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 2011年 武蔵野テンカラ会 No5

神流川支流

涼しさ、静けさを求めてあの

7月13日

渓川 渓忠

O沢の大滝は出会いから少し上流にある。途中の小淵でチビ岩魚と遊びながら進むと目の前に現れる。水量はさほどではないが、落差があり素晴らしい美観だ。その大淵は深さもあり大物の気配がする。渓川さんが右岸寄りを、私が左岸寄りを、と二人で竿をだす。何度も何度も毛ばりを打ち込んで上がって来たのは22cmほどの岩魚一匹だったが、丸々と太って綺麗な魚体に満足であった。その後、滝上でも竿を出したが、釣れたのはチビ岩魚だけ!林道が前方に見えた所で納竿となった。

素晴らしいO沢の大滝・・・

滝の上は流れが二つに分かれたり、合流したりする。少し落差があり淵にはいかにも岩魚が居そうな場所を過ぎるとO沢との合流地点だ。今日はここからO沢を辿って林道に出る計画だったが、まだ11時を過ぎたばかりなので更に上流へと釣り上がる事とする。合流地点には古い倒木がありそれを越えると大きな淵が連続して現れる。それを二人で交互に攻めるがここも反応なし・・・しかしながら周囲を見渡すと両岸より岩肌がせまり、その岸壁にしがみつく様に白い花が咲いている・・・まるで前人未踏の世界に紛れ込んだ様な錯覚すらおぼえる。魚は釣れなくてもいい・・・この大自然の中に我が身をおけるだけで充分満足である。次の滝までの距離は僅かであった。大きな倒木を乗り越えると両岸がいっきに狭まり堂々たる滝が中央に現れた。ここも渓川さんに任せて、私は滝上へ出るルートを探していた。だが、この滝は今までの様な高巻きは出来そうもない。右岸は絶壁、左岸はというと所々に足場があるがとても利用出来そうもない危険個所の連続だった。その時に遠い昔の記憶がよみがえって来た、まだ源流志向に燃えていた30代の事だった。この滝の岩肌はしぶきに濡れて滑りやすいが、水面より1mほど上部に僅かな足場がある、私が胸まで浸かってその真下まで行き、同行の渓山さんが私の肩そして頭を踏み台にしてよじ登った事を思い出した。しかしながら現在ではそこまでして滝上を目指す釣り人は少ないだろう。上流を狙うとすれば右岸を大きく高巻くしかない様だ。ただ、私は単独釣行でもこの上流へ行っている。どうしてこの難所を越えたか・・・まるで記憶がない・・・上流では面白い様に良型岩魚が釣れた事だけ鮮明に覚えている。ここまで釣り上がった釣り人のほとんどが、この滝で引き返しているのだろう。この渓を充分に熟知した釣り人だけが滝上を釣ると言う事だろうか。私達もここで引き返してO沢へと向かうことにした。

間もなくO沢との合流地点・・・

ゆっくりと朝食をとり、再び上流をめざして竿を振るが魚影がない。いかにも大物が潜んでいそうなポイントが次々と現れる・・・しかしながら・・・たまに釣れるのは手のひらサイズだ。渓川さんが逆さ毛ばりに替えた途端、良型が掛かった・・・あ、あ、あ、残念ながら合わせが弱かった様だ。水面近くまで来て外れてしまった。それからは二人ともまったく魚の反応がない。次に私達を待ち構えていたのは釣り初めて二つ目の大淵だった。この淵は右岸側に落ち込みがあり、左岸寄りが好ポイントとなっている。この淵は渓川さんが挑戦したが当たり無しだった。左岸のガレ場を慎重に巻いて滝上に出ると、しばらくは平坦な流れが続く・・・相変わらず反応はない・・・その先では、谷が狭まって深山の雰囲気が満ちあふれ良淵が続く。そこで釣れたのはやはり20cm前後・・・首を傾げるばかりだ。大岩の前後に淵があり釣り場には事欠かない。倒木の下へも懸命に毛ばりを流すが岩魚の気配は感じられないのだ。二人で交互に釣り上がる事40分、三つ目の滝が現れる。深い淵を抱えた立派な滝である。しかし此処の魚も留守の様だ、この滝も左岸に踏み跡があり高巻く事となる。

