ホームレスとの違い
 
 現代は浮浪児はいない。戦争を知らない世代では浮浪児といってもピンとこないだろう。現在のホームレスと、宿がなくさまよい歩くのは似ている。しかし、全く違うのである。どこが違うのか。

ホームレスと浮浪児の違い
   現代のホームレス  戦後の浮浪児
年代   成人した大人
   働ける年代である
  15歳以下の子ども
   働けない。保護が必要
寝る所   公園などに空色のテントなど
  張って、その中で寝る
  地下道などコンクリートの上で
  ごろ寝する
食べ物   賞味期限のきれた残飯はある
   ゴミ箱には食べ物がある
  食べるものが何もない
  物乞いするか、盗む
衣類   棄ててある衣類がある
  衣類には困らない
  衣服はボロボロ、垢まみれ
  虫がゾロゾロいる
家族   どこかにいるだろう
  親から独立した年代
  両親がいない。誰にでもある
  家庭そのものがなかった
学歴   義務教育(小中学校)は終了   小中学校さえいけなかった
 
山田清一郎さんの著書にでてきたアキラ君
 アキラは神戸空襲で、母と祖母、妹の3人を一挙に殺された。その後、父が復員してきてアキラを捜す。セイちゃんと一緒だったと聞き、神戸中を探し回ったがいない。セイちゃんは東京へいったらしいと聞き、東京へきてセイちゃんを捜すが、浮浪児として住所不定、転々としているセイちゃんを捜すのは容易ではなかった。浮浪児狩りで捕まったセイちゃんをやっと捜し当て、「車にひかれて死んだ」と聞き、泣きながら、「アキラはひとりでなかった。セイちゃんと一緒でよかった」と礼をいってくれたという。
 我が子を2年以上も必死で捜す親。親以外にだれが命がけ、執念でさがしてくれる人がいるだろうか。我が子がひとりぼっちではなく、セイちゃんが一緒に行動してくれたことだけが救いだった。親とはそこまで子を心配するものである。
 小鳥でも親鳥がせっせとヒナに餌を運ぶ。小さい子はヒナと同じなのである。子に危険が迫れば、親は身を挺して子を護ってくれる。その保護してくれる親を奪われ、衣食住のすべてがなく、放り出された孤児たち。食べ物がなく餓死する子、腐ったものを食べて中毒死する子。衰弱死する子。寒さの中で凍死、大人に殴られて変死。絶望して自殺する子もいた。多くの子どもたちが「おかあちゃん!」と呼びながら死んだ。幼い子、弱い子ほど先に死んでいった。
 今の人には小学生以下の子が、たった一人で生きねばならなかった生活を想像できるだろうか。親と離れ1年でも他人の中で生活してみれば、親家族のありがたさがわかると思う。私にも小学4年の孫がいるが、まだ親にすがりついている。娘が「子をひとり残すぐらいなら、親と一緒に死んだ方がいい」といっていた。