【過去拍手集。】
------clap_novel-no,06[ナカタロ]
「ナカジ、はい麦茶」
「ん」
冷蔵庫でよく冷えた麦茶をそそいだコップには、ぽつりぽつりと水滴がついてる。
そういえば。
「ナカジ最近よくうち来るよねー」
学校が終わってからとかに結構きて、宿題をやってったりする。好きな人と一緒にいられる時間が増えるから俺は嬉しいんだけど、前はこんなしょっちゅうじゃなかったような。
「夏だからな」
「?」
どういう意味だろう。
ナカジは夏だと俺と一緒に居たくなるんだろうか。
…いや、多分それは、ない。
「こういう時ばかりは文明の利器も捨てたものではない」
「…つまり、クーラー?」
ああ、そっか。ナカジのウチにはクーラーなんてなかったんだっけ。
って、俺のウチは避暑地じゃないんだけど。いや、いいんだけど。
でも正直、少しは期待したのに。
「何が不満だ?」
唇を尖らせてたら、すぐ気付かれた。ナカジはこういう所だけは鋭い。
「別にぃ」
何か悔しいから、もうちょっとアレな展開を期待していたとかは、絶対言うもんか。
とか思ってたら、ナカジがいつもみたいににやりって感じで笑った。意地悪そうな顔。
「拗ねるな。これが終わったら構ってやるさ」
「っ!」
それはつまり―――つまりそれは、そういうこと、だよね?
なら、絶対絶対今日こそは。
「……今日こそは、俺がナカジを攻めてやる」
いつも通り宣言したら、鼻で笑われた。ちくしょう。
「まあそもそも、暑けりゃ何もする気にゃならねぇとこだがな」
クーラー万歳。
------clap_novel-no,07[ナカジ21]
「正道、正道!大変だ、お兄ちゃんに拍手が来たよ」
「安心しろ、例え明日雪が降ろうとも槍が降ろうとも、てめぇに対する拍手なんぞ送信されてくるわけがない」
「正道の兄であるこの俺宛の拍手送信ありがとう!」
「だから違うっつってるだろ!人の話を聞け!ここの拍手はランダムだから―――」
「わざわざ俺に拍手してくれた貴方の為、俺の個人的な欲望の為、これからより一層弟である正道との仲の良さをこの辺境サイトでアピールしてく予定だから、どうぞ末永く―――」
「いい加減にしやがれ赤の他人!誰も貴様になんぞわざわざ拍手を送っちゃいねぇ!大体誰が弟だ!!」
「それは勿論、ま・さ・み・ち☆」
「ウインクするなしなを作るな気色悪い!」
「いやだなぁ、そんなに照れなくていいんだよ。俺たち兄弟の仲がいいのはもう来訪者様みんなが承知して」
「ねぇ!兄弟じゃねぇし仲良くもねぇ!」
「そりゃそうだ。こんな不細工と血が繋がってたら俺はショックだよ」
「………よぉし、そうかそうか、そんなに殴られたいか。なら容赦はいらねぇな」
「どうしたんだい正道ってば、お兄ちゃんを押し倒すなんて穏やかじゃないね。一体何をする気なのかなぁ?」
「ボコるに決まってんだ、ろっ!」
「っと、そうかそうか、今日は上がいいんだね。よぉしわかったよ、可愛い弟の期待に沿えるようお兄ちゃん頑張るからね!」
「なっ…頑張るなぁっ!離せ…はーなーせーっ!!!」
以下、検閲削除。
------clap_novel-no,08[タロナカ]
「雨だぁ…」
「雨だな」
丁度学校から出ようとしたところを、雨に降られた。
多分、夕立。
バケツを引っ繰り返したような、という表現がぴたりと当てはまる土砂降りでは、学校を出るに出られない。
「ぅあー、俺傘持ってないよー」
「持っていても役に立つかは微妙だがな」
傘をさしていたところで激しい雨がアスファルトを叩いて跳ね返り、足元がぐしょぐしょになるであろう事は想像に難くない。
「ナカジ持ってない?」
「…」
「相合傘もだめかー」
そんな事をしたって、傘に入りきらなかった体の一部は水につかったかのような有様になるだろう。
第一、傘を持ってたとしたって俺はタローを入れてやるとは言っていない。相合傘など勝手に想定するな。
放課後のこの時間、学校にはほとんど人がいない。
