ダットサンブルーバードP510DX(WT)

<概要>
 実質最初の愛車はこのブルーバードP510。
 年式は'70年(昭和45年)。
 浪人中の私にはまだ自分のクルマを買うという財力は無く、当然「家のクルマ」というわけだ。
 必然的に車種、グレードなどの選択権は親父にあり、苦労してこのクルマにこぎつけたという経緯がある。
 まず、ブルーバードという点では当初から意見の一致を見たので問題なし。
 次にグレードだが...もちろん私が欲しかったのは1600SSS(WTK)であるが...
 親父の言い分は...
 「お前は飛ばしたいからSSSにしたいんだろうが、DX(デラックス)で十分だろう。まだ免許を取ったばっかりだし、 スピードの出る車は危なくてイカン!」
 「何言ってんの!親父。スピードなんてDXだって130〜40は出るんだよ。 問題はどれだけ短い時間でそのスピードまで加速できるかでしょ?加速のいい車は追越だって短い時間で終わるし、 ブレーキの性能だってSSSの方がいいんだから、SSSの方が安全なんだよ」
 そう、SSSとDXの決定的な差はエンジン出力もさることながらSSSはフロントディスクブレーキなのだ...これは、実際捨てがたかった。
 しかし、頑として親父は納得しない...「いや、お前にはだまされんぞ!」とか言って... かなり説得力のある説明だと思ったんだけどなあ...
 結局、私の方が折れて(なんせ、金を出すのは親父で.. へそまげて、「もう買わん!」とか言い出したらOUT!だからね)DXということになった。
 実は、DXとSSSの中間に「スポーツ」(WTDQ)というグレードがあったんだが... スポーツはDXとエンジンは同じだがディスクブレーキ仕様で ホイールキャップとリヤフィニッシャー(テールランプの間のパネル)がSSSと共通で、 タコメーターも装備されている。
 しかし...名前が悪かった。
 「スポーツ」じゃ、いかにも走り屋っぽいネーミング... SSSだって「スーパー・スポーツ・セダン」の略なんだけど、略されている分イメージが軟らかい。
 「スポーツ」案は、あっという間にボツ。
 「スポーツ」が「セイフティ」とかって名前ならこれになっていたかも...

 DXで納得はしたものの、コラムシフト(ハンドル軸の横にシフトレバーがついているタイプ)なんかにされちゃたまらん...
 「フロアの方がコラムより直接ミッションを操作する構造だから壊れにくいんだよ」...とか言って、なんとかフロアシフトだけは死守した。
 確か前年までなかったと思ったが、この年DXのフロアシフト仕様(WT)が新設されていたのだ。
 このカタログはコラムシフト仕様DXのものだが、シフト以外の仕様はWTと総て同じ。

 さて、ここからは私と営業マンの「親父には内緒」交渉。
 親父が要求したオマケ付属品はレースのシートカバー。
 私が内緒で営業マンに言ったセリフ...
 「あとは親父に何といわれても、もう勘弁してください..って言ってね。で、SSS用のホイールキャップと砲弾型のミラーに替えて納車してくださいな」
 「ん〜〜、ちょっと苦しいけど...いいですよ」..と、交渉成立。
 色は、当時の一番人気「サファリブラウン」..にしたかったのだが、(親父も結構気に入っていたんだが)クーペのみでセダンに設定が無く、仕方なく「シシリアンオリーブグリーンメタリック」という、やや深味のある緑色に決定。
 かくして4月末に、SSSまがいのDX(WT)が納車された。
 ここから、親父に内緒の涙ぐましい改造物語が始まるのだ...

