第2章 ベクトル      戻る
 

目次

第1章 平面上のベクトル

 第1節 ベクトルとその演算
   1.ベクトル
   2.ベクトルの演算
   3.ベクトルの成分
   4.
ベクトルの内積 
 第2節 ベクトルと平面図形
   5.位置ベクトル
   6.ベクトルの図形への応用
   7.図形のベクトルによる表示
第2章 空間のベクトル

   1.空間の点     2.空間のベクトル   3.ベクトルの成分
   4.
 ベクトルの内積   5.位置ベクトル    6.ベクトルの図形への応用


 べクトルはいろんな分野で用いられています。台風を例にとってみましょう。

 低気圧の風向き
 低気圧は、周囲より気圧が低いため、その
中心(台風の目:赤丸)に向かって 気流(青ベクトル)が流れます。ところが、地球の自転の影響で、北半球では進行方向に向かって、気流の流れに対し右向きの力(黄ベクトル)が働きます。(コリオリの力)
 風向きは、気圧の差による流れと、コリオリの力の合成として生じ、右に振られながらも、低気圧の中心に吹き込むため、
(ピンクベクトル)のようになり、渦を巻くことになります。
 大気だけでなく、海流の運動もコリオリの力の影響を受けています
 

   Tossy's homepageより
 
 平成15年5月30日の台風4号の気象衛星写真
     (写真:高知大学・東京大学・気象庁 より)


 第1節 ベクトルとその演算
 
1.ベクトル

 「向き」と「大きさ」を合わせもつ量。位置に依存しない。
 ベクトル向きが同じで大きさが等しいとき、と表す。
 ベクトルの大きさを|| と表す。
 大きさが等しく向きが反対のベクトルを逆ベクトルといい、- と表す。
 
k > 0 のとき  k < 0 のとき 
   


 
2.ベクトルの演算
 
     ベクトルの和と差の法則を数式と図形的観点からおさえよう。

 ベクトルの和 ベクトルの差 
 

 


ベクトルの差
 

 「ベクトルの差」を「逆ベクトルの和」と考えてもいいですね。
 

例題1 ベクトルを用いて表してみよう。
       

  答      


 ベクトルの問題を解くうえでの最も大切なことは始点の統一です。
 すべてのベクトルを同じ始点のベクトルに変更できます。


  ベクトルの実数倍
     


 ■ベクトルの計算
   一般の文字式と同じように扱うことができます。

    例 (1) 3(2 ) = 6  (2) 
2()= 2 +2


▲平行なベクトル
  でない2つのベクトル, は、向きが同じか反対のとき、
    平行であるといい、 と書く。


     =(1,2)=k(1,2) となる実数kがある。
 
 


 ■ベクトルの分解

例 正六角形ABCDEFにおいて、 =とする。
  このとき、次のベクトルをを用いて表しなさい


   (1)       (2)
 

 (1) = + = +2  (2) = + =- + (2) =2

問1 正六角形ABCDEFにおいて、 =とする。
  このとき、次のベクトルをを用いて表しなさい


   (1)   (2)   (3)   (4)   (5)

   (6)
  (7)   (8) 
 

解答

  (1) =-  (2) =-2

  (3) =-(+)   (4) =2  

  (5)
)=   (6)

 
 (7) = BC+CD= AO+= += +2

  (8)
= =2

 

問2 右図のように正六角形ABCDEFにおいて、次のベクトルを, を用いて表してみよう。

  (1)      (2)
 

 答 (1)  =+2
    (2)=-+(-2)=-2  

    または
+=-(+)でも同じ結果になります。

問3 図の正六角形ABCDEFについて、ベクトルの差をで表しなさい。 

   (1)    (2)    (3)
 

   (1)  答 :

  (2)  答  :より

  (3)  答 
= -

 問4 右図の正六角形ABCDEFについて、次のベクトルは

     (1)   (2)    (3)

 


3.ベクトルの成分
   
 Oを原点とする座標平面上で,軸,軸の正の向きと同じ向きの単位ベクトルを
    
基本ベクトルといい、それぞれ  で表す。

座標平面上のベクトルに対し、
  =である点Aの座標が
 (,)のとき
は次のように表せる。

  
  または

  =(,)のようにも書く
 


  ■成分による計算 p54

例 (2,5)、=(-2,3)のとき、4+3成分表示してみよう。

       +3=4(2,5)+3(-2,3)=(8,20)+(-6,9)=(2,29)

