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2ナカ1ナカ 独占欲がじわりじわり。







【それはきっと余りに切実であるが故に独占欲に酷似している】




 まるで内側を傷つけないよう気遣っているかのように、ゆるゆると指を動かす。するとその度にソコはひくひくと締め付け、時折酷く卑猥な音さえ伴って蠢いた。
 だから余計、いつもよりゆっくりと丁寧に。
「ぅ、っ…っは、…!」
 中指と人差し指の二本を中に擦りつけるように出し入れしてやれば、自らの口を塞いでいる正道の手の下から押し殺した短い呼吸が漏れてくる。
 押さえつけている腕にはたいして力も込めていないのに、逃げようとはしない身体に声をあげて笑いだしたくなった。
「もう一本、増やそうか」
「っ!ゃ、め……ぅぁ…っ」
 潤滑剤でどろどろになった指をもう一本押し当てると、組み敷いた身体が反射的に微か強張る。しかしそんな反応とは裏腹に、そのまま少し力を込めるだけで指はぬるりと呑み込まれていった。
 本来の機能とはまったく異なる用途を強いているのに、繰り返された行為で開かされた身体は大した抵抗も示さない。
 濡れて光って窄まっては誘い、中にあるイイ所を掠めるように動かして解せば、また押し殺した声と呼吸。
「気持ちいいかい?正道」
 体内に異物を押し込まれているというのに、それを快感の類と取り違う愚かさが。
「っひ、ぐ…!」
 必死で口を押さえている手を外させると、情けなく引き攣った嬌声。顔が快楽とそれ以外の何かで歪むのを見るのは、実に気分がいい。
 戯れのように、やや血色の悪い肌に散った赤い所有印を舌先でなぞれば、余計に顔に浮かんだ快楽以外の度合いが濃くなる。
 困惑、している。
「なん、で…こんな…っ!」
 何でこんな風に、優しげに抱くのか。
 いつものように痛みの入り混じった性急さで犯すなら、正道―――もう一人の自分には、物事をまともに考えるような精神的余裕は残されない。無理やりに抑えつけて屈服させ、有無を言わさず引き摺り落として溺れさせる常なら、条件反射のように逃げようとただ無駄足掻きをする。
 けれど。
「そりゃあ、正道が好きだから、だよ」
 どんな歪んだ形であれ、辿り着くのが闇の底であれ。
 息を呑む気配。わずかに見開かれた目が驚愕と恐怖と、それ以上に信じられない言葉を聞いたような戸惑いで揺れている。
 何度となく犯されて手酷い目にあっているくせに、こんな言葉一つにいまだそんな反応をするお人好し。
 拒絶のできない、憐れな俺の片割れ。
 そんな事だから、こうやって付け込まれる。
「本当、どうしようもないよなぁ、ナカジ」
 とうとう込み上げる笑いを堪えられなくなって嘲るような声が漏れれば、そこでようやく組み敷いた身体に、本気の抵抗をするための力が籠る。
 分かりやすくて、今更で、いっそそれすら。
「離せ…!これ以上、てめぇの…悪ふざけに付き合ってやる気はねぇ…!」
 俺を殴ろうと持ち上げられかけた腕を逆に抑え込んで、頭の上で両手首を一纏めに。たったそれだけで正道の自由は欠片もなくなるが、あくまで必要以上の力は込めず『ヤサシイ扱い』を心がける。
 目線の位置を合わせてやれば、二枚のレンズを隔てたその視界に存在しているのは魂の同胞たる俺だけ。
 気分がいい。
「ふざけてなんかいないよ。全部本気なんだから」
 むしろ、悪ふざけであった方がこの場合は幾分マシなのだろうけど。
 意識するまでもなく両の口端が持ち上がる感覚。きっと正道の目に映るっているのは、ある種病的に歪んだ笑顔。
 その顔が強張って、ごくりと唾を飲み込む音が聞こえた気がした。
「さて、十分優しーく慣らしてあげたんだし、もういいよね」
 わざと音を立てるように指を引き抜いて片足を持ち上げると、今更この状況に怯えでもしたのか大袈裟に体が跳ねた。
 こんな風にいつまでも慣れない態度を取り続けられるのは、もしかしたら才能の一種なのかもしれない、などと一瞬下らない思考。
「っ!ゃめ…っひ、ぁ、ぁあ…っ!」
 暴れ出されるより先に、押し当てて貫く。
 必要以上といえるほどに濡らされて慣らされたソコは、まるでこの行為が自然であるかのように俺の熱を受け入れた。思わず背をそらせる身体にも喉から溢れる声にも、痛みを訴える色はなく、それらが面白くて堪らない。
 否定もできず、理性を失う事もできず、それでも犯されている。
 とてもとても滑稽な、狂おしいほど愛しい分身。
「気持ちイイよね、正道」
 懸命に首を横に振って、精一杯抗う。
 無駄、なのに。


