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ナカかご ほんのりラブラブ電波






【白い世界と少女の幸せ】


 いつもと同じように、微かに木材の軋む音をたてて少女が窓を開け放つと、そこには色を奪われた世界が広がっていた。
 広すぎると言えるほど広い庭一面に、薄く白い雪が積もっている。
 空気は刺すほどではないが冷たく澄んで、あたりには不思議なほど音がない。けれどそれは耳鳴りを覚えるような静けさではなく、何かを待って息を潜めているかのような静寂。
 ほどなく、さくりと足音。
 常なら気付けないようなその微かな音に少女が顔をあげると、庭園の時は進みだしていた。
 窓辺にゆっくりと近づいてくるのは黒い人影。黒というのは比喩でも何でもなく、来訪者の服が学ランであるせいだ。
 今時珍しい角帽を被り、独特の足跡を残す下駄を愛用する、風変わりな少年。
 白で覆われた世界に訪れた黒はどこか象徴的で、ただ少年の身に付けたマフラーが痛々しいほどの青色を主張していた。
「ナカジさん」
 少女が少年の名前を口にした事に、きっと意味はない。呼び寄せたわけでも、問いかけたわけでも、確認したわけでも。
 けれど、少年は少女に問いかける。
「見つかったのか、かごめ」
 何が、とは今更言う事もなく、少年は以前ここを訪れた時と同じ言葉を口にした。
 その前に来た時も、さらにその前に来た時も、ナカジと呼ばれた少年は同じ質問を少女に投げかけていった。
 飽きる事もなく、呆れる事もなく。
「―――まだ」
 見つからない。
 かごめと呼ばれた少女も、これが何度目かも知れない答えを視線を合わせないままに繰り返す。
「そんな場所で待っていても、見つかるわけがない」
 少女は、探しモノをしていた。けれど実際に起こしている行動といえば、この窓辺で唄い、ただ待つことだけ。
 求めてはいても、手を伸ばしてすらいないのと同じ。
「童話の世界では幼い兄妹が青い鳥を求めて旅に出たけれど、結局青い鳥を見つけたのは旅の終わり、自分達の家の鳥籠の中だったわ」
 あまりにも有名な昔話は語る。
 幸せとは、身近にあり過ぎて気付かない。
 なればこそ、少女はここから動かない。鍵などかかってもいない、それどころか開いたままの鳥籠から出ることは勿論、身を乗り出す事さえ。
 ただ、自分が幸せに気付くのを待っている。
 風が吹いて、少年のマフラーが揺れる。
 青いそれは、少女にとって。
「行こう」
 手が、差し伸べられた。それは、初めてのことだった。
「何故」
 ここから出ていくつもりはないと、そう明言したつもりだった。
 しかし、尚も少年の手は少女へと伸ばされる。
 まるで、求めているかのように。
「待っているだけでは見つからないし、気付けない」
 見つける為には、探し求めなければならない。気付くためには、知り変わらなければならない。
 例え、少女の探しモノが本当にここにあるのだとしても、ここで繰り返しているだけでは絶対に手に入りなどしない。
「だから行こう。かごめ」
 眼鏡の奥、少年の黒い瞳はどこまでの真摯だった。
 ちらりと、何かが舞い落ちる。
 雪。
 風が吹く。
 広すぎるほど広い庭は白く色を無くし、その中にあってただ少年だけが黒と青とを所有していた。
 青。
 少女に、幸せを教える色。
「―――連れて行って、ナカジさん」
 求める為に、見つける為に、気付く為に。


 少女は手を伸ばした。














むしろ書いた人が電波でした申し訳ありません。
ナカかごって無口カップルなイメージが強くてあちこち言葉が足りてない気配満々です。[石凪]

絵は仕様なので、同名のVOC(ry曲とは何の関係もありません。むしろイメージ違いすぎる[浮絵]