  OAベクトルは始点を原点Oにおいて、(3,1)が終点のベクトルで、
 このようなベクトルを =(3,1) と書きます。
   

  次にベクトルの大きさを考えてみましょう。
    ベクトルの大きさ=長さは「三平方の定理」(中3で学習)を使って求めます。
     
||= =√10

 問 (2,3)、=(-1,4)のとき、内積を求めなさい

   2×(-1)+3×4=10

 点A(1,2)から、点B(5.7)へ向けて矢印を描く。このとき、AからBに向けたベクトルを、BからAに向けたベクトルをと呼んで区別する。 特にこのようなベクトルを簡単にと書くことがある。


 始点をA(1,2) 、終点をB(5.7)とおいたベクトルをとる。このとき、ベクトルの要素は
 = (5−1 , 7-2) = (4 , 5) 

 


赤色のBベクトルのように座標上のどこにあっても、同じべクトルであれば、成分表示も同じ(3,1)になります。

右の図から一見、赤色Bべクトルは始点が(5,3)あたりにあるため、つい、Bべクトルの成分表示を(5,3)のようにしないよう、注意してください。

つぎに、黒色のベクトルC。このベクトルは、向きが逆で大きさが同じベクトル、すなわち「逆ベクトル」です。逆ベクトルは向きが逆なので、x y成分に両方マイナスがつきます。
 ベクトルの大きさは、すべて√10です。

 


  実際に例題でやってみましょう。

例題 の成分表示は=(3,2)です。
    ベクトルは図の①~⓸のどれか?
             (答は2つ)
  また、大きさは?
 

 答 ベクトルは①と③   大きさは||=√13

問1 右図の残りの②と⓸ベクトルを成分表示しなさい

   また、各ベクトルの大きさを求めなさい。
 

 答 ② (-3,-2)   ④ (3,1)

問2  (1,5)、=(3,-4) のとき次のベクトルを成分表示しなさい。

   
  (1)+3         (2)

 (1) +3=2(1,5) + 3(3,-4)=(2,10)+(9,-12)=(11,-2)

 (2) -=-(3,-4)= (-3, 4)
 

問3 (-1,1) , =(1,-2)で=2あるとき、次の問いに答えよ。

    (1)の成分表示をもとめよ。

    (2)と同じ向きの単位ベクトルの成分表示をもとめよ。

 答  (1) =(3,-4) 

    (2)
(3,-4)より||=√25)=5
       同じ向きの単位ベクトルは
= (3/5,-4/5)

 

問4 次の2点A,Bについて、を成分表示し、また、を求めよ。

   
  (1) A(2,3), B(5,1)     (2) A(5,2), B(1,6)

 の大きさのことです。

(1) = (5-2 , 1-3) = (3 , -2) …成分表示
 
 

(2) 
= (1-5 , 6-2) = (-4 , 4)…成分表示
  

 

問5 (1,2)、=(1,-1) とする。 = (5 , 4) を適当な実数 s ,t を用いて
   
+tでの形で表しなさい。

 = (1,2)+t(1,-1) = (s,2s)+(t,-t)=(s+t),(2t)
  +t とすると、 (5 , 4) = (s+t),(2t)  よって、
 
 s+t= 5 …①  2st= 4…② 連立方程式すると、s= 3 t= 2
   したがって    
= 3+2 … 答

問6 2つのベクトル=(1,3)、=(-2, ) が平行になるようにの値を求めよ

 答 であるには、 = kとなる実数があればよいので、
 
    (-2, ) = k(1 , 3) = (k , 3k) から
      -2 = k  = 3k  よって 
= -6
    別解)

         k (1,3)=k(-2, )  (1,3)=(−2k,k)から
      −2k=1 k=3   k=−1/2  (−1/2)×=3
  よって  = -6


問6 2つのベクトル=(4,−6)、=( ,9 ) が平行になるようにの値を定めよ

 答 であるには、 = kとなる実数があればよいので(,9)=(4k,−6k)
     x=4k -6k=9 =4×(−3/2)= −6(答)
    
