一面のライズにとりかこまれる幸せ
〜ちょっと飲んでから、川に入ろう〜


そろそろ湖の流れ込みのインレットの氷が解けて、釣りができるだろうとちょっとNとHと私の3人で遠征。スノーシューを履いてインレットに到着。風なく太陽が心地よく、なにはともあれまずビールをプシュッと開ける。気持ちよく体にしみわたってきた頃、Nが双眼鏡で水面を見ながら、「あれライズじゃないの」とつぶやいた。「うそ〜、なわけないだろ」と水面を見ると、流れ込みのあちこちで波紋が見える。でも肉眼では遠く、はっきりしない。双眼鏡を借りて、水面を見ると、ユスリカがあわただしく飛び回り、ポツン、ポツンと水面が盛り上がっては、波紋を作る。「ライズだよ」と3人で驚いて、ビールもってさらに近づく。

「すげぇ」

そこらじゅうに波紋がおこる。インレット一面いたるところで波紋ができて、ライズに取り囲まれた状態だった。

ルアーロッド2本、8番のフライロッドラインはシンキングライン。「こんなときにかぎって、ドライフライの準備をしていない」と思ったら、カバンの中に6番のフローティングラインがあるのを思い出し、無理やり8番ロッドに6番ラインをセットし、さらにルアーロッドにフライラインをセット。NとHがライズに近づいていく。双眼鏡で観戦する私。カポッと水面が盛り上がったあとに、ピロピロと5秒ほど水面細かく揺れ続ける、ちょっとおかしなライズ。おそらく背びれか尾びれの先が水面を揺らしているのだろうと推測。ライズに向かって、フライを投げ続ける2人に一向に魚が掛からない。3人とも飲みかけのビールを置いてまでライズに夢中。さっきまでの余裕はどこへやら・・・。釣り人なんてそんなもんさ〜。それにしてもライズの様子がなんとなくおかしい。

安定しないライズ、なかなかフライにでない、柔らかい川底の感触。
3人ともなんとなく感じ始めていた・・・

「これライズじゃないんじゃない・・・」と、
沈黙を破ったのは、その一言だった。

流心でおこるライズはまぎれもない、落ち葉や木片などの腐食物から出る泡だった。水面を飛び回るユスリカにすっかりだまされた。酔いから覚めた3人は何もなかったように静かに、飲みかけのビールへ戻り、遠くを眺めた。

アルコールの力に頼れば、見えないものも見えてしまい、ワンダーランドへ連れて行ってくれる。そして後に残るのは、沈黙とむなしさのみ・・・。冷えた体を温めるように、背中にあたる太陽が心地よかった。

で、結局、シンキングラインに取替え、インレット周辺を沈めて引っ張った結果、50cmほどのアメマスが申し訳ないていどに相手をしてくれた。

チャンチャン。

春ようらら、まだ遠し・・・

2007年4月4日

        
  
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