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雨の中の下山

渓英さんのテントでゆっくり眠らせてもらった。雨の音、川の流れの音がものすごい!外も明るくなっていたのだが・・・テントを出たらびしょびしょは覚悟だ!顔を出して本流を見ると茶色くなった水がもの凄い勢いで流れている!時計を見ると4時少し過ぎ・・・渓英さんも音の気が付き起き上った。「直ぐ撤収しよう!1時間後にここをスタート!」お蔭さまで私も調子を戻し自分のテントへ潜り込んだ。テント内は殺虫剤の匂いが・・・タオルを口に巻いて荷物をザックに詰め込む。テント内にも雨が染み込み、脱ぎ捨ててあった衣類はどれもびしょびしょ!ぐいぐいとテント内の物を詰め込み、レインウエアを着こんでテントを畳み込む。夕食の食べ残しは穴を掘り埋め、食器類はそのままでザックの上へ押し込んだ・・・そうとうな重さだ!
あとは一気に下山。森へ入ると幾分雨が弱まったような感じになる。しかし川は濁流・・・マス止めの滝の上の人は・・・無事を祈るばかりだった!角楢小屋も無人で小屋内部を覗き込む。「お〜!快適そう!次回はここで!」角楢橋橋を慎重に渡る。下の川は大増水の濁流!ここに落ちれば一気に流されるであろう!橋を渡り切る時、岸辺の大岩裏のプールに魚の群遊を発見!下に降りてやるか・・どうするか・・!雨も先ほどより小雨なので、少々やってみる?と渓英さん。すぐに竿を出せる正渓さんに釣ってもらうことにした。
河原に降りて慎重にポイントに毛バリを打ち込んだ。毛バリは金玉毛バリ!2,3投目!「きたきた!」しかし・・・合わせられないようだ!この後何度も毛バリを追うのだが、15分程度格闘し一気に下山した。この雨で皆早く山から下りて来たのだろうか・・・駐車場の車が少なくなっている。釣りのグループも我々の後を追って下山。角楢小屋の近くでテントを張っていたとのことだ!そしてこんな雨のなかで山に向かう人も!女性もいた!こんな天気で山に登って楽しかった〜なんて!言うのだろうか?一体何のため・・・駐車場で渓英さんが用意してくれていたノンアルコールビールで乾杯!火照った身体に旨かったが・・一気に身体が冷えた。途中、道の駅で温泉に入り、やっぱりラーメンを探して食べて早めの帰京。釣りは1日だけであったが、絶対忘れない思いで深い釣行をすることが出来た。
渓英さん、正渓さん!付き合ってくれてありがとうございます。
また行きましょう!桃源郷を目指して!

滝の上は桃源郷か?

一旦竿をたたみ巻き道を探す。ルートらしきものはいくつか肉眼で見えるが、渓英さんを考慮して一番楽なルートを探す・・・しかしどこもけっこう急な斜面を登るようだ。すこし下流に下がり、人が踏み込んだ形跡があるところに取りついた。2段8メートルを下流から取りついたので、小枝頼りに急な斜面を登って行くが距離がある。滝方面へトラバースしながら進むと広場になっていた。道らしきものが山へ続くが登山道は付いていないはず・・・先を進んだが道ではなかった。よく目を凝らしてみれば、わずかながら踏み後がある。先に進むと頂でここから直下に降りるしかない。登りより急な斜面だが小枝をロープ代わりにしながら下降開始。かなり汗をかいた。下降途中に上流にテントを発見、河原ではフライを降っている人もいる。我々には気が付いてないようだ。
高巻きを終えた着地点に雪渓が解けた水が流れていた。少々早めの昼食にする。今回はお約束の「冷麦」。雪解け水で締めたこしがある麺と、冷たい水でツユを割って食べる冷麦は、火照った身体に心地よい。腹も好いていたのかアッという間に平らげた。
フライマンにひと事言って先を進む。渓相は下流と同じゴーロ状。少々河原が開け瀬も多くなるが、ポイントはいっぱいだ。雑誌に書かれていた通りになるのか・・・皆よいポイントで粘る。正渓氏が大きな声で一匹上げたと言っている!まずまずのサイズだ。川が分流して別れて釣り上がる。分流の本流への流れ込みがちょうど小さな落ち込みを造っていた。少々重めの茶色系の伝承毛バリを落ち込みの白アワに入れ流れに任せる。この動作を2回繰り返した時、フロロカーボンの先に付けたオレンジ色の目印の糸がよれた.軽く合わせると手元にあの独特なブルブルが・・・竿先も曲がり結構な大きさだ!自分のほうへ取り込む最中魚が落ちた・・・残念!針の軸が太いのでもう少し大きな合わせが必要なようだ。先行している渓英さんもオレンジ色の斑点が見事な良型を釣り上げた。続いて岸寄りにある大きな岩陰・・・毛バリの胴を赤のワイヤーだけで巻き、ソフトハックルを軽めに巻いた軸が細めのものに変えて打つ!流れがほぼないので毛バリがゆっくり底へ流れ落ちる。水も透明度があり沈んで行く毛バリを目で追う。黒い影が動いた!ガツン!かなりの大きさのようだ!竿先も大きく曲がる。バタバタと水面を叩きながら手元まで引き寄せると、9寸以上の真ん丸と太った綺麗なイワナだ!

