太古の魚サラトガ
サラトガは3800〜5500万年前から存在していたとされ、現在に至るまで生き抜いてきた尊敬すべきサバイバー。日本ではアロワナと呼ぶ方がピンと来ると思う。その美しさと希少性からバブル期には100万円近くの価格で売られていたと聞いたことがある。
サラトガの性質は主にストラクチャーになわばりを持ち、侵入するものには例え同種であっても激しい攻撃性を示す。釣人の間では素晴らしいファイティングと攻撃性からビーストと例えられる。上向きの目と口はトップ(水面)のモノを対象としていると思われ、トップ好きの釣人やフライフィシャーマンのこの上ないターゲットと言える。特にフライではティンバー(立木)の中でのキャスティング、アキュラシー、ファイティング面などからチャレンジ性が強い。
野性的な美しさとファイティングに魅了され、活気に満ち溢れた緑と湖底から立つ精気の無いティンバーに囲まれた湖にサラトガに出会いに向かった。
ゴムボートにエレキという頼りない装備で、雑誌やDVDで得た知識を基に湖を攻めてみる。サラトガの絶好のポイントと思われるところまではボートランプから約8kmくらいだろうか、エレキでは厳しい距離だ。この状況での最善策が行ける範囲のポイントをじっくり攻めることだった。釣り始めて相棒の一投目で44cmのグッドコンディションのオージーバスが釣れ、続くこと相棒の二投目、44cmの全く同じサイズ、コンディションのオージーバスが釣れた。この奇跡的な釣果がこの湖は魚影が濃くて、サラトガも簡単に釣れるという甘い誤解を招くことになる。
夕マズメにエレキで行ける範囲のティンバーエリアへ行く、減水のせいでかなりの数のティンバーがむき出しになっている。雑誌では澄んでいたはずの水も濁っていて、水面下に隠れたティンバーの確認が困難な状況。ゴムボートに穴が開くおそれとエレキのプロペラ破損が心配だったが、サラトガの誘惑に負けティンバーの中に攻め入る。どのティンバーもいいポイントに思える。しかも、魚影は濃いはずだと勝手に思い込んでいるため深く考えずにフライをティンバーの際に落とすことのみに集中した。日は暮れ、暗くなるまで粘ったが魚信は全く無かった。それでも、魚影は濃いはずだから明日は釣れると自分に言い聞かせ目を閉じた。
朝4時半から釣りを開始。自分はまだ一匹も釣ってないので、ルアーでオージーバスを狙う。すぐ釣れるはずだったのになかなか釣れず、7時を過ぎた頃にようやく34cmのオージーバスが釣れた。ティンバーエリアは遠いので近いところでサラトガを狙って岸際にキャストを繰り返すが、浮かんだフライに近づく魚影もアタリも無く午前終了。
午後からはティンバーエリアに移動し本格的にサラトガを狙ってみるが湖は静まり返ったままだった。帰り際にルアーで30cm、37cmのバスを追加したが虚しい気持ちになった。
釣り終わってゴムボートを片付けている時に、偶然にもオーストラリアでフィッシングガイドをされているK氏達と出会う。K氏に挨拶と釣りの様子を尋ねると、キャビンでのディナーに招待していただいた。その日は自分の誕生日であった為、相棒に尋ねるとOKがでたので、釣ったオージーバスを持ってディナーに参加した。
キャビンでは楽しい時間を過ごせた。もちろん話題は釣り。K氏はサラトガの習性と釣り方を説明してくれた。それが自分のサラトガ釣りのボヤケテいる部分をはっきりとさせてくれた気がした。俄然やる気と自信がみなぎってきて、お礼をいいキャビンを後にした。
日が昇り始める午前4時半から釣り始める。今日の午前で今回の釣りは終了する、最後のチャンス。さっそくティンバーに向かうが攻めたことの無いポイントでデカイボイルを発見し、ついつい寄り道してしまう。アタリは無く時は過ぎる、時計を見ればすでに6時。
急いでティンバーエリアに移動する。K氏が話していたことを思い出しながら、ティンバーを一つ一つ攻める。かなり奥のティンバーまで来た時、ライズを発見。慎重に近づき、フライをポイントに入れる。一投目反応なし。二投目同じく。三投目少し離れたところに入れ、浮かべて待つこと3秒後まるでトラウトがメイフライを吸い込むようなライズがフライを捕らえた。DVDで見たルアーを激しくひったくるアタリと全く違うため、戸惑いと驚き混じりのアワセをする。ノッタと思った次の瞬間、最初の首振りであっけなくフライは外れた。一瞬の出来事にドキドキと失望を同時に味わう。
サラトガの口が堅いことは重々承知していたはずなのに、アワセが鈍ったことに愕然とする。しかし、これでフライに出ることはわかった。バラシタ所から少し離れて似たようなポイントにフライを入れる。フライ(ポッパースタイル)を一回潜らせて浮かんだ直後、またさっきと同じライズがフライを捕らえた。今度は強めにアワセる。魚の重みを感じると同時に、魚が入り組んだティンバーに向かう。ティンバー際の釣りであるのとあまりの速さに対応できず、半分くらい入られてしまった・・・15lbティペットを頼りに無理やり引きずりだすことに成功したのも束の間、魚体を全て空中にさらけ出すほどの凄いジャンプ!! 一瞬ではあったが、初めて見るサラトガの魚体を確認すると心臓は高鳴り、ゴムボートに立つ足は感覚を失った。ジャンプジャンプのファイトを繰り返し、隙あらばティンバーに潜ろうとする。6番ロッドは弓形になり幾度のジャンプと突っ込みを耐えやっとランディング。ネットにその美しい魚体が入ると、体の力は抜け、手が震えた。ファイトはまさしくビーストと呼ぶに相応しく、その魚体は透き通るピンク色の斑点が均等に散りばめられ、まるで鎧のような大きく硬いウロコに覆われ、魚類とは思えない爬虫類のような腹部、顔つきは獰猛さにも似た野性味が溢れていた。
太古の魚・サラトガ、数千万年もの時を生き抜いてきた偉大な魚を手にした時、トラウトを最初に釣った時のような高揚感と感動を覚えた。初めての釣行でサラトガ手にすることが出来たのは、K氏の話を聞いたことが大きいと思う。K氏の寛大さに感謝し、湖を後にした。End
さらに詳細は彼のブログへ
http://blog.livedoor.jp/lovefish_aus/?blog_id=1462909