◇ 孤児の養育は親戚の負担になる
「親族里親は金銭的なものよりも、親族に育ててもらうことを優先させたい(厚労省)」とは」とのことですが、はたして親族で養育するのが、孤児にとって幸せなのでしょうか。
 現在は核家族の時代です。一人か二人の子どもの養育に悲鳴をあげています。共働きしている家庭もあるでしょう。子が一人でも増えるということは、食べさせ、学校へ行かせ、日常的な世話、しつけなどに頭を悩ませます。
 私が30代のときでした。義妹(夫の妹)の子、幼稚園生のKを1ヵ月間、預かったことがありました。私は自分が寂しかった体験から、Kに気をつかい面倒をみていました。ところが、最初のころは小学1年生の娘と仲良く遊んでいましたが、そのうち娘がKに嫉妬するようになりました。娘にとっては突然入り込んできた子に、親を奪われてしまうと思ったのかもしれません。子どもの気持ちは敏感です。どうすればよいかと困り、友人のYさんに相談しました。
 Yさんは1年間、甥のTちゃん(小1)を預かった経験の持ち主でした。
「そうなのよ。私の家でも息子がやきもちをやいて、Tに意地悪したり、虐めるのよ。以前は仲良しだったのにね。子は親を取られたくないの。自分だけを見て欲しいのね。難しい問題よ。Tはストレスからか、暴れたり、頭が痛いといったり、言うことを聞かなかったりしたの。夫は叱っても、泣きもしない強情な子だ。と腹を立て嫌っていたわ。
こちらが一生懸命面倒みても、Tの心の中には親が住んでいるんだから、親のようにいかないわね。こちらもこれまでに築いてきた生活があるし、Tのために乱だされたくないの。私も我が子が可愛いいし、気持ちの上では差別していたかもしれない」
 生まれたときから一緒に暮らしてきたきょうだいと違い、途中から入ってきた子は、それまでに育ってきた歴史があるだけ、溶け込むのは容易ではありません。
 KやTは短期間でしたから解決しましたが、孤児は長期にわたり養育しなければなりません。解決は我が子と甥(孤児)を差別することよって、我が子の気持ちが安定し、親子関係が元に戻るでしょう。親戚の子も優越感を保ちます。私は最近になって人間関係の複雑さに気づきました。
 どの家庭もうまくいっているとは限りません。家庭内には他人にうかがいしれない夫婦関係、親子関係など一つや二つのトラブルを抱えています。密室状態の家庭に入り込むともっとも弱い立場に不満が向けられる可能性大です。
 親戚(三親等のおじ、おば)も、世帯をもてば我が家が大事です。我が子が誰より可愛いのです。昔の歴史にも秀吉が我が子秀頼のかわいさのあまり、養子にした甥家族まで殺してしまった有名な話があります。
 甥や姪とは遠く離れたまに会っていたときとは違い、我が家に同居となればさまざまなトラブルが生じてきます。それは嫁と姑の仲と同じ、姑と離れて暮らす嫁より一緒に暮らす姑、嫁は複雑な人間関係がからみ、対立しやすくなるのと同じ原理と思います。孤児はやがて疎ましく邪魔な存在になり、そして差別、無視がはじまります。
 震災孤児の親族里親制度登録申請は5月15日現在、たった二件のみだそうです。私は里親親族になるのに二の足をふんでいると思います。20歳で成人、自立して生活できるようになるには長い年月の養育が必要です。長い年月の責任が持てるでしょうか。

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