【過去拍手集。】




------clap_novel-no,16[タロナカ]

「ナカジー!お願いもうちょっと待っててー!!…って、あれ?」
 担任のDTOに呼び出されて、ちょっと足りていない英語の点数の代わりに雑用を頼まれて。
 予想より時間がかかりそうなことに焦って、教室で待っているはずのナカジを慌てて引き止めにきたのだけど。
 タローが走りこんだ穏やかな午後の日差しが注ぎ込む教室には、窓際で机に突っ伏している学ラン姿がひとつ。
「おーい、ナカジー?」
 近づいて声をかけてみても、返答はなし。ゆっくりと規則的に、その肩が上下するばかりだった。
 どうやら、寝ている。
「えっと、こういうのなんて言うんだっけ…こないだ国語ではじめちゃんが言ってたんだけどなぁ…あ、思い出した!『ジュラルミンはねつきを覚えず』!…だっけ?」
 …。
 どうやら違和感はあるらしく首を捻ってはいるが、「ジュラルミンって何だっけ、アメリカの大統領の名前とかかな。偉い人の言葉だったら教科書とか載りそうだし!」と独り言が続いているところから察するに、あいにくと正しい答を導き出せそうにはない。
 ふと、ナカジの頭がもぞもぞと動いて、今まで完全に突っ伏していた顔のうち、右側の頬がタローの目線に晒される。
「……」
 周囲確認。人影なし。
 ナカジ確認。お昼寝中。

「―――もうちょっと、待っててね」
 ちゅ。

 軽く、微かな音を立てて、その頬に口付け。
 ぱたぱたと教室を出て行くタローの足音が、廊下の向うへ消えてから。




「――――『春眠暁を覚えず』だ、あの阿呆…!」

 顔に血が上り耳まで赤く染まったナカジの呟きが、陽だまりの中に溶けた。





------clap_novel-no,17[ナカジ21+ジロ]

「こんなサイトの拍手を押してくれる物好きな貴方!拍手を有り難う!みんなのお兄ちゃんだよ!さーて、今回のナカナカサイドの拍手お礼ネタはー…」
「物好き言うな!ネタとか言うな!拍手してくださってる方に失礼だ!」
「あれー、ナカナカってお兄ちゃんとカプられてるのはいいのかな正道?」
「!!嫌だ!!!」
「で、今回のお礼ネタにはこんなものを用意してみました!」
「……イカ、と、タコ…?」
「そう、イカとタコ!イカタコといえば触手!そこで今回の拍手お礼は皆様お待ちかねの触」
「触手プレイとかこんなとこで言うんじゃねぇ!!」
「いやだなぁ、まだ触手プレイだなんて言ってないよ?正道のえっちぃ〜」
「!!違っ…」
「まぁ、触手プレイで合ってるんだけどねー」
「貴様…おちょくりやがって…!!」
「まぁまぁ、触手プレイは全国60億人の腐女子の憧れの的だよ?」
「全人類が腐女子かよ!そんな世界滅んでしまえ!!」
「あれ、突っ込みは全人類腐女子化だけ?なんだ、触手プレイはいいんだね」
「!?嫌だ!!!」
「そう言わずに…ほーらヌルヌルだよー。うじゅるうじゅるだよー」
「やめろ近寄るな変態!」
「抵抗する気かい?―――ジロー、正道おさえて」
「うん!」
「!?ってめぇ…!」
「触手プレイ―――それはすなわち、全身にイカとタコの吸盤の痕をつけまくること!」
「……は…?…吸盤の痕をつける……だけ?」
「おやぁ、一体どんな触手プレイを想像したのかなぁ?いやーん、正道ってばえっち〜」
「メガネえっちー」
「っ!!!くそっ離せ変態ども!!!」
「ほーら正道、まずはタコさんの吸盤だよー」
「ぃっ…!痛い!地味に痛い!!」
「しょくしゅぷれいたのしい、メガネ」
「楽しくねぇっ!!!」



 ―――以下、暗転。





------clap_novel-no,18[繚乱組]

 ステージの裾、会場からは開演前のざわざわとした気配が伝わってくる。

「夏、機材のセッティングは」
「おっけーだよナカジ、もういつでもいける。ナカ子、こっちは?」
「無論、こちらも準備は整っている。後は全霊で演奏するだけだ」

 セーラー服にマフラーの少女の言葉に、ステージ裾の空気だけがぴんと張り詰めた。
 演奏前の独特の緊張感。一瞬、喧騒さえも遠くなる。
 それは触れれば切れてしまいそうな脆さではなく、しかし慣れや慢心からくる緩みなどなく。
 この場にいるメンバーの顔をそれぞれに見渡せば、目には真摯な強い光。
 今日のライブでの演奏は、自分達がトップバッター。
 これから始まる舞台で一体何をするべきなのか、知っている。
 気後れはない。
 少女の言葉通り、全てを出し切り全身全霊で演奏するだけだ。

