ?」


驚いたような表情を見せ、言葉につまった彼女の後ろから数人の男たちが現れた。
「アンジェラ、もういい。隊長にバレる前に、直接オレたちが抗議してやる!」
「ちょっと! あんたたち!!」
アンジェラと呼ばれたドミノの部下は慌てて立ち上がり、カフェ店内も静まり返った。
一触即発の雰囲気だ。
彼らが特殊部隊に所属している軍の人間だろうことは難なく予想できる。イーグルは
事態をうっすらと理解すると彼らが話し出すのを待った。
「失礼ですが。我々は他国のショーグンが隊長を守れる程の技量を持っているとは
思えません。それよりも常に隊長と共に行動する我々の方が……」
「わかった。つまり貴様らは、オレがドミノとタッグを組むのが気に入らんわけだな」
核心を突いたイーグルの発言は彼らを怯ませるのに十分な効果を得られないようだった。
「隊長に何が起きてもショーグンは空におられます。我々は……」
「わかった。ならオレと戦ってみるか? すぐに」
イーグルの一言。男たちは明らかに動揺していたが、またとないチャンスだと勢いを取り戻す。



「……お覚悟ができているのですね?」
「ああ、貴様らをぶちのめす覚悟ならできているさ」
待たされた苛立ちを解消するには良い運動だ、と思いイーグルはにやりと笑った。
「ちょっ……! それはやばいよ!」アンジェラの声はもはや彼らに届きそうに無い。
慌ててカフェを後にして、ドミノの元へ走っていった。



ほのかに温かさの残ったコーヒーカップを見ながら、ドミノはテーブルに突っ伏した。
あと5分待ったら帰ろうと決めて、目をつぶった。
その途端、自動ドアの開く音がして慌てて飛び起きる。見覚えのあるその顔が自分に
近づいてくるのを見て、ドミノは目を丸くした。たしか、アンジェラという名前の
特殊部隊に所属する女の子だ。
「隊長! 大変なんです! イーグルショーグンが……!」
その娘の口から名前が出てきたことに嫉妬をするよりも先に疑問が生まれたが、
言葉の続きを聞く前に手を引っ張られドミノはカフェを後にすることとなった。




つづく



・・・


また続いちゃったよ……。(笑
長い妄想だぁ。←まるで人事のよう

ツッコみは待って、もうしばしお付き合いくださいね。

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2005/12/16


妄想のつづき。





カッカッカッ。白いパンプスが道路に叩きつけられて音を出す。
緑色のワンピース、白い帽子に合わせた上着とバック。可愛らしい女の子の風貌とは裏腹に
軍の生活で身につけた力強い走り方で、ドミノは街中を走っていた。 イーグルのいるところへ向かって。
カフェで待ち続け苛立った分、走りにも力が入る。
こうして体を動かし向かっていく方が、ずっといい。

デートを邪魔されたことよりも今は、イーグルとケンカをしようとしていることに
腹を立てていた。なんてことを。あいつら、タダじゃおかないから!
先導していたドミノの部下であるアンジェラは、その表情と足取りを聞いて身震いがした。


カフェの前では通りがかるすべての人が、何事かと騒ぎ集まりつつあった。
その群れの中心にはイーグルとイーグルを「いけ好かない奴だ」と思っている
ドミノの部下の男たちが数人、睨み合っていた。緊張感を楽しむ野次馬たちが
今にもどちらかが殴りつけるのではないだろうかと、わくわくしながら待っている。
「……本当によろしいんですね?」
身構えながら、男たちの中の一人がイーグルに尋ねた。
「どんなことになっても恨みっこ無しってことで」
「ああ。ドミノには黙っておいてやるさ。貴様らの怪我は、階段から落ちたことにでも
しておこうか」
自信たっぷりに答えると、かけていた伊達メガネをはずしポケットにしまう。

「多勢に無勢だったと言い訳されたらたまりませんから、俺からまずお相手願います」
イーグルと同じ歳ぐらいのブラウンの髪をした男が前に出てきた……と思うと、
横にいた男がその肩を掴んで「おい、俺が先だ」と言い彼を睨みつけた。
すると、みるみるうちに他の連中も「オレが先だ」「いや俺が」と言い出し
とたんに収拾がつかなくなってしまった。イーグルをぶっとばすのは俺の役目だ、と
全員が同じ主張をする。

出端をくじかれた形になったイーグルはやれやれ、と腕組みをした。
仲間割れでも野次馬を喜ばせるには十分だったようだった。「いけ!」「やれー!」と
ケンカを煽る声が路上に響き渡る。




「 い い か げ ん に し な さ い ! ! 」




モメていた男たち、それを煽っていた野次馬、傍観しつつ笑っていた女の集団。
その場にいた誰もが、その声によって動きを止めた。街が静まり返る。
人の群れを裂くように声の持ち主は中心に向かって歩いてきた。彼女のカッカッカッという
靴の音が力強く鳴る。全員の視線を受けながらドミノは部下たちに近寄ると、一人ずつに
平手打ちをした。バチン!という音がその力の強さを表している。イーグルは普段とは違う
可愛らしい格好の彼女の動作ひとつひとつに、思わず見惚れてしまっていた。
「行こう、イーグル」
声をかけられてハッと我に返ると、スタスタと歩き出してしまったドミノの後ろ姿を
追ってイーグルはその場を去った。
うなだれた男たちと、呆然と立ち尽くしたアンジェラを残して。


「ドミノ……。すまない。オレが騒ぎを立ててしまったんだ」
黙ったまま先を歩き続けるドミノにイーグルは話しかけた。路地裏に入り、人はほとんど
見当たらなくなっていた。「迷惑をかけてしまったな」イーグルの声は人通りの少ない
この場所に沁み込む様に響く。ドミノの動きが止まった。
「ううん。こっちこそ、イーグルに迷惑をかけちゃった。ごめんね」


そして、ゆっくり振り返り、微笑んで「よかった。イーグルに会えて」と言った。






・・・




おわりでーす。
ん~。長くなってしまいましたスンマセン。
妄想は楽しいなぁ。

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