【緒言】今回我々は,脾動静脈瘻により門脈圧亢進症を来たし,塞栓術により軽快したと考えられる1例を経験したので,若干の考察を加えて報告する。【症例】79歳,男性【主訴】腹部膨満感【現病歴】1992年,C型慢性肝炎に対しインターフェロン(IFN)治療しSustained viral response(SVR)となり,以後肝機能は正常化していた。2013年4月,検診の上部消化管内視鏡 (EGD)にて食道胃静脈瘤を認め当科紹介受診。その後,5月末より急激な腹水増悪にて入院。【既往歴】1992年:急性胆嚢炎で胆嚢摘出術,2009年:総胆管結石で内視鏡的砕石術(EST),2010年:感染性心内膜炎で弁置換術。【身体所見】血圧:138/97mmHg,脈拍:75bpm,腹水多量を認め,肝は触知しない。圧痛なし。【検査所見】WBC:3730/μl,RBC:335万/μl,Hb:10.4g/dl,PLT:5.7万/μl, Alb:3.4g/dl, T-Bil: 1.0mg/dl, BUN:40.0mg/dl,Cre:2.16mg/dl,PT%:80.6%,NH3:144μg/dl,HCV PCR:陰性,HBV RCR:陰性,ANA:320倍,AMA M2:陰性,腹水性状:漏出性。感染徴候なし。EGD:食道胃静脈瘤Ls,F2,Cb,RC+,Lg-cf RC-。US:門脈血栓なし,求肝性の門脈血流。Dynamic CT:肝萎縮あり,脾臓は腫大し,脾動脈・脾静脈は拡張,動脈相で脾静脈・門脈が動脈と同レベルに濃染されていた。【臨床経過】C型慢性肝炎は完治しており,CT所見より脾門部動静脈瘻による門脈圧亢進を疑った。食道静脈瘤に対し内視鏡的結紮術施行し,慢性腎不全/難治性腹水に対しては血液透析を導入した。腹部血管造影で拡張した脾動脈・脾静脈にはっきりした側副血行路を認め、動静脈瘻と判断し,コイル塞栓術を施行した。合併症なく経過良好で,自覚症状は改善,現在経過観察中である。【結語】原因不明の門脈圧亢進症の際は,動静脈瘻の有無も考慮すべきと考える