あるお年寄りの話
毎年盆の7月9日、大釈迦の部落の人々が梵珠山に登って、参詣する。
山頂には寺があって、そこでみんなが拝む。その日がお釈迦様の日と言われている。昔は
子どもも大人も、五所川原や黒石など津軽一帯から人々が集まってかなり盛大だった。
人が多いので、1軒くらいは店も出て、菓子やあめを売っていた。
また、「いたこ」も行っていて、口寄せをやっていた。若い人から年寄りまで、死んだ人
を「おろして」もらって話を聞いていた。
(いたこ 死者をこの世によみがえらせる人。恐山のいたこが有名であるが、津軽の各地にもいる。
生き返った死者は「いたこ」の口を通していろいろな話をしてくれる。それを信じるかどうかは・・)
夜になると、寺の近くにみんなでごろ寝して、朝まで騒いでいた。
やがて、夜明け近くになると、火の玉が出たと人々が騒ぎはじめる。
見え方もさまざまで、天からひとすじの光が地上に向ってそそぐようにおりてくるという
人もあれば、静かに下りてくるという人もある。
みんなに見えるわけではないので、よくわからない。心がけのよい人に見えると言われ、
それを見た人はよいことがあるとも言われている。
火の玉といっても、人が亡くなった時に発生するのとは異なり、お釈迦さまの墓に高僧の
霊がかえってくる時の後光だと伝えられている。
この言い伝えは、かなり古い時代からのもので、善男・善女が集うという地域の祭りであ
った。 |