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◆◆◆メールマガジン国際結婚◆◆◆

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◆第53章 国籍法改正◆

みなさん、こんにちは。行政書士の高坂大樹です。今回は、近々行なわれる国籍法改正について取り上げます。

10月31日の事務次官会議で、日本人男性と外国人女性の間に生まれた子供について、二人が結婚していなくても父親が認知しさえすれば日本国籍を取得できるとする国籍法の改正案が了承されました。

現時点の国籍法(3条1項)では、日本人男性と外国人女性との間に生まれた婚外子で出生後に認知された子供については、両親が結婚していれば日本国籍を取得できるが、結婚していなければ日本国籍を取得できないという取り扱いになっていますが、当メルマガでも何度もお伝えしてきた国籍確認訴訟で、最高裁が6月4日に国籍法が結婚の有無で国籍の取得を区別しているのは不平等であるとして違憲判決を下したことを受けて、国籍法が改正されることになったものです。

ただし、認知偽装が行なわれる可能性があるため、罰則を新設し、虚偽の届出については1年以下の懲役か20万円以下の罰金が科されることになるようです。当然ながら偽装が判明すれば子供の国籍は喪失します。また、今後認知される子供だけではなく、改正前にすでに認知されている子供についても、何年かは遡って(2003年までが有力)国籍取得できることになりそうです。

改正案は11月4日の閣議で正式決定され、同日中に国会に提出されます。平成20年11月1日現在の政局は大変不安定ですが、民主党もこの改正案に関しては賛成するようなので、今国会で成立すると思われます。

また、10月11日の報道によると、自民党法務部会の国籍問題PT(座長・河野太郎衆院議員)では、国籍法が二重国籍を認めていないことについても検討を始めているそうです。これは、ノーベル物理学賞を受賞した南部陽一郎氏が、現在はアメリカ国籍で日本国籍を喪失していた、つまり実は日本人受賞者ではなかったという事態を受けたものです。二重国籍を認めるかどうかについては異論が大きいので、実際のところどうなるかはわかりませんが、問題提起としては興味深いところです。

話は変わりますが、先月は偽装結婚に関する報道が大変目立ちました。国籍法改正にも関連する問題なので、私の目に付いたもの中からいくつかご紹介します。

10月2日に電磁的公正証書原本不実記録・同供用(偽装結婚)の容疑で三重県鈴鹿市の運転手が逮捕されました。運転手は逮捕済みの仲間と共謀してフィリピン人女性の在留資格を得るため、運転手の知人と結婚したように装って、平成18年2月に虚偽の婚姻届を提出したというものです。10月7日には、同じくフィリピン人女性の在留資格を得るため偽装結婚に関わった奈良県の消防組合の課長補佐と会社役員と婚姻届の証人となった同じ消防組合の課長補佐が起訴されています。

10月9日、佐世保市の暴力団組員が、佐世保市のロシア人女性と佐々町の会社員(7日までに逮捕済み)の偽装結婚の証人になったなどとして逮捕されました。10月21日には、近くの長崎市のウクライナ人女性と島原市の日本人男性2人が偽装結婚で逮捕されています。長崎県警は佐世保市の事件との関連の有無なども含めて、詳しく調べています。

10月20日までに、偽の婚姻届を出したなどとして東京都足立区の中国人女性ら3人が逮捕されています。逮捕された中国人女性は、昨年5月、中国人向けのフリーペーパーに「ビザの相談を受ける」などと広告を掲載し、連絡してきた飲食店従業員に偽装結婚を持ちかけ、この従業員になりすまして日本人男性と虚偽の婚姻届を提出したというものです。この結婚で従業員は入管から在留許可を受け、容疑者は報酬として100万円を受け取っていたそうです。

10月27日のニュースによると、別の中国人男性との間にできた男の子に日本国籍を取得させるために日本人男性と偽装結婚したとして、東京都北区の中国人女性が逮捕起訴されているそうです。子供に日本国籍を取得させるという目的の偽装結婚が判明したのは初めてのことです。中国人女性は日本人ブローカーらに約100万円を支払って紹介された男性と結婚し、「子供が日本国籍を取得すれば、日本で働き続けることができると思った」と供述しています。現在、男の子は中国で容疑者の家族に養育されていますが、中国人女性の罪が確定すると日本国籍を失うことになります。中国人女性は結婚当時妊娠8カ月でしたが、本当の父親は不法就労ブローカーとして入管法違反で服役中の中国人で、こちらも日本人女性と偽装結婚していたと言いますから呆れるしかありません。

以上、報道から偽装結婚に関する事件を拾いましたが、摘発された偽装結婚は氷山の一角であり、発覚していない偽装結婚は多数に上るでしょう。なぜ偽装結婚するかと言うと、日本人と結婚すれば「日本人の配偶者等」という在留資格で日本に在留することができ、職業の制限を受けることなく働く(稼ぐ)ことができるためです。しかし、ブローカーに金銭を支払い、結婚相手にも月々支払わなければなりませんし、入管も厳しく監視の目を光らせているので同居を装うなどカモフラージュにも気を配らなければなりません。また、離婚すれば更新はできません。リターンは大きいのですが、リスクも大きいのです。

実は、偽装結婚に比べると、偽装認知は簡単です。結婚と異なり、認知は一回限りで完了するからです。日本人の実子を育てている外国人母は、「定住者」という在留資格を取得することが可能で、「日本人の配偶者等」と同様に職業も制限されません。本メルマガの第49章にも書きましたが、今回の法改正により、子供の「偽装国籍取得」と、日本国籍を取得した子供(実子)を扶養していることを理由にした外国人母の「定住者」の在留資格取得の悪用が増えることが予想されます。家族を装うだけならカモフラージュもそれほど難しくはありませんので、改正後の運用については、国籍取得届の必要書類としてDNA鑑定書を加えるなどの措置が必要でしょう。それは日本人の実子をしっかり認知するという法改正の本来の趣旨からも必要になるものです。

平成20(2008)年11月1日

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