◇ 祖父母、兄、姉のの養育(二親等)
かなり前に、孤児の妹を育てたHさん(当時25歳)の話を思い出しました。
Hさんは両親と空襲下をにげ、抱いていた息子さんと川へ飛び込み助かりましたが、両親は焼死し、孤児になった妹さんを親がわりに育てました。「妹はね。ピィピィ泣いてばかりいて、あの食料難のおり、どれほど食べさせるのに苦労したか。親と一緒に死んでいてくれればよかったと思ったほどよ」と苦労話を聞かされたことがありました。私は
「あなたの息子さんは死んでいればよかった。と、一度でも思ったことある?」と尋ねましたら、予期しなかった質問に絶句しました。おそらく我が子が死んでいたなら、半狂乱になり、生きる望みも絶たれたでしょう。どれほど食べ物がなくても、我が子だけは生きてほしいはずです。<死んでくれたらよかった>と間違っても思わないでしょう。やはり姉妹(二親等)でも、親(一親等)とは愛情に差があると知りました。
また成人した独身の兄、姉と同居していても、しっかりした経済的基盤がないと、自分ひとりが生きるだけで精一杯で、邪魔にされがちです。あるいは結婚するかもしれません。そのときは、孤児の弟(妹)が重荷になるかもしれないのです。
祖父母と暮らす孤児は、若い親と違い年をとっていますから、いつまで元気でいられるか、体力が弱ったり、病気になったりと不安もあります。よく「孫は来てうれしい。帰ってうれしい」といいます。私たちの間でも孫の話題に花を咲かせますが、
「孫は来てくれないと寂しいけど、くればくるで世話が大変なのよ。くたくたに疲れて、帰ってホッとするわ」
「小さいときはまだいいけど、中学生くらいになると生意気になって憎まれ口はきくわ、言うことは聞かないわ、話題がないので、どう接したらよいかわからないの」
「お小遣いだけもらいにくるのよ。何考えているか今の子はわからないわ」
と愚痴をこぼすのでした。かなり年代の離れた孫の世話は不安があります。
施設で養育して、土、日などに帰宅させれば、お互いが安心できると思います。
◇ お金は魔物です。人間性を変えてしまいます。
私の周りでも、親の遺産相続できょうだいが仲違いした例を多くみてきました。きょうだいも世帯をもつと我が家が大切になります。お金というのは魅力があります。世の中、金のための争いは絶えません。
裕福な両親のもとお嬢さまとして可愛がられて育てられてきたMさんは、空襲で戦争孤児になりました(当時10歳)。Mさんの親の遺した遺産をめぐり、親戚がMさんの親権者になることで遺産を受け取ろうとして対立しました。親戚同士の争いに巻き込まれたMさんは、愛情を全くかけてもらえず、母親の幻を見るようになったり幻聴になり、とうとう精神が異常になってしまいました。
私は母の残した貯金で、伯父が新しい工場を建てました。そのことを知ったのは私が結婚してからです。両親の墓前で父の親友にあい、川から引き揚げられた遺体から貯金通帳が見つかったことを教えられました。東京の叔母夫婦に確かめると、その預金はぜんぶ引き出し伯父へ送ったと、「あの敗戦後すぐに建てた新しい工場は、おまえのお母さんのお金だよ」とはじめて聞きました。伯父は私が中学2年のとき病死しています。
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