<涙の改造物語>
 なんで涙か..というと...
 この「涙」は、「涙ぐましい」と解釈して欲しい。
 ともかく浪人中でバイトもままならず、お金がない!...つまり「マルビ」改造...
 先ず最初にやったのは...外見を何とかSSSに近づけること...決定的に違うのはさっきも出てきたリヤフィニッシャー。
 SSSでは黒いところがDXでは銀...黒くするべきところに黒いビニールテープを丁寧に貼る...
 これが結構正解...フィニッシャーを外して裏側までテープを廻りこませたんだが、結構それなりの見栄えになった。
 フロントグリルもなんだか微妙に締まっていない...SSSでは黒のところがDXでは銀のようなグレーのような少し薄い色なのだ。
 こちらはテープではなく、つや消し黒で塗装した。
 そしてフロントバンパー上に補助灯を着ける。
 これは、性能面より見た目。
 少しセンターから右にずらし、1灯だけ着ける。
 当時連勝中で、「栄光への5000キロ」という映画にもなった(石原裕次郎主演)サファリラリー仕様のブルーバードがこういう風に着けていたから..(いわば「ミーハー」です)
 この補助灯は、メーカーも何もわからない友人の家に転がっていたのをもらってきた。
 光の広がり具合から見て、一応「フォグランプ」みたいだったが...
 これで、外観はよく見なければSSS風...ただ、中身はDXなのに「SSS」のエンブレムはさすがに...我がポリシーに反するので...
 立川(たてかわ)の解体屋街に行って「DATSUN」のエンブレムを捜し、フロント用とリヤ用の2個を手に入れ、装着した。
 立川の解体屋街にはこの後、何度も足を運ぶことになる...なんせ、新品を買うより圧倒的に安いのだ。
 さて、次は室内だ。
 この写真、端っこに現在のカミさんが写ってしまっているが...ほかに写真が無かったので..ご愛嬌ということで勘弁願いたい。、
 (よかったあ、違う女じゃなくて..(笑))
 先ずはセンターコンソール...これは当時近所にあった「スピードショップ東京堂」で買ってきた。
 当時、大体1万2千円ぐらいしていたところ、8千円ぐらいだったと思う。
 こればかりは親父に内緒というわけにも行かなかったが、見栄えが良くなったので親父も納得...
 なんせDXは買ったままだと床からバスのようにシフトレバーがニョキッと生えているだけなんだから...
 それに矢崎製のアンメーターと油圧計を装着...この油圧計は電気式でエンジンにセンダーユニットを着けなくてはならないが、立川にはメーターしか売っていなかった。
 センダーはメーカーを合わせて購入しなくてはならない...矢崎はいすゞの純正だということを突き止め、いすゞ販売店でセンダーを取り寄せ、装着した。
 次はカーオーディオ...今はカーステレオなんて常識だが、当時は大体AMラジオのみっていうのが普通。
 着ける場合でもダッシュパネル下にステーで吊り下げる...しかも、ほとんどが8トラ...(わかるかなあ?)。
 私は当時最先端のカセットカーステレオを着ける事にした。
 コンソールがあるので吊り下げなくても体裁よく着けられそうだし...
 しかし...当然金が無い。
 国内メーカーのカセット式はン万円...とても買えない。
 秋葉原を歩き廻っていたら、ベルギー製かなんかの「よ−わからん」メーカーのだが、6千円ほどで売っているではないか!...店のオッチャンにに訊いたら「ちゃんと鳴るよ12Vで..」と言うので、信じて買ってきた。
 いや、これが結構いい音で鳴ったんだ...「ヤリッ!」って感じだった。ちゃんとオートエジェクトだったし...
 スピーカーは三菱製...千円ちょっとの安いやつで、ダイヤトーンとは書いてなかったが、あたしゃ勝手にダイヤトーンと言ってしまっていた。
 その他、この写真で判るのはクーラー...サンデンロータリーカークーラー...これも、「東京堂」で購入。
 当然これは親父公認、親父の予算で装着...昭和45年といえば大阪万博の年。
 真夏の8月に親父と共に万博に行き...親父自身、大変暑い思いをしたのがきっかけだった。
 当時、クーラーは「常識」ではなく、しかも、助手席のグローブボックス下に着けるのが一般的だった。
 助手席に座った人は「さぁみーさみーぃ!」
 そのクーラーに沿わせてコンソールからフレキシブルのマップランプが装着されているのが見える...これはラリー出場の布石。
 あと、忘れちゃいけないハンドル。
 DXには極めてクラシックなプラスチックハンドルが標準装備。
 情けないほどダサイ!
 ハンドル径を変えたくなかったので、SSS用の純正ウッドが欲しかったのだが...
 新品を買うと2万円ぐらいする。
 これまた立川まで行って歩き廻った。
 ウッドは無かったが...皮巻風..これは何用なんだろう??..うわさではローレルGX用らしいが...未確認。
 日産純正で、SSS用と径も同じ(42cm...デカッ!)、3本スポークの形状も同じ...違うのはウッドでないことぐらい...
 価格5千円...即購入...ホーンボタンだけは日産販売店で新品を購入したが...
 あと、写真では角度が悪いので判らないが、タコメーターを着けている。
 DXとSSSではダッシュパネルがまったく違う...DXと前出のスポーツはパネルが同じ、DXで時計が着いているところにスポーツでは同サイズのタコメーターが着く。
 調べたところタコメーター用のコネクタはDXでもメーター裏に来ているのだ...ってことはスポーツ用の純正タコメーターを買ってくれば装着可能ってわけだ。
 日産純正部品店で取り寄せ、購入して装着した。
 で、困ったのが外してしまった時計...時計がなくなってしまったら、親父が怒る...
 コンソールのメーターパネルには2つしかメーターがつけられないが、アンメーターと油圧計で既に埋まっている。
 しかたなく、スタンド型の時計をコンソール上シフトレバーの脇に立てた...よく見るとこの写真でも判る。
 また、当時標準ではほとんど着いていなかった間歇ワイパーも装着していた。
 これは現在のケンウッドの前身「トリオ」の電子組み立てキット「ケンクラフト」シリーズのもので、秋葉原で購入し、組み立てて装着した。
 三段階押しボタン式のなかなか小粋な間歇ワイパーだった。

 そうそう、改造談ではないが...最後に、特筆すべき特徴...
 今ではまず見ることの無い、ステッキ型のサイドブレーキだったのだ。
 あの..ダッシュパネル下にあるステッキ型の棒を引っ張るヤツ...戻すときはチョイトひねって戻す..アレ..
 この車の前に乗っていた310型ブルーバード(DP312)でさえ、運転席右側という特異な形であったにせよ引き上げレバー型だったのに...
 ステッキ型は、何度も操作をしているうちにシャツがズボンから出てしまい、背中でかたまりになってしまうという不具合があった(笑)。

 さて、走りの方だが...
 SSSに乗っている友人がいたので試乗させてもらったところ、DX92馬力に対してSSSは100馬力...しかし、それ以上の体感差があった。
 やはりツインキャブとワンキャブ、圧縮比なども違い、基本的なエンジンの性格が全然違うのだ。
 かえって試乗してみなかった方が幸せだったかもしれない。
 それでも、ガソリンタンクにはモータロイ(シリンダー内部に錫メッキをするガソリン添加タブレット)を入れ、エコノマイザーを装着し、白金電極スパークプラグを着けたが、まあ、走りや燃費に関しては「焼け石に水」だった。
 力のないDXで無理して走ろうとするのだから...当然燃費も悪い...
 しかし、だからこそ愛着もあったし、改造も楽しかったなあ...
   

<2004年5月7日初稿>
   

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