Greenstone river
グリーンストーン リバー


一枚の写真  



             一枚の写真から始まる

真っ青な空に高い山が列び、クリスタルのように澄んだ水が流れ、
まるで絵はがきのような背景に70pはありそうな、
すばらしいマスとこれ以上は無いという満面の笑みの釣り人が写っている写真。
そんな写真を見たら釣り人なら誰しも、うらやましく思い、
自分もそんな場所で、すばらしい魚を手にして、
美しい写真を撮ってみたいと思うはずである。
ニュージーランドにはそんなすばらしい釣り場が至る所にあり、
でっかいマスが泳いでいる。
英語がふべんな私は、そんな一枚の写真がこれとない情報源で原動力となる。
写真にその川の名前が書いていようものなら、
地図を広げなんとかしてでもその川を見つけ、車を走らせるのはごく自然。
すでに発作は始まっていて、頭の中では自分も70cmのマスを手にして、
ニヤニヤしている。
そんな表面的な写真が、何度私を苦しめ、悩ませ、楽しませてくれたものか・・・

たった一枚の写真を頼りに目指す川は、車で行けるのか、歩いていけるのか、
道があるのかもわからない。滝やゴルジェ(谷が狭まる荒い流れ)に行く手を阻まれ、
上流にたどり着けなかったことも一度や二度じゃない。
行ってみたものの、川が濁っていたり、ひどい雨だったり、先に釣り人が歩いていたり、
釣りをするまでに大きな苦難があったりする。
たとえ釣りができたとして、そこに透き通った水が流れていても、
風で水面は波立ち、光は水面に反射し、
さらに流れは魚を隠し、魚は底石と同化する。
そんな中で魚を見つけるのは、経験、持続的な集中力、根気と運あるのみ。














運良く魚が見つかり、フライを流して「はい、釣れました」
と言うのはニュージーランドだからといっても、日本のそれと変わりはない。
魚を見つけても流れの複雑な場所だったり、
ブッシュがひどくて竿が振れない場所だったり、
風が強かったり、足場が不安定だったりとフライを投げるまでにかなりの邪魔が入る。
そこでもたもたしているうちに、「狙った魚はどこへやら?」ということも少なくない。
なんとかしてフライを魚の方へと投げれたとしても、
フライが魚の真上に落ちて驚いて逃げてしまったり、
フライが飛びすぎてフライラインが魚の上に落ちてしまって、
「はいサヨウナラ」ということがほとんどである。
ラインをうまく操り、自分を邪魔するものを運良くかわし、
魚へと静かに気づかれないようにフライを投げ込む。
しかも目の前には日本ではまずお目にかかれない大きなマスが泳いでいる。
普段の平常心でいられるはずがなく、興奮で体は固くなり、簡単なことすらままならない。

クリアする課題はまだまだある。
フライがうまいこと魚の上に落ちてくれて、ゆっくりと魚に向かってフライが流れていく。
食うか?
そればかりは魚の気分次第で、魚が普段何を食べているかは推測にすぎず、
自分が糸に結んだフライを食べてくれるかは、魚のみ知ることである。
上手く行ったとして、魚がフライに気づき、ゆっくりと浮いてくる。
大きな口を開けて今にもフライを呑み込もうとしている。
そのスローモーションの動きに、思わず「バシッ」とあわせてしまう。
思わず体が反射して、早いアワセを食らわせてしまう。
こんな自分の持つ反射神経に、何度苦い思いをさせられたことか・・・
魚が大きいだけに、ゆっくりと魚の口の動きに合わせてあわさなければ竿は曲がってくれない。
「ゆっくりあわせれば必ず針にかかる」というわけでもないから、
これまた難しく面白い。

うまく針が掛かったら、後は魚の引きをうまくかわしネットに入れる。
といきたいところだけど、60cmを越えるマスはそう簡単に終わらせてくれない。
重さと引きはすばらしいものがあり、ときには沈んだ石や木に潜り込んだり、
速い流れに身をまかせて、一気に走り下ったり、
見事なジャンプでその巨体を空中で踊らせたりと、
針にかけた後のそのパワーにはおそれいる(もちろんやる気のない魚もいる)。
運動会のように魚と一緒に川の中を走り回る覚悟でいないと、
やっとの思いで針にかけた魚にサヨナラされてしまう。





































あとは最後のネットに入れて、「コグラチュレーション」となる。
偶然と根性で手にしたその1尾の重さは、
思い当たる感動の言葉を全て並べてみても表現できるものではなく、
経験した本人のみぞ知る「究極の快感」がそこにあるのである。
「そりゃこんな幸せな顔になるよ」とばかりの魚と一緒の一枚の写真ができあがる。
そしてその写真を見た、釣り人がまた苦い思いを楽しむことになる。

01年12月24日Waiau(TeAnau)より








                            一枚の写真に終わる


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                     いいブラウン発見60p・2.6kg
             グリーンストーンのニジマス58p・2.4kg

         
山道で羊の群れとすれ違う