二つ目の滝は左岸のガレ場を巻く

下流はザラ瀬が多かったが、このあたりは大岩が連なり深山の雰囲気が漂っている。そして倒木の下からは魚影が走る・・・気取られない様に静かに近づいたつもりでも、サっと深場に逃げる。この渓の岩魚はスレていない筈だが、非常に神経質な動きをする。やはり先行者のせいだろうか?しかし不思議な事に淵にはクモの巣が掛かっている箇所が多く、先行者が此処を釣った足跡が全くないのだった。たまに20cm前後の岩魚が釣れるが、この渓相からしたら尺近い岩魚がいてもおかしくない。一休みをして遅い朝食をとる事にした、平らな石を探して腰をおろすと気持ちが落ち着き、大自然の空気を胸いっぱい吸い込める。長い間釣り上がればさすがに汗が出る、だが渓の風はすずしい・・・世間の猛暑とはまったく無縁の世界である。魚は釣れなくてもいい、元気な身体で此処にいるだけで充分幸せだった。

深山の雰囲気・・・だが魚の反応はない・・・

淵を過ぎると渓は大きく右に曲がる。倒木を乗り越えて進むと絶好のポイントが現れた。頭の上には枝があるがサイドからなら毛ばりを送り込める・・・毛ばりを落としてすぐバシャっと来た!竿を横に倒しながら引き寄せると手のひらにも満たない岩魚であった。渓川さん、釣れましたよ!私はハリスを手繰り寄せながら渓川さんに声を掛けたが、目前の毛ばりに神経を集中させている為だろう、私の声は聞こえない様子だった。そっと手放すとユラユラと深場に消えて行った・・・この渓、最大の大淵は間もなく現れた。下流から遡上する岩魚、ヤマメは必ずこの淵に留まる筈である。渓川さんが左岸寄りを、私は右岸の溜まりと何度も毛ばりをとばした。しかし、期待に反して反応はなかった。この淵を越えるには右岸の踏み跡を辿ると簡単に出られるが、岩場をへつる箇所は増水時には足場が水没して渡れない・・・今日は減水気味、難なく上流へと向かう事が出来た。

やっと姿を見せてくれた岩魚だったが・・・

流れ込みを過ぎてすぐに大淵が連なるポイントが現れる。頭上にはブナ、ナラの木々が枝を張り、暑い日差しを遮っていて早朝という事もあり周囲は薄暗い。岩肌には緑の苔が蔓延り足を置くとつるりと滑る、それを濡らしながら流れる水は冷たく透明である。下の淵で渓川さんが数回毛ばりを打つが反応はない。私もその上の淵で同じ様に数回逆さ毛ばりを流すが魚が出てくる様子はない・・・この様な良淵は餌釣り師が充分に攻め続けた所。同じ様に毛ばりで狙ってもなかなか釣れないだろう。諦めて上流へと向かう、この渓の特徴は所々に倒木が横たわっている事だ、しかし遡行を妨げるほどでもない。

苔蒸す岩肌・・・透明な水の流れ・・・

40分ほどで目的の渓に到達した。水温は10度ほどだが、川面を吹き抜ける風は涼しく感じられる。この時期にしては減水ぎみでテンカラ向きの状況だ。私達はしばらく竿を出さずに歩く事にした。河原の石は朝露に濡れており先行者の足跡は不明であった。この辺りは浅瀬が続き小ヤマメが走る事が多いところだ。しかし、水中を見ながら歩いたが小ヤマメは見当たらない。先行者が散らしてしまったのか、それともヤマメがいないのか。釣れなくてもいい、この渓を遡行したかった・・・という渓川さん、私も同様の考えである。7分ほど歩くと左岸より小沢が流れ込んで来る、私達はここから竿を出す事にした。

渓は減水気味・・・先行者は・・・

車を降りたら目の前に黒いワゴン車が停まっていた。車中をのぞいて見ると白いクーラーボックスがある。やはり先行者の車であった・・・急ぎ身支度を整えて我々も渓に向かった、時計は午前6時を指している、以前に来た時には5時に既に目的の渓へと歩き初めていた。待ち合わせの時間がすこし遅かった様だ・・・今日は猛暑との事だが、歩きながら受ける風はじつにすがすがしい。前回釣行の黒部ダムの話をしながらゆっくりと歩く・・・先行者がいる以上、慌てて行っても仕様がない。少しでも時間を空けた方が良さそうであった。