北には北の釣りがある
金山湖で幻のイトウを釣る



12月に入ると、一気に冷え込みが厳しくなった。
川も凍り始めた。
先日積もった雪もとけないまま根雪になりそうだった。
それでも暖かい朝や風のない穏やかな日中は、
先日いい思いをした金山湖へと気もちが飛ぶ。

イトウ釣りといえば、春と秋が一般的にベストと言われるシーズン。
春はイトウの産卵期なので、産卵を終えたボロボロのイトウだったり、
産卵前のイトウだったり、
イトウとの勝負はどちらかと言うとあまりフェアではない。
秋のイトウは、それに比べて有り余るパワーとシーズン中釣り人に狙われ続け、賢く手ごわい。
さらに秋のイトウは寒くなればなるほど、活性が上がり、
川やダムが凍る直前まで釣れる。
釣り人ととしては過酷な条件がイトウ釣りのシーズンになる。
まさに北の魚なのだ。

もしかしたら、凍っていないかもしれない、釣りができるかもしれない。
メーターオーバーが・・・。
「もしかしたら」に期待した。
案の定川の流れ込み一帯は真っ白く凍りつき。
「やっぱりだめだったか」と思い、車をダムに沿って進めると、
真っ黒な波立つ水面が表れた。

12月6日考えられるすべての防寒対策で、
ボートを膨らまし湖に漕ぎ出した。
何でここまでして釣りをするのかと思うけど、
風裏に入ってしまえば、けっこうのんびりしてる。
釣れそうな雰囲気が漂っていた。
フライを沈めゆっくりと引く。じっくりと集中する。

風裏で雪が舞い、水面を風が走る。
竿のガイドが凍り、水につけながらフライをゆっくりとリトリーブした。
アメマスを2尾釣り、40cmのイトウを釣り。場所を変えた。

場所を変えてもアメマスが良く釣れ、
アメマス釣りを楽しみながら心の奥で、
もしかしたら巨大なイトウが・・・と思いながらフライを引く。
移動しようと竿を置いて、ボートの重りを上げている時だった。
ジジッというリールの音が響き、竿が水中へと引き込まれそうだった。
慌てて竿を手にとると、重い。
アメマスの引きとは違う、じわっとした重み、寄ってこない。
じりじりと出て行く糸。イトウだ。しかもデカそうだ。

やっぱり金山のイトウは、緊張する。釣り慣れていない釣り場。
どんな化け物が出てくるかわからない深さ。
竿に掛かっている魚がもしかしたら・・・と考えると、
なかなか強引に引けない。
ボートの下にいる魚はいったどんな大きさなのだろうか・・・
いろんなことが頭の中を駆け巡った。とにかく魚を見たい。
それまではバレないでくれ。
黒く棲んだ水の中から、ボワット浮いてきた。
「ウオ−ッ」。いいサイズだった。
でかいことはでかいけど、心臓が止まるほどの大きさじゃなかった。
半分ホッとし、半分なんだ〜。って感じ。

魚の口に手を突っ込んで一気にボートにあげた。
70cmのイトウだった。リリースしてすぐにまたイトウがヒット。
今度のはそれほど大きくなく60cmほどのイトウ。
かなり余裕が出てきて強引に寄せ、
ボートに上げずに針をはずしリリース。

12月の真昼間の出来事である。
もちろん足先は氷のように冷たくなり感覚がない。
ガイドは常に凍り、ボートについた水しぶきは、
バリバリに凍ってしまう。
そんな中黒く棲んだ水の中ではイトウやアメマスが活発に餌を追い、
無謀にも釣り人はそれに熱くなり、寒さを忘れる。
これぞ北の釣りなのである。

もしかしたら・・・。
それだけを信じて氷の世界にボートで繰りだす。
まったくバカなヤロウと思うのだけど、
そこにナチュラルハイテンションの最高の世界が待っているのである。
どんなに条件が悪かろうが、歴史に残る超大物っているのは、
そんな最悪のコンディションの中のほんの一瞬のチャンスにめぐりあうものなのである。

金山のイトウ。なかなか面白い。

PS:金山湖は遊漁券が必要。また禁漁区もあるため、釣行前には確認を・・・。詳しくは上富良野役場まで。