13、原審判決について
 不条理で、不当判決です。

一、「戦争被害は皆同じであった。選別は困難である」とは
 裁判官は戦災遺族、傷害者、孤児たちの深刻な被害を理解していません。日本は敗戦後2、3年は食糧難、物資不足などで苦労した人も多くいましたが、(戦争で儲けたた人もいる)その後、経済が回復、元の生活に戻り、世界第二位の経済大国になり、平和憲法のもと戦争のない平和を享受してきました。
 家は焼けても努力すれば元へ戻ります。しかし、命は二度と戻りません。遺族、傷害者、孤児たちは人生が根底からひっくり返され、二度と元に戻れず、憲法の恩恵もうけず、同じ日本国民でも被害の受け方が、天国と地獄ほど差があります。あまりにも認識不足。冷酷な判決です。

一、「旧軍人、軍属などとの間で不合理な差別があったとはいえない」とは
 エビのような小国日本が、クジラのような大国アメリカに無謀な戦争をしかけ、日本は焦土と化し、膨大な数の死亡者をだしました。その上、無条件降伏という惨めな結果に終わり、日本は完全に負けました。日本は古来から戦いに敗れた方は、城主や家老が責任をとって切腹したり、謹慎したりします。
 しかし、第二次世界大戦においては、負けたにもかかわらず、戦争を起こした責任をとることをせず、まるで戦勝したかのように、指導者の高級軍人には高額金を支給。その一方で、民は切り捨て。「軍人は受忍しなくてよく、弱者は受忍せよ」とは。「弱者に戦争責任を負わせる」ことと同じであり、「差別はしていない」といえるのでしょうか。
 なぜ、空襲被害者だけが、救済されないのでしょうか。

一、「膨大な予算が必要になる」とは
 最近、私のところへ、父が戦死、母が戦災死で孤児になり、大変苦労した人から「戦没者遺族年金が貰えるのか」と電話がかかってきました。私は厚生省へ電話で聞きました。
厚「戦没者遺族年金支給者は、戦死者の親と妻です。子どもは20歳までです」
私「現在、受給者は何人いるのですか」    厚「10万人です」
私「え!10万人ですか。230万人の戦死者ですから1/23ですね。戦死は25歳と して、65年経過していますから90歳。その親は当然生きていませんね。妻もほとん ど亡くなっているでしょう。それだけ人数が減っているのに、なぜ平均1兆円が、それ ほど減らないのしょうか」
厚「恩給がありますので、総務省に聞いてください」    総務省の役人は
総「法律がありますから」の一点ばりでした。
 余った戦没者遺族年金や恩給は何に使っているのでしょか。
同じく戦災遺族も高齢化で大方が亡くなり、当時10歳の子が75歳。両方とも減る一方ですから、裁判官のいう膨大な金額にはなりません。
 私たちは高額金が欲しいのではなく、国の誠意が欲しいのです。
 
 今回の訴訟では、闇に埋もれた空襲の実態を浮かび上がらせ、民間人の犠牲者に何ひとつ救済、補償がなかったこと、軍と民を平等に補償している欧州諸国にくらべ、日本の歪んだ補償制度を明らかにしたことが、世間に広く知られるようになりました。マスコミに好意的に取り上げられた意義は大きいと思っています。