テン場まで

角楢小屋の前にあるテーブルは食材で散らかっていた。イワナの刺身、天ぷらの食べ残し・・・釣り人の先客が居た。まだ小屋の中で寝ているようで、玄関前には道具が干してある。小屋の中がどうなっているか興味あったが、帰りに見ようと先を急いだ。ここから大玉沢出合まで40分、登山道も先ほどと様子を変えて細くなっていく。急斜面の山肌に付けられた登山道で人ひとりの道幅になった。渓も深くなり、下の方からかすかに川の流れが聞こえる。はじめて訪れるテン場・・・だんだん心細くなる。こんなに高低差があるところに三人分のスペースを確保できる広場があるのか?テン場があっても本流まで降りるのに一苦労?幾筋もの沢が登山道を横切り本流へと流れ込む。さっきの沢が大玉沢か?まだ先だろう?あの尾根の向う側か?・・・誰もが不安になり、登山道が急に登り始めた時「あれ吊り橋だね?」「沢の音が聞こえる!」「下に降りる道ありますよ!」「本流見えますよ!」「あった!あった!ここがテン場!」

三つの吊り橋

テン場とする大玉沢出合までは大朝日岳へと続く登山道がしっかり付けられている。地図上では休憩なしで約90分。休みながらゆっくり行っても2時間ほどの行程であろう。年長者の渓英さんのペースに従うため、彼を先頭に出発。駐車場から一旦河原に降りる。目の前の吊り橋、大石橋を渡って今回の沢旅が始まった。目的地まではこのような吊り橋を三つ通過する。大石橋、白布橋、角楢橋。どの橋も手製の吊り橋で太いワイヤーでぶら下がっているだけなので、少々注意が必要だ。最初の大石橋は高度もなく、足元もしっかりした板で出来ているので恐怖心はないが、柵のワイヤーが所々ゆるんでいるため、手だけでバランスを取りながら行くと身体が少々揺らつく。橋を渡りブナ林の登山道を進んでいく。道はアップダウンも然程なく、落ち葉で出来た腐葉土が丁度よいクッションになってくれて心地よい。幹が太いブナが多く、樹齢300年以上と言われるものも珍しくないようだ。昔からマタギ、イワナ釣りが頻繁に入っていた道でもありブナの幹にはナタ目が多い。大石橋から15分ほどで白布橋を渡る。白布橋はやや高度があがるが、平水時は下に設置されている潜み橋なるコンクリート製の堰をピョンピョンと渡れるようになっている。我々は橋を選んだが、この橋は距離が長いためか、ワイヤーがぶら下がっている状態で吊り橋らしさが一番あった。足元はしっかりとした工事現場の足場となる鉄板が引いてあり、手元のワイヤーも頼りある。狭いためにリュックが時々ワイヤーのささくれに引っかかる。
これを渡ると一気に森が深くなる。川との落差も増して渓らしくなり、ブナの幹と幹の隙間に時々渓が見えイワナ釣りに来た我々の心が躍る。暫く歩き細い流れの支流白布沢を渡り広場で休憩とする。夕飯時に天ぷらを考えているために食材確保と辺りを見渡すが、ありそうなウド、コシアブラなど見当たらなかった。これより20分ほどで角楢橋を渡る。高度恐怖症の人にはこの橋が一番尻込みするだろうか。今までの吊り橋の中で一番高度があり、足元は杉の皮を剥いた細い丸太が一本ぶら下がっている。もちろん手元にワイヤーロープがあるが腰の位置と低いためにバランスを崩せば・・・落下!しかし両岸から頑丈なロープで引っ張られ、横にユラユラという揺れ方はせず、進む度に体重で上下に揺れる。リズムにのって一気に渡った。対岸が角楢沢との出合いであり、この上の小高い場所に角楢小屋がある。

