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 武蔵野テンカラ会 2009年 釣行記 No8



 奥利根 幽の沢釣行

  残雪の渓をゆったりと釣りあがる・・・・天候にめぐまれた一日・・・・・

  渓忠 渓英 渓山

  6月4日(木)                        文責  渓忠

魚は釣れなかったが、満たされた一日だった・・・・・・

結局、今回の釣行は渓山さんが釣り上げた2匹だけとなった・・・・・・・昨年8月下旬に来た時には驚くほどヤマメの稚魚が泳いでいた 、岩魚も数匹釣れて満足の一日を過す事が出来た・・・・・今回の釣行はあの時の 夢よもう一度 を期待しての計画だったがやはり訪れる時期が早過ぎた様だ、毛ばりを浮かべたり、沈めてみたり、と手を変え、品を変えて挑戦したが、渓山さん以外は奥利根岩魚の引きを味わう事ができなかった・・・・・・・しかしながら、魚がいない渓では絶対ない・・・・良い日和を選んで再度訪れて見たい、山菜は思わぬ収穫だった・・・・遡行を始めた辺りではコゴミも既に巨大に成長をしており盛期は平年よりも10日ほど早かった様に思われ、我々も山菜採りは諦めていたのだが、 残雪が現れるとまだ若々しい食べ頃のウド、コゴミ、フキに出会う事が出来た・・・・・私は今まで奥利根に来て山菜を採った事がなかった・・・・・山菜採りに興味がないだけの理由だったが、今回、渓山さんに促されて初めてウドを採って見た、採り始めるとこれが何と!楽しいことか・・・・・・・・全員、雪渓近くに到達すると岩魚はそっちのけで急斜面を登り、柔らかそうなウド、コゴミを探しまくる・・・・・・・ただ釣り上がるだけではなく、こんな余禄があるのも源流釣行の楽しみの一つだろう・・・・・・夢中で釣り上がった渓も帰りとなると距離が長く感じる・・・・・これも身体に残った疲労のせいだろうかしかし、今日一日を何事もなく無事に過ごせた幸せで、全員身体も心も充分に満ち足りた気分である、休憩時間を充分にとり、ゆったりと釣り上がった幽の沢・・・・・・・・楽しませてくれた渓に感謝しながら、午後2時にはボート上の人となった・・・・・・・・・              

渓山さんが消えた・・・・と思ったら・・・・あれは熊か人間か・・・・

雪渓を越えると再び釣りを開始、私と渓英さんが交互に釣り上がり、既に奥利根岩魚の引きを味わった渓山さんが最後を釣る事になった、少し釣りあがって後方を見ると、どうしたのだろうか渓山さんの姿が消えていたのだ、先ほどまで確かに後から竿を振っていた筈、もしや転倒でもして立てないのだろうか、二人立ち止まって下流を見つめるが、やはり人影がない・・・・・これは一大事、ちょっと引き返してみようか、と決めたその時、右岸の山膚に何やらうごめく物体が・・・・・その動く物体は熊ではなく、まぎれもない人間・・・・・・・な、なんと渓山さんではないか!呆れている我々の前に戻った渓山さんはニコニコ顔、両手にいっぱいのウドを抱えていた、下流で見た山菜は育ち過ぎでとても持ち帰れる状態ではなかったが、雪渓近くではまだこれからだ、柔らかなウドやコゴミが処々に生えている・・・・

本日は釣りに来たのか、それとも山菜採りか・・・・・・

渓山さんの採ったウドはとてもいい香りがする、ゴマ和えにしたらたまらなく美味しい、そうだ!私達もお土産に少し採ろう・・・・・・魚が釣れ続けていたらこんな発想はなかった事だろう、それからの3名は釣りを兼ねた山菜採りに没頭する・・・・・・ゴミ沢出会いまでの間、毛ばりに魚の反応はなかった、あの雪渓を過ぎてから二箇所ほど同じ規模の雪渓が現れたが、容易に雪上を通過する事が出来た、その都度、時間をかけて山菜採りをした為、私達のザックは岩魚ならず山ウド、フキ、コゴミでいっぱい、ジャンボを釣る・・・と会員に告げて勇んで釣行に及んだ筈・・・・・こんな事でいいのだろうか、多少の後ろめたさを感じた一瞬だった。

遡行は増水で厳しく、期待した魚達の姿は・・・・・・

まず、渓英さんが先行をして、続いて渓山さん・・・私は右岸の小沢流れ込みまで竿を出さずにデジカメを構えてカメラマンに徹する事とする、増水の為に流れに足をとられる箇所もあり、ポイントも定まらず先行の渓英さんは苦戦をしている様子、続く渓山さんのオモリを付けた仕掛けにも反応がない・・・・・平水ならば砂地が広がる箇所も今回はすっぽりと水の中、昨年群泳していたヤマメの姿もまったく見かけないネオプレーンの靴下を履かない渓英さんはかなり足許が冷たい様子、どうも、この渓はまだ時期早々らしい・・・・しかし、二人ともめげずに竿を振り続ける・・・・そんな川の状態だが、周囲の景色はすばらしい・・・・やわらかな日差しに浮びあがった木々の葉は緑眩しく、両岸近くにはコゴミが絨毯を敷いた様に生い茂り、春の香りがプンプン漂う・・・・・今年は暖冬だったのだろう、山菜の成長も平年よりもかなり早い様だ・・・・・

