| アチェ被災証言 | ||
|---|---|---|
| 語られるアチェ津波被災の真実 | ||
| 証言4「メッカ巡礼を急遽帰国後、目の当たりにした病院の惨劇」 | ||
| (Yulidar et al:43歳女性、9月5日(月):ムラクサ地区(Meuraxa Subdistrict)プスケスマス(Puskesmas)のヘルスセンターにてインタビュー) | ||
|
|
||
|
ヘルスセンターの建物は壊滅していただけでなく、津波が起きる前、60名(歯医者1名、総合医2名、その他看護婦等)いたスタッフのうち、25名が死亡あるいは行方不明となり、35人(歯医者0名、総合医2名)にまで激減していた。バンダ・アチェでは、それまでフェリー乗り場の近くにあった州立ムラクサ病院が最も大きな病院で、それに続くのがザイナルアヴィディン(Zainal Abidin)病院*1であった。彼女が長であったヘルスセンターはそのさらに下部に位置づけられる。本来であれば、被災者は沿岸部に最も近いムクラクサ病院に運ばれるべきだが、津波によって建物が破壊されたため、被災当初はそのほとんどがザイナルアヴィディン病院に搬送された。ムラクサ病院は、治療費が無料*2であったこともあり、地域住民のほとんどが利用していたが、いまも再開のメドは立っていない。ヘルスセンターでさえ、現在、街の中心に位置する商店街で一店舗を間借りして再開している状態である。 ヘルスセンターには、妊婦と子供のためのポシアンドゥ(Posyandu)と呼ばれる特別なクリニックがある。インドネシアでは、半数以上が20歳前に結婚し、その多くに子供をもっている。25の村から成るムラクサ地区には、津波が起こる前クリニックが31ヵ所あったが、いまでは14ヶ所に激減している。来週中には1ヵ所増え、今後もさらに増加すると予想されているが、その見通しは必ずしも明らかでない。医療および衛生の問題は、海外支援においても最優先事項として取り上げられ、具体的には、@World Vision、AWPI、AIMCという3つの国際的な支援組織が中心となり、とくに5歳以下の子供と妊婦に対するケアが優先されている。 津波後に同ヘルスセンターを訪れている患者の中で、最も多い病気は「肺および呼吸器の疾患(ISPA: upper sespiratory track infection)」で、患者のおよそ50〜60%を占めている。次に多いのが「皮膚感染症(Scabies)」で30〜40%、そしてその次に多いのが「下痢症(Diarrhea)」で10%弱を占めている。この結果から、彼女が緊急の課題として挙げたことは、住環境の改善と下水道の整備、清潔で安全な水の供給である。とくに下水施設の整備は、急務な課題である。それは、津波が起こる以前から深刻な問題であったが、仮設住宅やテントでの暮らしを余儀なくされた被災民の間で、特に下痢症が劇的に増加しているからである。 マラリアについては、津波が起こる前に比べると、現在はそれほど深刻な状況ではないことが明らかとなった。ユリダル医師によれば、それは次のような理由によるものである。第1に、津波の影響でマラリアの主因である蚊の生息環境が大きく失われたということである。第2に、津波の影響で多くの人が亡くなった、あるいは他の地域に避難したために、人口自体が激減したということである。しかし今後、この地に戻ってくる人が増え、雨季が始まると、再びマラリアが蔓延する可能性があることは想像に難くない。現在、同ヘルスセンターには、薬剤(「ARSUCAM」)と診断キットがユネスコや国際NGOから供給されている。しかし、これらの海外から持ち込んだ診断キットについては、まず現地アチェで発病する主要な3種類のマラリアのうち、1種類しか判定できない、そして結果の信頼性が低いという2つの問題点が指摘されている。マラリア対策も被災地の実状に適合したものにすべきで、今後とも蔓延の危険性がある以上、さらに十全な準備をする必要があるだろうというのが、ユリダル医師の結論だった。 *1 民間の病院だが、治療費は安い。 *2 自治体の財政支出で賄われている。 |
||
| 戻る |