税関 01年12月3日クラストチャーチ入国にて
シンガポール経由の飛行機は、無事ニュージーランド南島のクラストチャーチに着陸し、
いよいよニュージーランドの旅が始まった。
ひと味違う今回のニュージーの旅にどうなることか、はりきっていた。
入国審査を終わらせ、流れ出てきた荷物を回収し、
税関へ向かう途中のことだった。
かわいらしいビーグル犬が、おっかなそうなおばさんに連れられて、
次から次にお客さんの荷物を嗅ぎ回っていた。
「麻薬を見つける犬なんだな」と感心して見ていると、俺らの方へとやって来た。
「麻薬なんて持っていませんよ」と見ていると、
広兄の荷物を必死に嗅いでいる。
何か臭いものが入っているのか?
おっかなそうなおばさんが広兄に質問してきた。
英語のない広兄はおばさんの顔を眺めてぼけーっとしている。
「果物を持っていないか?」と広兄に訳してあげた。
「持ってたっけ?」と疑りながらリュックの中を探してみる広兄。
すると、機内ででたリンゴが一個でてきた。
「果物はニュージーランドに持ち込めません!」とおばさんに取り上げられてしまった。
ビーグル犬はごほうびに食べ物をもらい、広兄はリンゴを取り上げられてしまった。
私は賢い犬に感心した。
その場はそれで終わり、税関へと向かった。
ニュージーランドの税関は少し面倒くさい。
農業国のニュージーランドは、
テント、ブーツ、ウエーダーなどの土や泥がつきやすいものには厳しいチェックがはいる。
もちろんそれを知ってて、きれいに洗ってきてはいるけど、申告しなければいけない。
「申告するものがあるライン」に列んだ。
このラインはリュックを開けられ、一つ一つ丹念に調べられる。
きれいにたたんだテントや寝袋でさえも丁寧に開けて調べてくれる。
しかも調べる人が2,3人しかいなくてかなりダラダラと待たされる。
これもまあニュージーに入国するためだから仕方ないと、税関はのんびりやる。
うちらは特別荷物が多く後回しにされているのか、永遠と待たされた。
細かくチェックされている人を見ながら待っていると、
ようやくまじめそうなお兄さんが、うちらをテーブルへと呼んだ。
大きなテーブルまで行き、大きなリュックを乗せようとすると、
釣り竿のケースを見つけたお兄さんが、
「フライフィシングだね、どんな竿を使うんだい?」と聞いてきた。
突然の質問だったけど、「セージの6番ロッドです」と私。
釣り竿のケースを見ただけで、フライフィシングだとわかるくらいだから、
よほどの釣り好きだとわかった。
「日本の釣りはどうなんだ?トラウトは釣れるのか?」と聞いてきた。
「ニジマスやブラウントラウト、それから在来のマスがいます」と私。
次第に釣りの話がエスカレートしていき、
日本から持ってきた写真を大きなテーブルの上に広げて、
「これは今年の春釣った魚だ」とか「これはオショロコマだ」とか、
「ニュージーの良い川はどこだ」などと釣りの話に花が咲いていた。
ある程度話がまとまったところで、
「Have a good fishing!」
となってテーブルを後にした。
「あれっ? 税関はなんだったんだ? 」
「釣り人に悪い人はいない」とはよく言ったもんだ。
後は最後のX線を通して外へ、
もう余裕だった。
私の荷物を通し終わり、広兄の荷物が通り抜けたときだった。
さっき犬を連れていたおっかないおばさんがそこにいた。
そして広兄に再び質問をしてきた。
「まだ果物を持っているでしょ」と、ぼけーっとした広兄に訳してあげた。
「うーん、あったっけ?」
心当たりのなさそうな広兄。
仕方なさそうにリュックの中をあさっていると、底の方からミカンが一個でてきた。
来る途中に食べようと、日本から持ってきたミカンだった。
ニュージーランドは果物の持ち込みにもうるさく、
確かに機内で書かされる税関申告書にも、
「果物を持っていますか?」という質問が英語で書かれている。
英語のない広兄は、私の用紙をそのまま写して「No」とチェックしてしまっていた。
しかも税関申告書に偽りを書いて、
それが見つかると罰金として200ドル取られてしまう。
リュックからでてきたミカンに、さすがのおばさんも今度こそは許してくれず、
広兄は200ドルの罰金を払わされてしまった。
結果は「英語を覚えるまではお金がかかる」ということだった。
そしてこの旅どうなることか・・・
02年2月8日 Wanaka より
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