通常サウジでは親族以外の男性と女性が同席することはないのでサウジ在住の20年間私はサウジ人女性と話をしたことがありません。ですから彼女たちが普段何を考えどんな生活をしているのか直接話を聞く機会はありませんでした。ここでの記述は主に私が会社のサウジ人の友達から聞いた話や、家内がサウジ人女性に会った際に聞いた話等も参考にしました。
服装:
サウジの女性は、自分の夫や父親、男兄弟などの親族以外の男性がいる場所では、衣服の上から「アバーヤ」と呼ばれる黒色の長いローブを着用し、「ヒジャブ」という黒いスカーフで髪を覆い、そして、「ニカブ」「ブルカ」と呼ばれる黒い布で顔を覆います。顔全体を隠している人もいれば、目だけ出している人も居ます。町で顔を出して歩いているアラブ人女性はエジプト、シリア、ヨルダン等から来ている人たちです。
アバヤとヒジャブの着用は外国人女性にも義務付けられており、私の家内はアバヤにフード(髪を隠すため)を付けたものを自分で作って着ていました。最初は結構わずらわしいようですが慣れるとアバヤさえ着てしまえば下に何を着ていても分からないので先輩の奥様の中にはパジャマの上にアバヤを着て外出するつわものもおりました。
以前は黒い無地のアバヤだけでしたが最近では花柄の刺繍の入ったカラフルなものも店頭に並ぶようになりました。
リベラルなサウジ女性でも「ニカブ」は別として「ヒジャブ」の着用はイスラム教徒として当然と考えている人が多いようです。以前フランスの学校で教室内での「ヒジャブ」着用禁止令が出たのに対し、イスラム教徒の女性たちが猛反発したことからも分かるように「ヒジャブ」の着用は決して強制でも抑圧でもないようです。
一度家内が結婚式に招待されたときに写真を撮ってきてと、カメラを渡したのですが「あなた写真をご主人に見せるでしょ」と言われて撮らせてもらえませんでした。女性同士の集まりは、それはそれは派手で芸能人顔負けの衣装で踊りまくり「みんなすごい美人であんたなんか見たら卒倒するわよ」と家内に言われました。
制約:
サウジの女性には西側諸国では考えられない色々な制約があり、一部誤解もあるようですが、それが西側の言う「イスラム諸国の女性蔑視や人権侵害」の原因になっています。
サウジでは女性は自動車を運転できません。
旅行も女性独りでは行けませんし、女性の一人歩きも禁止されています。
選挙権もありません。
職業に就くことも原則として出来ないようです(規則がどうなっているかは分かりません)。リヤドでは女性専用の銀行もあるようですが、カフジでは病院と学校以外で働いている女性はいません。
町のレストラン、銀行、役所、スーパーの店員は全て男性です。もちろん私の働いている会社にも女性社員はいません。ただ80年代にダハランのアラムコ社に行った時、欧米人の女性が働いていたのには驚きました。アラムコは治外法権なのかも。
女性は一個人としては認められていないので女性個人の身分証明書やパスポートはなく、夫や父親の身分証明書に写真入で添付されています。私の家内もサウジ国内での身分証明書はなく私の「イカマ」と呼ばれる在住証明書に妻として写真が添付されているだけでした。
皆さんが良く知っている「一夫多妻」の問題もあります。
この様に書くと女性はさぞかし抑え付けられて暮らしていると思われるでしょうが、許される範囲内で明るく、楽しく、力強く生活しているのが実態のようです。
日本人でもイスラムびいきの人や、アラブ世界に好意的な人達の中にはこれらの制約は女性保護のためであって決して虐げられているわけではないと主張する人が居ますが、私はどう贔屓目に見てもサウジにおける女性の社会的地位は低いと言わざるを得ません。