ボートはゆっくりと湖面を進む・・・・早朝の山々は白い霧に包まれているが、雲の間に青空が広がり心配された天候もどうやら大丈夫の様だ。昨晩はダムサイトでの泊りとなり、久しぶりの楽しいひと時を過す事が出来た、話題豊富なお二人との談笑は深夜まで続いたが、さわやかな早朝の風が眠さを感じさせない、午前6時、10分ほどで幽の沢のバックウオーターに到着、ボートをしっかりと確保して左岸の山道に入った・・・・・昨晩の集中豪雨で木の葉がぬれて冷たい、前方をふさぐ小枝を手で払うとパラパラと滴が落ちる・・・・・腰を低くして3分ほど歩いて本流に出たが予想通りに水量は多い、笹にごりの流れが両岸いっぱいに迫っている、水温を計るとちょうど6度でテンカラには少々厳しい状況の様だ・・・・・・我々はすぐに竿を出さずに遡行をする事にした、6月初旬の幽の沢は流れも激しく底石も滑りやすい・・・・・・まだ渓歩きに慣れない身体を持て余しながら左岸から流れ込むカワゴ沢まで来た、合流地点に淵があり魚影を探したが、まったく見かけられない・・・・・・この先は渓も狭まり落差のある流れとなり、やがて山膚が遠のくと平坦となる、カワゴ沢を過ぎてから右岸より小沢が(沢名不明)流れ込む箇所までは釣り上がって1時間ほど、もうすこし歩きましょうか・・・全員一致でさらに歩き始めると、10分ほどで残雪に出くわした、僅かの距離だが両岸から凍った雪がせり出している・・・・・・・・我々はその残雪を越えたところから釣りあがる事にした、

魚止めの滝を目指して釣りに専念・・・・・・果たして。

ゴミ沢合流地点のすぐ上に細長いプールと落差のある落ち込みがある、この幽の沢で唯一と言える難所はその左岸の岩場だ、 遡行者の行く手を阻む様にせり出しており その岩場を越えなければ先に進めない、此処は僅かな手掛かりを頼りに私が乗り越え、渓英さん持参のベルトでお二人を引き上げて完了・・・・・ここから魚止めまでは落差のある流れが続き、山岳渓流釣りの雰囲気がある、我々は山菜採りを終了して釣りに専念する事にした・・・・・・・・9時半を過ぎたばかりなのに もう雪解けが始まったらしい、 水が多少濁った様に思われ、僅かだが水量も増してきた・・・・・・それにしても魚の出が悪すぎる、いつもならば必ず岩魚が居ついている絶好のポイントにも魚影すら見られない、この幽の沢では過去にこんな現象は度々あった、前の週にバンバン釣れたので友人を誘って来て見ると、今度はまったく釣れない・・・・・・・・本日は運悪くそんな日に当たってしまったらしい、この数年間でここの渓相も随分と変わってしまった・・・・・数箇所あった大淵も砂で埋まり 倒木もかなり見受けられる・・・・・入渓する都度、必ずと云っていいほどジャンボ岩魚との壮烈なやりとりが体験出来たものだが、それも遠い昔話になってしまった様だ、魚止めまでもう少しという所で やっと二匹目の岩魚が掛ってくれた・・・・・・・しかしながら、掛けた釣り人はまたしても渓山さん、 羨ましがる二人を尻目にじっくり魚体を観察するまでもなくあっさりと流れに戻してしまった、これも釣れない私達に対する最大の配慮?・・・・・魚止めは渓がやや平坦になったすぐ先になる・・・・その滝を越えるとアイノ沢長倉沢、と分かれて幽の沢山へと高度を上げていく・・・・・・数年前に滝を越えてさらに釣り上がった事があったが、魚影は確認出来なかった・・・・・・・・・・最後の望みであった魚止めは残念ながら雪渓で閉ざされていた、雪崩れとなって山膚から落ち込んだ雪量は凄まじい、魚止め滝は完全に埋まってしまった様だった、

渓山さんに待望の岩魚が・・・・・しかし、その後は・・・・・

魚の反応もないまま、最初の目標の右岸支流に近づいた所で渓山さんに待望の一匹が来た!駆け寄って見ると23センチほどの岩魚だ、奥利根の岩魚は芸術品の様に綺麗・・・・水の中の岩魚は結構暴れる・・・・・・・・・・・私は静止するのが待ちきれずにシャッターを切った。カワゴ沢よりここまで到達するのに要した時間は50分、時計は午前7時を指している、この支流合流地点よりさらに上流にあるゴミ沢までは距離にしておよそ1,2キロ、ここからはゆっくりと釣り上がる事とする・・・・・・・・谷はひらけているが両岸から大木の枝がかぶさり少し薄暗いところもある、しかしそれらの枝は頭上高くにあり毛ばりを引っ掛ける心配はない、私も竿を出して渓英さんの後を追う、だがテンポの良い釣り上がりになかなか追いつけない、健康に不安があるとは聞いていたが、それを払拭する様な快調さであった、やがて前方に渓を完全に覆った雪渓が現れた、ここは左岸寄りに雪上を渡れる・・・・・・・時間はたっぷりとある、我々はゆっくりと休息をする事となった、これまでの釣果はあの渓山さんの一匹だけだが、奥利根の大自然のなかで釣りが出来るだけで充分幸せの気分に浸れる・・・・空からは恵みの太陽、そして周囲には山菜の香り・・・・・じつに至福なひとときであった。