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離婚判例全文8−親子関係不存在確認2(最判平成26年7月17日)

(最高裁判所 裁判例情報より)

事件番号:平成24(受)1402
事件名:親子関係不存在確認請求事件
裁判年月日:平成26年7月17日
法廷名:最高裁判所第一小法廷
裁判種別:判決
結果:破棄自判

主文
原判決を破棄し,第1審判決を取り消す。
本件訴えを却下する。
訴訟の総費用は被上告人の負担とする。

理由
上告代理人小林史人の上告受理申立て理由について

本件は,戸籍上上告人の嫡出子とされている被上告人が上告人に対して提起した親子関係不存在の確認の訴えである。

記録によって認められる事実関係の概要等は,次のとおりである。
(1)上告人と甲は,平成11年月日,婚姻の届出をした。
(2)甲は,平成20年頃から乙と交際を始め,性的関係を持つようになった。
しかし,上告人と甲は同居を続け,夫婦の実態が失われることはなかった。
(3)甲は,平成21年月,妊娠したことを知ったが,その子が乙との間の子であると思っていたことから,妊娠したことを上告人に言わなかった。
甲は,同年月日に上告人に黙って病院に行き,同月日に被上告人を出産した。
(4)上告人は,平成21年月日,入院中の甲を探し出した。
上告人が甲に対して被上告人が誰の子であるかを尋ねたところ,甲は,「2,3回しか会ったことのない男の人」などと答えた。
上告人は,同月日,被上告人を上告人と甲の長女とする出生届を提出し,その後,被上告人を自らの子として監護養育した。
(5)上告人と甲は,平成22年月日,被上告人の親権者を甲と定めて協議離婚をした。
甲と被上告人は,現在,乙と共に生活している。
(6)甲は,平成23年6月,被上告人の法定代理人として,本件訴えを提起した。
(7)被上告人側で私的に行ったDNA検査の結果によれば,乙が被上告人の生物学上の父である確率は9.999998%であるとされている。

原審は,次のとおり判断して本件訴えの適法性を肯定し,被上告人の請求を認容すべきものとした。
嫡出推定が排除される場合を妻が夫の子を懐胎する可能性がないことが外観上明白な場合に限定することは,相当でない。民法が婚姻関係にある母が出産した子について父子関係を争うことを厳格に制限しようとした趣旨は,家庭内の秘密や平穏 を保護するとともに,平穏な家庭で養育を受けるべき子の利益が不当に害されることを防止することにあると解されるから,このような趣旨が損なわれないような特段の事情が認められ,かつ,生物学上の親子関係の不存在が客観的に明らかな場合においては,嫡出推定が排除されるべきである。上告人と被上告人との間の生物学上の親子関係の不存在は科学的証拠により客観的かつ明白に証明されており,また,上告人と甲は既に離婚して別居し,被上告人が親権者である甲の下で監護されているなどの事情が認められるのであるから,本件においては嫡出推定が排除されると解するのが相当であり,本件訴えは適法というべきである。

しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
民法772条により嫡出の推定を受ける子につきその嫡出であることを否認するためには,夫からの嫡出否認の訴えによるべきものとし,かつ,同訴えにつき1年の出訴期間を定めたことは,身分関係の法的安定を保持する上から合理性を有する ものということができる(最高裁昭和54年(オ)第1331号同55年3月27日第一小法廷判決・裁判集民事129号353頁,最高裁平成8年(オ)第380号同12年3月14日第三小法廷判決・裁判集民事197号375頁参照)。そして,夫と子との間に生物学上の父子関係が認められないことが科学的証拠により明らかであり,かつ,夫と妻が既に離婚して別居し,子が親権者である妻の下で監護されているという事情があっても,子の身分関係の法的安定を保持する必要が当然になくなるものではないから,上記の事情が存在するからといって,同条による嫡出の推定が及ばなくなるものとはいえず,親子関係不存在確認の訴えをもって当該父子関係の存否を争うことはできないものと解するのが相当である。
このように解すると,法律上の父子関係が生物学上の父子関係と一致しない場合が生ずることになるが,同条及び774条から778条までの規定はこのような不一致が生ずることをも容認しているものと解される。
もっとも,民法772条2項所定の期間内に妻が出産した子について,妻がその子を懐胎すべき時期に,既に夫婦が事実上の離婚をして夫婦の実態が失われ,又は遠隔地に居住して,夫婦間に性的関係を持つ機会がなかったことが明らかであるな どの事情が存在する場合には,上記子は実質的には同条の推定を受けない嫡出子に当たるということができるから,同法774条以下の規定にかかわらず,親子関係不存在確認の訴えをもって夫と上記子との間の父子関係の存否を争うことができると解するのが相当である(最高裁昭和43年(オ)第1184号同44年5月29日第一小法廷判決・民集23巻6号1064頁,最高裁平成7年(オ)第2178号同10年8月31日第二小法廷判決・裁判集民事189号497頁,前掲最高裁平成12年3月14日第三小法廷判決参照)。しかしながら,本件においては,甲が被上告人を懐胎した時期に上記のような事情があったとは認められず,他に本件訴えの適法性を肯定すべき事情も認められない。

以上によれば,本件訴えは不適法なものであるといわざるを得ず,これと異なる原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり,原判決は破棄を免れない。そして,以上に説示したところによれば,第1審判決を取り消し,本件訴えを却下すべきである。
よって,裁判官金築誠志,同白木勇の各反対意見があるほか,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。

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