2012年 武蔵野テンカラ会 釣行記 NO3

伝承毛ばりの渓英さんにお任せ

天気は相変わらず良く、すぐ下に流れるN沢せせらぎが聞こえる。小春日和の中での会話は時間が過ぎるのも忘れてしまう、食事後渓川さんは小沢の堰堤を釣り、渓英さんと私は上流へと向かう・・・に降りるには駐車したすぐ傍に細い道があり、その道を下り始めた時、此処までには見る事が出来なかった光景が真下の大きな淵にあった・・・良型ヤマメが数匹、上流を向きながらゆうゆうと泳いでいるのだ!この場面は伝承毛ばりの渓英さんにお任せすることにした。

指を入れて計ると2〜3度C位

へっぴり腰でようやく到達

神流川支流 N沢

しばらく続いた浅瀬が終わり、下流域の様な渓相になった途端に今度は渓英さんの大きな声が聞こえた、上流を見ると先ほどと同じ様に竿を高々と上げている・・・今度は先ほどのヤマメとは比べ様もない良型である。リリースする前に記念にとカメラを向けたが、すこしサビが残っている惚れ惚れする魚体である。流石は渓英さん、最後を締めるにふさわしい素晴らしいヤマメだった。ここで納竿、帰路は辿って来たをそのまま小沢との合流地点まで下った・・・。今回の釣りは貧果だったが、早春は生命のいぶきが感じられ、この自然の中に浸っての釣りは、まさに至福のひとときだった。全部で75枚の写真をこの後、整理してデジブックに残したいと思っている。

                                                                                渓忠記

早春は楽しさいっぱい!

興奮度は極限まで達していた

渓英さんは静かに下流に降り、背を低くしながらそっと近づく。ヤマメ達は渓英さんの気配を感じる事も無く、上流から流れて来る餌をしきりに待っている様子だ。固唾をのんで見守る私には、そっと落とされる毛ばりにヤマメ達が我先にと突進して来るものと思われた・・・しかし、期待に反して渓英さんの伝承毛ばりを見向きもしない・・・何度流しても反応のない魚にねばっても無駄である。渓英さんはさっさと諦めて上流へと向かった。よし、それでは私の逆さ毛ばりで挑戦してみよう・・・私も渓英さんが降りたルートを使いに立った。だが、結果は同じだった。誘いをかけても振り向きすらしてくれない。すると上流から渓英さんの声が聞こえた。見ると片手を高々と上げている!そのラインの先には待望のヤマメが暴れている・・・急いで竿をたたんで駆け寄ると小ぶりではあるが立派なヤマメであった。まもなく堰堤から戻った渓川さんは小さいながら2匹のヤマメを釣ったとの事、これでまだボーズなのは私だけとなった・・・小沢との合流地点から先も良い渓相が続き、いかにも魚が居着きそうな淵が連なっている。だが、渓相に反して魚の反応はない。しばらく進むと大きな堰堤が現れる。ここは渓川さんにお任せで右岸を巻いて堰堤上に出る。そこからは浅い瀬が続き、小さな淵も現れるが魚影は見られない・・・足元の小砂利を踏みしめるとザクっと音を発する。この音だけでも淵にいる魚は散ってしまいそうである。堰堤から上がって来た渓川さんも加わり更に釣り上がるとまたしても大きな堰堤が現れた。たいした深さはないが落ち込みの下に大物が潜んでいるかも知れい・・・渓川さんが竿を出すのを確認した渓英さんは堰堤上へと右岸を登って行った。

二俣が終わると渓は再び一つになる。二人で交互に釣り上がるもまったく魚が出る気配はない・・・しかしながら渓相は抜群だ。適当に高度を上げながら流れるN沢は釣果を抜きにして快適な釣りが出来る。今は時期的に早過ぎる様だがシーズンになれば良型の岩魚、ヤマメが釣れた実績もあるである。本日は思いがけなく好天気、寒いどころか上着を脱ぎたくような暖かさの中での釣りは、釣れても釣れなくても楽しい・・・後から追い付いて来た渓川さんも加わり、まるで漫才でも始まった様な賑やかさ・・・今日は釣りよりも沢歩きの足慣らしです、と云う渓川さんの言葉にしきりに頷く私でした・・・

