セミの終わった3月

       

最近どうも思うように魚が釣れない。
その理由を考えてみたら、セミがいなくなってしまったからだとわかった。
今までどの川へ行っても、草むらの中で鳴いていたのに、
3月に入るとめっきり姿を消し、静まりかえってしまったのだ。
それにあわせてマスもセミフライに反応しなくなってしまった。
セミがいなくても蜂やカゲロウなんかがたまに流れているものの、
魚がドライフライにあっさりとでてきてくれる季節は終わってしまったようだ。
ドライフライにガッポリと出ない釣りはなかなか難しい。
人間にいじめらつづけ賢くなったせいもあるかもしれない。
見つける魚のほとんどが、水中を流すフライにしか反応してくれない。
しかもなかなかフライを口にしてくれなくて難しい。

空高くウロコ雲が広がったり、冷たく乾いた風が時折吹いては、
色あせ始めた木の葉を揺らす。川に運ばれて流れてゆく葉をみると、なぜか切ない。
山から季節は変わり始めている。
もっと釣りをしたいのに、季節は変わってしまう。
急かされる気持ちと、よく釣った満足感が複雑に頭の中を駈け巡る。
それでも、サンドフライと蚊の猛攻は衰えることなくすさまじい。
魚たちもシーズン中に何人もの釣り人に狙われ賢くなったのものの、
流れの中で餌を待って揺れている。
日中に突然カゲロウのスーパーハッチが始まることもあり、
季節がかわれば、川も魚も変わる。
残るニュージーランド滞在一ヶ月半、どうなることやら・・・
まだ夢の10ポンドが残っている。
明日も一日がんばろう。

02年3月14日Lerry's creekより



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