金山湖 幻の巨大魚を釣る


気温の上昇は川の水を暖め、湖の春は川の流れ込みから始まる。水面が現れるのを待ちわびているのは、私とたくさんの水鳥たちだった。4月12日、金山湖の流れ込みは、釣りをするのには十分にひらいていた。

金山湖は幻のイトウが生息している。1メートルを越す魚もいるという。「もしかしたら」、勝手に期待して、湖に1人、杭のようにたたずんでひたすら竿を振った。4月なのに音をたてて体にあたる雪は、いつしか止み、サングラスをしないと目が開けられないような、穏やかな世界が広がっていた。

40cmほどのアメマスが2尾釣れ、気分を良くして、次のアタリを待った。川の流れは湖へと入り、いい具合にかけあがりを作っていた。釣れそうな雰囲気だった。フライを気持ちよく遠投し、じっくりと沈め、ゆっくりと引きアタリを待った。ゴツッと何かに引っかかったと思うと、それがゆっくりと動き出した。その手ごたえは、根がかりではなく確かに、魚だった。ゆっくりと、ジリジリとリールの糸が出ていく。8番のシューテングヘッドに巻いたバッキングラインがすべて出てしまいそうだった。これ以上走らせるわけには行かない。無理して耐える。8番の竿が力なく曲がるだけで、出て行く糸はとめられなかった。体が緊張し体が震えているとに気付いた。


「イトウだ」しかも、飛び切りに大きなサイズだ。
「頼む、外れないでくれ」


どこまでも広い雪原にぽっかりと口をあけた水面。風のない穏やかな世界なのに、。時間が止まったよう張りつめた空気だった。私とその巨大魚は細い糸でつながっていた。近づいては離れ、を繰り返しながら、ようやく魚が足元まで来たのは15分が経過していた。15分が経過し押さえ込まれるような重い引きに、右手がつらく両手で竿を支えた。魚もだいぶ疲れてきたようで、沖でぽっかりと浮いた。


なにか様子が変だった。


水面からヒレを出して泳ぎ、パタパタと動いている様子が見える。茶色の大きなヒレだった。糸の先に掛かっているその巨大魚の正体はもしかして・・・、ゆっくり足元まで引き寄せ、水面に姿を現した瞬間、巨大なウロコが見えた。


緊張が解け、体の力が抜けた。正体は巨大な鯉だった。こんな寒い季節にもう鯉が動きだしてるとは思わなかった。針は、口ではなく、尾びれに刺さっていた。スレだったのだ。


それにしても驚くほど巨大な姿に、圧倒され、これがイトウだったら・・・。と体の力が抜けるばかりだった。

水面から抱えあげて、氷の上に横たえた巨体は85cm、10kgを越すサイズだった。金山湖の幻の巨大魚との格闘が終わった。

穏やかな午後だった。

チャンチャン
2007年4月12日


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