4.ベクトルの内積

 ■Ⅰ ベクトルの内積

   ①
平面上の2つのベクトルの内積は、三角形の余弦定理(cos)に関連して定義しました。
    同じように、空間のベクトルにも内積を定義することができます。

 ①平面上の2つのベクトルの内積は、三角形の余弦定理(cos)に関連して定義しました。
 
  同じように、空間のベクトルにも内積を定義することができます。
 

      の内積は  … 公式①で表す。
              
(の・は省略してはいけない)

  
ここでθの値を復習しておこう。下の空欄に値を書き込みましょう。

  

  

例1  ||= 2, ||= 5 で、 のなす角が30°のとき、内積 .を求めてみよう。

    答  =2× 5cos30=10×√3/2 = 5√3
     

問1 ||= 2, ||= 5 で、のなす角が60°のとき、内積 .を求めよ。

  答   = 5

 ■Ⅱ 成分による内積の表示

        …公式2 と表せる。

例2  = (1, 2) , = (3 ,1)のとき、内積 .を求めよ。

       公式2より  = 1×3+2×1 = 5

  内積を使うと、何かと便利です。
  「内積を使うと2つのベクトルのなす角を簡単に求められる」のです。

 ■Ⅲ ベクトルのなす角
     

例3 2つのベクトル=(1,2), =(3,1)のなす角θを求めてみよう。

   公式2と公式1より  =5     ||・||cosθ=5

   例2より = 5 …① 
        
 …②

  公式  から  → 

            0°≦θ≦180°なのでθ=45°

問 2つのベクトル= (3,0) , = (1,√3) のなす角θを求めなさい。p60

      θ=60°

 ■Ⅳ 内積の性質
    ベクトルの垂直条件
       ≠0 ≠0のとき、 ⇆    =0 … 公式

       
 公式よりcos90°= 0 より
           =0 となります。

例 =(2 , 1) と =(x , 4) が垂直になるようにxの値を求めてみよう。

 解説  =0より
       2x+ 4= 0 x=-2


問1 =(2 ,3) と =(−6 , x) が垂直になるようにxの値を求めてみよう。p61

    =0より
     =−12+ 3x= 0 x=4

問2 =(√3 , 1) に垂直で、大きさが4であるベクトルを求めなさい。p61

 解説  求めるベクトルを (x,y) とする。    =0
   は垂直なので √3x+ y =0…①
    ||=4 だから x
2+y2=42 …② 
    ①よりy=−√3x… ①′
    ②に代入 
2(−√3x)2=42
 2+3x2=16  4x2=16 x=±2
     x=2のとき、 ①′に代入して y=−2√3
     同様に、x=−2のときy=2√3 よって答 (2,−2√3(−2,2√3)

内積の性質 p62

  [内積の演算法則]
   
kは実数 
     
①の式は同じく ++=|+| 
             +2+2=|+2|


   [ベクトルの大きさと内積]

    


来週 1/19
   以下が成り立つ。証明してみよう。
     ||2=||2+2+||2 

     ()・()

例題1 ||=3,=-2のとき ・(−3)の値を求めよう。

  上の公式③より ・(−3)・(3) …①
  公式①より=||
 よって①の式は   ||-3 
   9-3×(-2)=15(答)


◎例題2 ||=2,||=3,=-1のとき |+2|の値を求めよ。p63

  |+2|2(+2)・(+2)=・(+2)+2・(+2)
  
・(2)+(2)
  
||
2
+4+4||2 =4+4×(−1)+4×9=36
   |+2| ≧0だから |+2|=6

■ベクトルの応用



[内分点の位置ベクトル]

 

             
 


 [外分点の位置ベクトル]



             
 



■ベクトルの図形への応用
 位置ベクトルとは原点Oと点Pを結んだベクトルのことで、点Pが原点に対して
どんな位置にあるかをベクトルで表したもの。

問 ABCの辺BC,CAを2:3に内分する点をそれぞれD,Eとし、△ABCの重心をGとするとき、次のベクトルを  で表せ。

  (1)    (2)     (3)
 
 

解説
 三角形△ABCのときは原点が基準点になくても良いので、
点Aを基準点にしよう

(1) 点Dは辺BCを2:3に内分する点だから
     
   →  →  →
(2) AD+DE=AE

    
(3)
      




ーーー 
作業中 ---
          

 


 問 上の例題の4点ABCDについて、次の()に適する実数を求めなさい。
    (1)  (2)  (3)  

■ベクトルの図形への応用
     



第3章 確率分布と統計的な推測数列