「ぃ、やだ…!たろ、ぉ―――!!」


「―――へぇ、」
 不意に、正道の口から零れたその名前に、頭の中のどこかが冷えていくのを感じた。
「こんな時に、こんな状況で…まだ、そんな名前が呼べるのか」
 縋りたかったのか助けて欲しかったのか勘違いでもしたのかトチ狂ったのか、せめて心だけでも守りたかったのか。
 まぁ、理由なんてどうでもいいが。
 目を細めてゆっくりと首筋を撫でれば、叱られる直前の子供のような狼狽と後悔が表情を満たしていった。
「ぁ…ち、違…!」
 何が。
 カチ、と歯の鳴る音。間違えたのと思っているのか失敗だと気付いたのか。
「そんなに怖がるなよ、」
 悲しくなるだろ。
 言いながら、嗤う自分。冷たく温度をなくした意識の一部が、狭い部屋の天井辺りから見方を変えれば自慰とも言える俺の行動を見下ろしていた。
 現実の視界には鮮やかな鎖骨の所有印。爪を立てる。どうせ俺が付けたものじゃない。
「ぃっ…ぅぐ、ひ…ぁ、あ…!」
 跳ねる身体、きつく狭くなる内側。無理やり引き抜いて突き上げて揺さぶると、普段同じ行為をしている時のものに大分近付いた呻き声。
「なぁ、お前の大好きな大好きなタロー君も、こんなふうに犯してくれるのか?―――正道は痛いの好きだもんなぁ」
 また別の痕に爪を立てる。今度は血が滲むほど。
 正道が必死で首を振り続けているのは、否定かもしれないし抵抗かもしれないし逃げたいのかもしれないしイイのかもしれない。
 心中なんてどうでもいいし、真実なんてどうでもいいし、ただその存在ごと堕ちてさえくれれば。
「でもさぁ、」
「っひ、ぃ…!」
 不意に繰り返される動作が鬱陶しくなって、髪を掴んでやめさせると、元々整っているとは言い難い顔が更にいびつに歪んでいた。
 気分は、いい。
「今、お前犯してるの俺だろ」
 そこだけ、温度の感じられない声。この部屋を冷たく見下ろしている俺の言葉。
 カチカチと歯の鳴る音。
 脂肪などまるでついていなさそうな首筋へ顔を埋めて、舐めるなんて生易しい事はせずに噛みついた。
「ぃぎっ…!」
 いっそ噛み千切ってしまいたいと思っても、それは自重。いまだ時期尚早。破れた皮膚の下から湧き上がってくる赤を啜って、尚更嗤う。
「勘違いするなよ、忘れるな。お前に一番近いのは誰か、それ故にお前を縛れるのは誰か、お前を汚すのは誰か、お前を壊すのは誰か、だから一番最期に一緒にいるべきは誰か」
 今はまだ解らなくても、いずれ全てを理解しろ。
 顔をあげて目を覗き込んで舌舐めずり。


「ねぇ早く、俺だけを見て」


 それは或いは、独占欲と呼ぶにはあまりに切な感情。











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最後の辺り楽しくなってきて文章が制御不可になっている事よりも何よりも、ついうっかりタロナカ前提にしてしまった事を謝らせてくださいすみませんでした(←
独占欲というテーマはとてもとても大好物です。
ただし、いつも歪んだ解釈の歪んだものしか書けませんが。[石凪]


裏絵というよりただの怖い絵になってしまってすいません本当に。
マフラーの巻きつき加減に独占欲を(無理矢理)感じ取って下さい[task]