 2010年 武蔵野テンカラ会 No7-2

楽しみの天ぷらは・・・

テン場へは1時間半で到着出来た。マス止めの滝上流の釣り人も更に一泊するようでそのまま設置されていた。雨がぽつりぽつりと降り始めたが、テン場は大きなブナに囲まれており、枝がタープ変わりで気にならない。着替えを済ませてそれぞれテン場の仕事に取り掛かる。正渓さんは薪集め、渓英さんは焚き火、私は少々早めの夕食準備。今夜は塩チャンコ鍋と天ぷらだ!とりあえずは塩チャンコ鍋でゆっくりと腹を膨らませて、出来たてのアツアツの天ぷらで酒を飲む・・・という計画。陽が高いが出来上がった塩チャンコ鍋で腹を作った。腹が膨れたら昼寝?夕寝だ!それぞれテントに潜り込んだ。釣りに出掛ける前にテントの入口を完全に塞いでいなかったので虫が多く入り込んでいた。外には蚊取り線香をして、テントに殺虫剤を多めに撒いた。寝不足と疲れでぐっすり寝てしまったようだ。寝ている最中やたらと怖い夢を見た。目覚めると汗がぐっしょり、そして頭が痛くてしかたがない、脂汗が額をじわり〜〜!
ここから私のパニック症状が始まった。殺虫剤の中毒症状!そして寝不足、疲れ、緊張・・・自分でも半分程度覚えているが、症状が始まったばかりのことは覚えていない。「やばい!やばい!テント畳んで早く帰ろう!今日中に帰らないとダメだ!」と言って本流へ向かった・・・とか・・・今考えるとかなりやばい状況だった。しかし、渓英さんの持参の薬と暖かい飲み物、皆の介抱で徐々に収まり、殺虫剤臭いテントでなく渓英さんのテントで一緒に眠らせてもらうことにした。雨は本降りとなり、タープ代わりのブナの枝からはボタボタと大粒の水滴がテントに落ちてくる。本流の水の音も大きく、川の石が流される大きな音も聞こえてきた。楽しみの天ぷらは・・・・

マス止めの滝まで

登山道の急斜面を降りると平たい台地が大玉沢の岸に出来ていた。ここをテン場にする人が多そうで、焚き火の後もある。テントを3張りするには十分なスペース、水は沢の水を汲めばよい。タープ代わりに大きなブナの枝が頭上を覆ってくれている。本流はすぐ目の前、増水してもここまでは届きそうにない!
テント設営をしてすぐに本流に降り立つ。素晴らしい流れだ!テンカラをするに気持ち良い渓!思う存分にラインが振れる!大きく開けたゴーロが続き、ポイントは到る所にある。陽もすっかり高くなり燦々と渓に注いでいる。気温も寒くもなく、暑くもなく気持ちよい!3人あまり距離を空けないで、交互に進んでいく。水は雪代が出ているようで水温も低い。しかしイワナ釣りとしては絶好の条件。辺りは人の雰囲気もないのだが・・・
よいポイントが続くのだが、魚の影も見えない。太い流れの中を正渓氏は真ん中まで行き対岸の際をずーと狙いながら進んでいる。私と渓英さんは岸から狙える範囲で竿を降る。魚は出ないがうっとりするようなポイントが続くので集中力は落ちない。次なるポイントに期待を持ちながら前進。砂地に2人程度の新しい足跡があった。やはり先に人がいるようである。この辺りは全て狙われたのか・・・。対岸を狙う正渓氏が「出た!」と声を上げ見事な一匹目を釣り上げた。「マニアックなポイントが好きなんですよ!」と。やはり先行者がやっていないポイントを狙わざるを得ないようである。
日差しも強く、それに従うように雪代が増えてきたようだ。しかしこれだけの川幅なので増水という感じは全くない。釣り始めてから90分程でマス止の滝に着いた。ここはテンカラでは探りきれない。この滝は2段8メートルで左岸から高巻くことになる。雑誌によればこれ以上から型がよくなると記載されているのだが・・・