「ナカジ、今日の口上は?」
「しない。掻き鳴らせ」

 言葉なんて無粋なものではなく、純粋なる音でこの宴の火蓋を切って落とせ。

「そろそろ時間だ。さあ、私達の音を叩きつけてやろう」

 ライトで照らし出されたステージへ、一歩を踏み出す。
 湧き上がる歓声、膨れ上がる喧騒、降り注ぐ視線。
 全てを切り裂いて、音が生まれて走る。走るたびに揺さ振る。揺さ振っては生まれる。

 宴は幕を開けた。




------clap_novel-no,19[タロナカ]

 最近、夏の晴れた日というのが、前にも増して好きになれない自分がいる。

 特に、少し風のある日。
 そういう日は、あいつは朝から気もそぞろだ。
 陽が高くなるにつれて、窓の外に視線を向ける回数が増える。見ているのが砂埃の舞う校庭じゃない事くらい、わかる。
 もっと、もっと先の景色。
 いつもそっちから喧しく話しかけてくるくせに、折角気が向いたから返答してやっているのに、俺と話している時くらいちゃんとこっちを見たらどうだ。
 お前が一体何を考えているか、その目が何を見ようとしているのか、わかりやす過ぎて嫌になる。

 昼も過ぎれば、いよいよそわそわしだす。自由の時間が近づく。
 そんなに帰りたいのか。
 いや、そんなに行きたいのか。
 そうなってしまえば、元々まともに聞いていない授業なんて完全に上の空。
 窓の外、空を窺う目はいつにも増して生き生きとしている。
 俺の気分はそれとは反比例していて、少しずつささくれだっていく。

 そして放課後、タローは満面の笑みで俺に言うのだ。

「ねぇナカジ、海に行こうよ!今日絶好のサーフィン日和なんだ!」
「…行かない」

 ついでで誘われるのは御免だ。


 どうせ今日のような日、お前の一番は所詮海なんだろうから。





------clap_novel-no,20[ナカジ21+ジロ]

「拍手有り難うございます!みんなのお兄ちゃんこと後藤仲路だよ☆」
「だよ☆じゃねぇ、かわいこぶるな気色悪い」
「で、こっちの不細工が自称全人類の弟的存在にして俺の実弟―――」
「無視るな!つか、弟的存在とか一度たりとも名乗った覚えがねぇ!そんな自称は痛過ぎるだろうがっ!第一てめぇと血を分けた覚えもねぇっ!」
「まぁまぁ、全人類の弟を自称してるっていう痛さに比べれば、俺の弟を名乗ることなんて雑作もない事だと思わないかい?さらに全人類の妹を自称するのに比べれば、遥かに安易で恥の少ない道だと思うけどな。ほぉら正道、そんなわけだから素直にお兄ちゃんって呼んでごらん?」
「誰が呼ぶかっ!!意味わかんねぇんだよ、引っ込め下種野郎!」
「あーあ、汚い言葉使っちゃて…いい忘れてたけど、もう拍手お礼始ってるよ?」
「なっ!!?くそ、てめぇ後で覚えてろ…!―――っと、このたびの拍手送信、誠に有り難う仕る。中嶋正道だ」
「今更取り繕ってもねぇ」
「煩い黙れ、誰のせいだと思ってやがる」
「そりゃあ勿論、正道のせい」
「……貴様…」
「はくしゅありがとございま。みんなのあいがんおもちゃ、ジローだ」
「って、ちょっと待てぇえぇええっ!!お前もいたのか…じゃなくて!ジロー、お前その名乗りに疑問は無いのか!というか、解ってて言ってるのかっ!?」
「メガネうるさい。なかじがいえいった」
「…こらてめぇ」
「暴力反対だよー正道」
「メガネなかじなぐる、おれメガネおかす!」
「なっ、ちょっ……結局そのパターンか貴様ぁっ!!」
「だって、手っ取り早くお客様に恩返しするには、やっぱこういう展開が一番でしょ」
「手っ取り早くねぇ!それは何一つとして手っ取り早くねぇだろうが!!」
「煩いなぁ…ジロー、とりあえず正道剥いて羽交い絞めといて」
「うんっ」
「うんじゃねぇええぇええっ!!やっ…やめろーっ!!」

「さて、そんなこんなでお約束の以下暗転☆続きは裏で近日公開予定だよー」




(お兄ちゃんを信用してはいけません)





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