北のイワナ釣り
産卵遡上の難しさ・・・


この季節、川をのぼるのはサケだけではない。北の大地でたくましく育つアメマスもそのひとつである。アメマスはサケ科イワナ属の魚で、小さいときは川の上流で育ち大きくなると海に下って生活する。海で育ったアメマスたちは、産卵のために上流を目指し群れをなして、川をのぼる。

そんな遡上アメマスを狙って、白糠町を流れる川にアメマス釣りに出かけた。キーンと冷えた朝の空気にはく息が白い。橋の上から川を覗き込むと、橋げたの深みに何尾かのアメマスが群れて泳ぐ様子が見れた。80センチはあろうかという巨大な影は、サケの姿だった。

この時期のアメマスが頻繁に食べているのが、サケの卵イクラである。だからフライフィッシングもこの時期は、イクラに似せたフライを使う。川底を転がすようにイクラフライを流す、アメマスの群れの中を目印が流れる。目印がスーッと沈んだ瞬間、バシッとあわせを決める。

アメマスというと、ひょろ長くてあまり引きが強くないイメージの魚なのだか、この時期のアメマスは「これがアメマスの引きか?」と思うくらい強烈で、油断すると簡単に流木に潜られ糸を切られてしまう。そんなアメマスの力強い引きに竿は根元から曲がり、右腕はしびれていた。ゆっくりと姿を現したのは62センチのアメマスだった。産卵を控え、口先が曲がったたくましいオスのアメマスだった。

秋の川にはサケやアメマスで賑わい、その魚を食べにヒグマやキツネの足跡が残されていた。北海道だからこそ見れない光景、出会えない魚、アメマスがのぼる川はゆったりと流れていた。

自然の厳しさを物語るような顔つきをした62センチの雄のアメマス。上流から海までを生活圏とするアメマスは、北の大地が産んだ本当の野生魚。ニジマスでもない。ブラウントラウトでもない。これが北海道の自然なのである。

■アクセス:5:00家のドアを開けると、星の美しさに驚かされた。地平線が明るみ始め、下弦の月が細く輝いていた。家を出発し、茶路川に架かる北進橋に着いたのは、6:40頃だった。高速を使えば、20分ほどは節約できるだろうが、往復で高速料金2,200円を節約し、早く起きる。

■状況:北進橋の上から川を見ると、アメマスの姿を確認できた。川幅、5〜10メートル。水深は深いところでも1メートルと、全体的に浅い川で、小さな砂利質の川は、釣り歩くにはとても安全な川だった。アメマスはプールや早瀬の中に群れていて、自分の目を疑るくらい、川底がアメマスで黒く見えるほどの数に驚かされた。 ※写真は、65センチの雌のアメマス、流がぶつかり少し深くなったよどみにいた。

■釣り:フライフィッシングで狙う。6番ロッド、フローティングライン、ティペットは5x、4ポンド程度。インジケータを付け、フライはビーズヘッドニンフかサケの卵のパターン。いずれも、川底を自然に流す釣り。アメマスはどのプールや瀬にもたまっていて、群れの中にフライを流すが、釣れない。産卵遡上体制のアメマスのため、食欲はほとんどゼロ。流れの中で卵の成熟を待っているだけのようで、いるのに釣れない状況。それでも中には、口を使う魚もいるが、ヒレに掛かる場合がほとんど。■釣果:74、65、62センチ、その他10尾程度、アベレージは50〜60センチ。74センチの巨大アメマスは、数いるアメマスの中から一番大きなアメマスを発見し、しつこつネチネチフライを流し、案の定ヒレに引っかかった結果だった。それでもそのすばらしい魚体は、見とれるほどに完璧で、北海道の底力を感じ、心を打たれるばかりだった。 ※写真は、卵をたっぷりと抱えた74センチの雌のアメマス。イタヤカエデの葉が彩りを加えた。 続く・・・
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■まとめ:結局、このアメマスたちを釣る攻略法は見つからず、「いるのに釣れない状況」だった。もともと食い気がないので仕方がないが、残念。それにしても、川にひしめくアメマスの群れとこれほどまでに完璧な体に育つ環境。ここは海外でも管理釣り場でもない。北海道のなんの変哲もない川なのである。北海道の実力には、時に心を打たれるほどの感動に出会うときがある。74センチのアメマスが川に戻っていく姿をみて、いつまでのこんな魚が育つ川でいてほしい。心からそう思うばかりだった。早朝のキーンと冷えた空気は、いつしかポカポカと穏やかな日差しへと変わり、色づいたイタヤカエデの葉が流れ、森全体が秋の空気に包まれていた。 おわり。

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