朝日連峰 それぞれの荒川

幸渓編

6月26日〜27日

幸渓 渓英 正渓

雪塊ゴロゴロ

 その後も皆飽きない程度に荒川イワナの強い引きを味わった。大きな淵の底にはユラユラと群れる魚体も確認。軽めの金玉を付けた毛バリで底いっぱいに流し込むと立て続けに良型が出てくる。魚の反応が良くなると急に冷たい空気が渓に流れ込んでくる。それも上流のほうから・・・右岸からは鍋倉沢が出合う。早期に雪渓で埋め尽くされているこの沢の写真を雑誌で見た。沢を通過し右に大きく流れがかわるとスノーブリッジが現れた。とても冷たい空気だ。水も冷水。両岸絶壁の通らずの始まりだ。ここの通過方法も教えてもらっていたが、その取り付きが雪に覆われてしまっている。越すには更に岩盤の上にルートを探すしかないのだが・・・
スノーブリッジの向う側には雪渓が崩れた雪塊がゴロゴロと川を埋め尽くしているようである。時間的にここまで・・・空にも鉛色の雲が・・・今回はここで終了とする。スノーブリッジの上を見るとカモシカノの屍がある。この絶壁から落ちたらコンクリートの上に落ちたも同然だろう。おかず用にイワナをいただくことにした。腹を裂いていると同じ場所にハラワタがいっぱい。前日のもののようだ。相当な数があった。皆ここで引き上げているようだが・・・この上に桃源郷が・・・あるのだろうか?

釣りか!登山か?山菜か?

当日19:00に私の車で正渓氏と出発、30分後に渓英氏をピックアップして関越道に入る。今回は行程が長いので3人で交代に運転。カーナビの到着予定時間は02:30となっている。関越トンネルを抜け長岡から北上して日本海東北道の荒川胎内ICで降車、1時間ほどで小国町の市街に到着出来た。そこからは真っ暗な道を行き止まりまで突き進み、40分ほどで車止めに到着。ここが朝日連峰の山々へ続く登山口となっている。やはり人気がある渓のようで、周りには既に数台の車が駐車してある。福島ナンバーと現地ナンバーの車両が・・・車内に人影も・・・釣りか?登山か?山菜採りか?
狭い車内の中3人で仮眠としたいところだが、窮屈な体勢でただただ目を閉じて朝を待つだけ・・・たまに目を開けると徐々に外が白々としてきた。この時期は夜明けも早い。隣の車から人が出てきてガタガタとやり始めた・・釣り人だった!渓英さんがオシッコついでに話かけている。現地の人のようで日帰りで支沢を釣ると言っていた。流石地元!ヘッドランプを頼りにして、まだ暗い山道を進んで行った。これを機に次々と出発して行く皆慣れた場所のようだ。我々もそれでは!と、睡眠不足の身体に鞭打って準備を始める。出発する頃はすでに陽も高くなり木々の緑と川を綺麗に照らしはじめていた。

動機

シーズン初め正渓氏と今シーズンの釣行先を話していた。ここ数年間で釣行先が定着してしまい、新しい渓へ行ってない。シーズン中に1つでもよいので新しい渓へ出掛けよう!という話が持ち上がった。新しい渓と行っても、なにも秘境を探すわけではない。渓流釣りで有名な河川は山ほどある。しかしながらついついメンバーの誰かが情報を持ち、安心して手軽に行ける渓を選びがちである。年と伴に気力・体力が加速的に低下して行く!思い立ったが吉日とばかり、幾つかの名立たる源流を候補地に挙げた。当初は三面川の支流である末沢川の源流部へ山越ルートで行こうという計画であったが、鞍部からの下降ルートが定かでないということ、渓英さんにはちょい辛いかな〜といことで、末沢川に沿うように延びる荒川を計画するに至った。
目的地が定まれば、次は情報収集!釣り雑誌、渓流釣りの愛好会などのホームページからルート、テン場、渓の難所などなどを模索するが・・・各々の体力レベル、遡行テクニック、また時期によって情報がまちまちであり情報錯乱、現地に直接聞くことにした。現地を管理する方にメールで連絡、ありがたいことに即丁寧なアドバイスをいただくことが出来た。

曖昧な目的地

荒川は当日の天候次第で水量が極端に変化し、奥が深い渓なので水量に常に注意を払い、もし増水した場合は小尾根に避難すること。また大玉沢出合からの遡行ルートは、やはり技量によるのでどこまで行くことが出来るのか一概には言えないが、小帯、大帯沢までなら我々レベルで行けるであろうとのことだ。しかしながら今年はまだ上流まで足を運んでいないので、雪渓の状態が今どうなっているか定かでない。沢登りの三つ道具は必ず携行、またクマのテリトリーなのでこの時期は子連れ熊に注意して欲しいとの・・・・
現地からの情報なので説得力があるが・・・雪渓の状態は・・・知りたいところだった。雑誌とネット、現地からの情報を統合して地図と睨めっこしながらイメージする・・・ゴルジュマークが多く、渓が狭まればこの時期は雪渓があることを前提に考えた。高巻きが多いことは必至!ロープワークは必要なようだ。雑誌で書かれていた桃源郷の曲滝まで行きたいところだが、とりあえず魚止めの滝を目指して行けるところまで・・・という曖昧な目的地を定めた。

「朝日連峰 それぞれの荒川〜渓英編〜」