昇降口に響くのは雨の音と俺の声とタローの声だけで、他には何も聞こえない。
なんだかまるで、
「閉じ込められちゃったみたい」
体温の高いタローの手が体温の低い俺の手をごく自然に取って、何故かぎくりとする。
「俺とナカジの2人っきりでさ」
ゆっくり指を絡めて繋がれる。
普段なら、こんな場所でそんな事をされようものなら音速でその手を振り払う。けれど、今は周囲に人がいない。
2人きりで閉じ込められてしまっているから。
らしくもない、そんな言い訳をして俺は体温の高い手を甘受した。
「―――空が明るいから、すぐに止む」
「そっかー」
もう少しだけ、雨が止むまで。
------clap_novel-no,09[繚乱組]
「この度は、拍手という形での激励を戴き、向井家当主として誠に…」
「んー、ナカ子、さすがにそれは挨拶として堅苦しすぎると思うけど…あ、拍手の送信ありがとね。」
「この様な変則極まりないサイトにいらして下さった挙句、拍手まで頂いたのだぞ?礼節を尽くすのは当然であろう」
「そんなんじゃ言われた方が面食らっちゃうって。ねぇナカジ君」
「夏の言う事も一理ある…ナカ子の言葉は常人には難しいだろう」
「そうか?ならばどの様な礼ならば相応しいのか挙げてみろ」
「そうだねぇ、例えば脱ぐとかどうかな」
「「変態は今すぐ異世界へ帰れ」」
「正道もなっちゃんも酷いなぁ。お兄ちゃん泣いちゃうよ?」
「夏もナカジも目上の者への態度がなっとらん!今すぐナカ兄様に謝れ!!」
「「済みませんでした」」(棒読み)
「其れで良し。」
「ナカ子ちゃんありがとう♪で、お礼の件だけど」
「脱ぐとはどういう事なのだろうか、ナカ兄様」
「世の中にはサービスの一環として、脱衣っていうものがあってね」
「ふんふん」
「ナカ子ちゃんみたいな、着込んでる子が脱ぐとそれはもう価値が」
「ほう」
「送信者さんもとても喜んでくれる事うけあいだよ」
「成程、そのような手が!ナカ兄様の博識には恐れ入りました…我が無知さを恥じております…!」
「え、嘘、そんな流れになっちゃうのナカ子?」
「…まさか…あの変態野郎のうわ言を…本気にしているのか…?」
「どうした夏もナカジも」(ごそごそ)
「ってうわぁああ言ってるそばから脱ぐなぁあナカ子ぉお女の子は脱いじゃダメー!!」
「たっ頼むそれだけはやめてくれナカ子ー!!」
「なっ、何だ!2人とも何故止める!?」
「あははは、2人とも必死だねぇ」
「「誰の所為だと思っている…ッ!!」」
「俺の所為v」(にこり)
((こいつ…!いつか必ず寝首かいてやる…!!))
「放せ夏!ナカジ!私は脱ぐのだー!」
以下暗転。
------clap_novel-no,10[ナカジ21+ジロー]
「正道、お兄ちゃんからプレゼントだよ」
「…何だこれは」
いつも通り胡散臭い笑顔を貼り付けた自称兄の実質変態が差し出したのは、青
い毛糸で出来た物体。
「見ての通り、お兄ちゃんの手編みのマフラーだよ。正道のマフラーも結構使い
込んでるっぽいしね、優しいお兄ちゃんが編んであげたんだよ☆」
「いらん」
「そんな、遠慮しなくていいんだよー」
してねぇ。
「お前の作ったもんなんざ恐ろしくて身につけられるか」
「よくわかったねぇ、実は編んでる途中に待ち針が一本紛れ込んじゃって」
「ちょっと待て。何故編み物なのに待ち針が紛れ込む。編み棒しか使わねーだろ
うが!」
どう考えても意図的なミスだろうが。というか、何そんな危険物制作してんだ
。
「気にしない気にしない、大丈夫大丈夫」
気になる!大丈夫なわけねぇ!
「巻くな!」
剥ぎ取って、床に叩きつける。こんな危険物、急所である首に巻けるわけがな
い。
「もー反抗期なんだから…ジロー、正道にマフラー巻いてきゅってしてあげて」
「わかったー」
分かったじゃねぇ!地味な凶器持って近づくんじゃねぇ大人幼児!
「っ、やめろ!絞まる!刺さる!」
ぷち。
「…なかじーいたいー」
「ちっ…ジローに刺さったか」
「鬼かてめぇ…」