日本消化器内視鏡学会甲信越支部

4.化学療法抵抗性の多発骨転移を伴い、腹膜播種をきたした細胆管細胞癌の一例

新潟大学大学院医歯学総合研究科 消化器内科
佐野 知江、渡辺 ゆかり、木村 成宏、上村 博輝、山本 幹、兼藤 努、本田 穣、塩路 和彦、川合 弘一、野本 実、青柳 豊
新潟大学大学院医歯学総合研究科 消化器・一般外科
廣瀬 雄己、若井 俊文
新潟大学大学院医歯学総合研究科 分子・診断病理学
渡辺 佳緒里、味岡 洋一

症例は、53歳、男性。HBVキャリアにて外来経過観察中、約1年半前にダイナミックCTで肝S4に35mm大の腫瘤を認めた。腫瘤辺縁部は動脈相で高吸収、平衡相で等吸収、中心部の造影効果は乏しく、平衡相でごく軽度増強された。EOB-MRIでは、多結節癒合状の形態で、T1WI低信号、T2WI高信号、拡散強調像高信号、ダイナミックCTと同様の血行動態を示し、肝細胞相では低吸収だった。CTAPでは同部の欠損域内に肝静脈が貫通しており、CTHAでは早期相から後期相まで不均一な濃染が持続し、corona様濃染は認めなかった。AFP 3.0 ng/ml、DCP 20 mAU/ml、CEA 1.5 ng/ml、CA19-9 11 U/mlと腫瘍マーカーの上昇は認めず、肝予備能はChild-Pugh Aだった。細胆管細胞癌(CoCC)を最も強く疑い、肝切除を予定していたが、術前MRI、CTにて多発性胸腰椎転移を指摘され、全身化学療法の方針となった。化学療法前に肝腫瘍生検を施行し、CoCCと診断した。約1年間、レジメンを変更しながら全身化学療法を行い(GEM、TS-1、TS-1+CDDP、ソラフェニブ)、肝内病巣に著変を認めなかったが、多発骨転移巣は増大傾向を示し、腰痛が出現、増悪したため、約1か月間、化学療法を中止し骨転移に対し緩和的放射線照射を行った。その後、疼痛は軽快したが、原発巣の増大と多発肝内転移による閉塞性黄疸が出現した。内視鏡的胆管ステント留置術を行ったが黄疸は改善せず、リンパ節転移、腹膜播種、癌性腹膜炎による大量腹水、肝不全、腎機能障害も加わり、急速に全身状態が悪化し死亡した。

 CoCCは比較的稀な疾患であり、その進展形式や予後については明らかになっていない。本症例は、化学療法により肝内病巣の進展は制御されていたが、多発骨転移巣は増大傾向を示し、終末期には腹膜播種をきたし、腫瘍発見から約1年半で死亡した。CoCCの進展形式や予後に関して示唆に富む症例と考え、病理解剖結果、文献的考察を加え報告する。