釣果を求めずのんびり旅を・・・

私は一息をつきながら渓川さんの堰堤釣りを見学する事にしたが、カメラを取り出す為に下を向いていた時の事である。突然、渓川さんがウオ〜ともギャ〜とも聞こえる言葉を発しながら私の方に走って来るではないか・・・これはきっとでも出たのだろう・・・冬眠を破られたが怒って襲って来たのだ。私は思わず逃げ腰になってしまった・・・ところが渓川さんの話を聞くとではなくて一安心、尺を越える岩魚が掛かったので私に写真を撮ってもらおうと声を掛ける為に、振りむいた途端にはずれてしまったとの事、渓川さんの興奮度は極限まで達していた・・・よほど悔しかったのだろう、それからは堰堤上に出ても竿をザックにしまい込んだままだった・・・

1時間ほど釣り上がるも釣果なし・・・少し気持ちが緩んで来た時であった。1mほどの先にある岩に飛び移ろうとした途端、脚が滑って背中から水中に落ちてしまった。急いで立ちあがろうとしたがどうした事か腕も脚も力が入らずにただ水中でもがくだけ、やっと起き上ったが下着まで水が浸水したらしい。下腹部が途端に冷たくなって来た・・・ここで一つだけ幸いしたのは、私が最後尾だった為に2人にはこのみっともない姿を気付かれなかった事だった。何食わぬ顔をして渓英さんに近づくと、一度車まで下って更に上流に行こうとの提案があった。先ほどのドブン・・ですっかり釣り意欲を無くしていた私は即時に承諾した・・・上流に向かって走ると左岸より小沢が入る先より県道は大きく右に曲がりから離れてしまう。その手前の空き地に車を停めて昼食時間とする・・・

釣りよりも沢歩きの足慣らし

この辺は山の北側で多少の残雪があるが、遡行には差し支えはない。ただ、渓には木の枝が被さる様に覆っている場所が多くありテンカラ竿を振るのには頭上の注意が必要である。渓川さんは少し下流にある淵を狙う為に下って行ったので渓英さんと私は上流へと向かうことにする。渓はすぐ二俣に分かれており、渓英さんは左岸沿いを私が右岸沿いをそれぞれ釣り始めた。右岸沿いの方は水量が少なく頭上には枝が蔓延っているので横からの振り込みとなる。水は透き通ってじつに綺麗だ。指を入れて計ると2〜3度C位だろう。毛ばりには難しい条件だが釣果を期待しない今回は竿が振れるだけで満足である・・・久しぶりの小渓での釣りはそうとうに勘が鈍っている様だ。狙った箇所よりかなり離れて毛ばりが落ちた。もちろん、反応はない・・・釣れない時にはやたらと他人様の釣りが気になる。渓英さんは・・・と見るとやはり苦戦をしている様子だ。私の方を見て両手で×印を作っている。それを見て内心ほっとした気持ちになる私は、何と心の狭い奴でしょう。思わず我と我が心に苦笑いをしてしまった・・・

まだ渓には残雪がある今日この頃、釣果を求めない釣行だった。N沢の下流域には残雪がなく思ったより風も暖かい・・・私達は左岸よりの県道上野小海線を少し走ることにした。北側の山肌にはまだ多少雪が残るが日当たりの良い場所には木々もしっかりとつぼみをつけていて、このN沢にも確かな春のいぶきが感じられる・・・人家の間を縫うように続く道を過ぎた所に広い駐車スペースがあり、私達はそこに車を停めた。車を降りると軽やかな風が頬を抜けて、なにやら懐かしい土のにおいが周りに漂っている・・・寒さ除けの防寒着を用意して来たがどうやら必要がなさそうだ。この駐車場の少し先の杉林の中にに降りる道がある。今年初めての急坂下りに、僅かな距離ではあるが身体がついて行かず周りの小枝につかまりながらへっぴり腰でようやく到達した。

3月16日

渓忠  渓英  渓川