2012年 武蔵野テンカラ会 釣行記 NO9

5時30分を過ぎるとさすがに渓の風もひんやりとして来た。水面も木立の陰が黒く映し出され毛ばりが見えにくくなって行く。谷間はいっきに夕闇へと向かっている様である。やがて山道から魚の泳いでいる姿が確認出来た大淵に到達した。いよいよ待望のライズが始まるのだろうか・・・私達は岩に腰をおろしてしばらく待つ事にした。時計は6時を過ぎている。しかし水面は何の変化もない・・・東北の木戸川で見たあの狂った様なライズはもっと暗くなってからだった。だが、我々は山道を帰らなければならない・・・これ以上は待てずに釣ることにしたが、毛ばりはまったく所在がわからない。手を軽くあおりながら流しているといきなりガツンと来た!こんなに暗い水面の毛ばりをこのヤマメはどうして見えたのだろうか?驚きと感動の一瞬だった。

山女魚止メまで歩く予定の私達だったが、先ほどの大淵で見た魚達に魅惑されてしまった様である。あっさりと変更してかなり手前で渓に降りてしまった。大きなトチの木を目標に慎重に降りると目の前に良淵がある。まずは試し釣り・・・と私が毛ばりを飛ばすといきなりバシャっと来た。小型ながら綺麗な岩魚である。おお・・・今日は幸先が良いね!これからの釣りに期待を持たせる一匹だった・・・この辺りはK沢ではまだ下流域であり多くの釣り人が足を運んでいる。ここで岩魚が釣れるとは以外だが、岩魚でもヤマメでもいい・・・とにかくこの時間に釣れた事に意義がある。これから先には待望のライズも見られるだろう、ふたりの釣りテンポはどんどん速くなってゆく。時計を見るとまだ午後4時を回ったばかり、6月ともなると日が長い。周囲の木々もまだ日中の明るさを保っている。夕マズメはまだまだ先の様だ。岩魚はポツリポツリと釣れるが小型だった。この渓は中流域にはヤマメが棲息している筈だが、まったく姿を見せない・・・釣友も順調に釣りあげているがヤマメは一匹もいない様子。この中流域には数回釣りに来ているが、毛ばりにはほとんど反応を示さなかった。しかし今日はめずらしく釣果がある。やはり日中よりは魚の警戒心も薄らぐ様だ・・・しかし、何故か小型のみであった。

夕暮れの渓にライズは・・・

神流川支流沢中流域へ向かう

当日は快晴で少々暑い位の状況だ。午後7時までに帰還の予定なのでザックの中身はペットボトルと急な冷え込み対策のジャンバーのみ。寝不足な早朝出発とは違って身体がかなり軽い。こんな爽快な気持ちで山道に踏み入るのは久しぶりである。午後3時頃というと、いつもなら疲れた身体を引きずりながら帰還がほとんど・・・こうして山道に入るのは本当に珍しい事だった。山道の入り口には狩り用に飼育している犬達が私達を待っていた。この犬達はさかんに吠える。川を隔てて繋がれているので噛みつかれる事はないが、さすがは猟犬だ。吠えたてるその顔の恐ろしい事・・・私達は魚影があっても釣らずに40分ほど山女魚止メ滝まで歩く事にしていた。良く整備された山道は快適だった。15分ほど行くと最初の大淵に出会う。通り越して見下ろすと数匹の魚が泳いでいた。それもなかなかの良型だ!今までこの大淵で魚影を見た事はなかった。きっと漁協で放流をしたのだろう・・・まだ午後3時15分、夕マズメにはほど遠くライズする気配はなかった。

沢源流釣行時の帰路、中流域のでたくさんの魚を発見した。なにも苦労をして源流まで行かなくてもこの辺でも楽しめるではないか・・・バシャバシャ始まるライズの光景・・・こんな考えが頭の中をよぎってからその事が忘れられなくなっていた。いつもは午後4時前後に山道を下っている・・・そうだ!あの時間帯に釣り上がったらきっと面白い釣りが出来そうだ。思い立ったら吉日、さっそく釣友に電話して見ると彼は快く承知してくれて6月5日午後3時に現地集合となった。

6月5日

それからは小型ながらヤマメが釣れ出した。今までまったく姿を見せなかったヤマメがどうしてなのだろうか・・・6時30分が過ぎると手元すら見えない状態になり、納竿する事となった。K沢で初めての夕暮れ釣りの体験をしたが薄れゆく遠い山々と、刻々と変わって行く渓相の中に浸っての釣りは楽しいなかにも身が引きしまる緊張感があった。幻想のなかに身を置く様な、あの夕マズメのライズには残念ながら出会う事はなかったが、私には忘れられない釣行の一つとなるだろう・・・ヘッドランプを照らしながらの帰り道で何故ヤマメが釣れなかったのか、岩魚が小型だけだったのかが判明した。山道に通じる登り口に数分前に歩いたと思われる釣り人の足跡がはっきりとついていた。その足跡は私達を里に道案内をするかのごとく、延々と続いているのだった。やはり同じ様な事を考える釣り人がいるものだ・・・私達は苦笑をしながらその足跡に従った。
                                                                           渓忠記

 渓忠 ゲスト

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